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Vol.013 2014.10.02

年間ハイライト

<前編>

との関わり、との出会い、
紆余曲折探求への目覚め、
そして学びを究める

(ねんかんはいらいと)

おかげさまで『KUMON now!』も1周年を迎えることができました。今回(前編)と次回(後編)は、この1年間のスペシャルインタビューをふり返り、それぞれの方のインタビューの象徴的な一節を、近況や取材秘話なども交えながらご紹介します。なお、後編の最後では、読者の方からのお便りもご紹介します。

目次

2013年9月〜2014年8月のスペシャルインタビューのハイライト

※各インタビューの「本編」はリンクからどうぞ。

Vol.001 発達心理学者 お茶の水女子大学名誉教授 藤永保先生
人間は学び続ける存在 「自分が向上した」という自覚がもてる学びを

人の心がどう変化・成長していくのかを解明する「発達心理学」。日本での第一人者・藤永先生に、発達心理学が今の世の中にどう活かされているか、またご自身の学びを究めてきた道のりについてうかがいました。

インタビュー前半では「大学で学んだ心理学は機械的だったので関心が薄れた」「大学卒業後はジャーナリストになろうと、ラジオ局のプロデューサー職に応募」「卒業年次の夏に当時の難病だった肺結核に罹患」など驚きのエピソードが目白押し。そして、療養中に退屈まぎれに読んだ本で心理学への興味が復活し、心理学の道へ戻ることになります。それは、偶然だったのか、必然だったのか…。人の運命を感じずにはいられないお話でした。そして、後半では心理学者という立場から、学びはどうあるべきかというお話が聞けました。

日本の親は、とかく「勉強、勉強」と子どものお尻をたたきがちです。しかし、それだけで子どもの能力ややる気を高めることはできません。学力というのは、機械的に知識を詰め込めば達成できるものではないのです。点数ではなくて、自分が本当に何をやりたいのか、そのためには何が大切なのか、そういうことをしっかり自分なりにつかんでいく心構えをもちたいものです。

最初は大きな目標はもてないでしょうから、「あの先生が好きだから、自分もあの先生のようになりたい」ということでもいいのです。内側から湧きでる「動機づけ」が大事なのです。自分の内側から出た動機によって得られた知識と、ただお尻をたたかれて得られた知識とでは、同じ80点でも天と地ほど違います。

そして、こんな言葉でインタビューをしめくくりました。

子どもが「成績を上げることが第一ではないのだな」と、自覚できるようになることが大事です。子どもにとって、そして親自身にとっても「自分がここまで向上した」という自覚をもてる学びでありたいものですね。

藤永先生は現在、日本子育て学会理事(元理事長)であり、NPO法人保育:子育てアドバイザー協会理事長という要職にあります。「子どもは世界の未来でもある」という考えのもと、多くの研究者・実践者との協働で、年間を通して講習会やセミナーを企画・主催するというエネルギッシュな日々を送られています。

2013年9月公開  本編をよむ


 

Vol.002 脳科学者 東京医科歯科大学大学院教授 泰羅雅登先生
ヒトには「学びたい」という本能があり、「やった!」「できた!」で強化される

読み聞かせは「心の脳」に働きかけ、豊かな感情を育む――読み聞かせの効果を科学的に初めて実証した泰羅先生。脳科学者である泰羅先生に、読み聞かせと脳の関係や、脳の研究を志したきっかけ、学びについての想いなどをうかがったインタビューです。前半では、こんな興味深いお話が聞けました。

ほかのことでも同じだと思いますが、何かを究めるには、個人の能力に加え、人とのつながりやタイミングも大きく影響しているのではないでしょうか。自分でできる範囲の努力に加え、自分のことを認めてくれる周りの世界がないと、究めるのは簡単ではないかもしれません。

別の言い方をすれば、「人との出会い」「めぐり合わせ」ということでしょうか。そして、「究める」を「学ぶ」に替えると、これは、そのまま教育にもあてはまることではないかと思いました。

インタビュー後半では、東北大学の川島隆太先生(後出)と出会い、その後、高齢者対象の「学習療法」の研究を深めていくお話が聞けました。そのプロセスで、泰羅先生は「人間には“学ぶ遺伝子”があるのでは…」と考えるようになり、それをONにするポイントは「ちょうどいい、ほめる、そしてくり返しにあると思う」と話しています。そして、こう続けます。

「やった!」「できた!」の体験を通じてほめてもらうことが「うれしさ」を生み出します。「うれしい、たのしい」体験は「またやろう」というモチベーションを高めます。そしてそのくり返しの結果、高齢者も子どもも(おさるさんも!)「学ぶ遺伝子」がONになるのだと思います。このやり方は学習の基本原理なのだと思います。

読み聞かせの脳科学面からの研究のお話はとても内容が濃いため、ぜひ本編をお読みください。「賢い子が育つ」という以上に、感情が豊かになったり、親子の絆をより太くしたりと、読み聞かせがとても大切なものを担っていることがわかります。

この7月、日経ウーマノミクスプロジェクト(日本経済新聞社)の一環として開催された、育児休業中のママたち対象の支援プログラム『ワーキングママのための共育講座』で「読み聞かせ子育て」をテーマに泰羅先生が講演。実施後のアンケートでは「読み聞かせの大切さがよくわかりました。きょうからしてみます」「絵本を読み聞かせたら泣きやんだのでビックリです」といった声が多く、とても好評でした。

2013年10月公開  本編をよむ


 

Vol.003 経営学者 一橋大学名誉教授 野中郁次郎先生
体験の質量が新たな「知」を生み出す リスクを恐れず実践しよう

日本を代表する経営学者の野中先生は、「知の創造」という視点で経営の研究を続け、提唱する経営理論「知識創造経営理論」は世界中に広まっています。その野中先生がインタビュー冒頭で「経営学とは、まさに“生き方”を問う学問」と話されたので、われわれ取材スタッフは少々面喰いました。その解説の一節です。

「知」は、「暗黙知」と「形式知」が絶えずスパイラルに相互作用していく中で創られます。私はこの「知識創造のプロセス」こそが、経営の本質だと捉えています。分析データのような「形式知」だけでなく、思いや信念という極めて人間的な「暗黙知」を合わせまとめながら、新たな知を創りあげていくということです。

こう考えると、経営というのは、単に「企業利益を最大化するための方法」ではなく、「なにをしたいか」「どう生きたいか」ということを究極の目標にしていると考えられます。経営学とは、まさに「生き方」を問う学問なのです。

この野中先生のお話をうかがって、さまざまな企業、あるいは個人がもつ「経営哲学」や「理念」がいかに大切なのかがわかった気がしました。そして、子どもたちにはこんなメッセージをいただきました。

「リスクを恐れず実践せよ」ということは、企業に限ったことではなく、いまの子どもたちにも伝えたいメッセージです。あまりにも形式知偏重になると、頭でっかちになり、傍観者になるだけで、主体的な実践も行われません。

子どもたちには、まずはからだを動かして、身体知を養ってほしいですね。それから「質の高い経験の場」を意図的につくることです。自分の全身をかけて挑戦する場をつくることが、一番高質の経験となります。経験の質量は、暗黙知を豊かにし、新たな知を創り出す力となるのです。

野中先生は海外でも名前を知られている経営学者ですが、大学卒業後9年間、民間の会社に勤務し、人事・研修企画・組合執行役員・幹部教育・マーケティング・経営企画など、経営の多様な基幹業務をこなしてきました。また、アメリカに留学するための資金を友人に預けていたところ株式投資で残金ゼロにされてしまい、会社から借金をしてアメリカへ、という波乱万丈のエピソードもおもちです。そんなことも、この力強いメッセージのベースになっている気がしました。

2013年11月公開  本編をよむ


 

Vol.004 心療内科医 真生会富山病院心療内科部長 明橋大二先生
人としての「幸せ」に必要なものは何か
学びやしつけの土台となる 自己肯定感を育もう

子育てに奮闘するお母さんたちのバイブルともいえる超ベストセラーシリーズ『子育てハッピーアドバイス』の著者、明橋先生。心療内科医として「自己肯定感の大切さ」を説くと同時に、子育て中の親支援の必要性も訴え、スクールカウンセラーとしても活躍中です。

明橋先生は病院での医師としての業務も多忙を極めますが、学校でスクールカウンセラー(通常は臨床心理士が担当することが多い)をしたり、寸暇を惜しんで全国各地での年100回を超える講演活動に赴いています。そこまで明橋先生を駆り立てる想いとは…。

私がスクールカウンセラーをしている、いや、しなければと思うのは、どんな病気でも予防が大事だと考えているからです。

火事でも燃え広がってから消火するのではなく、火がついた段階で火の元を消せば、被害は少なくなるように、症状がひどくなる前に手当てを始めれば恢復も早い。病院で待つだけでなく、地域の中で子どものSOSに早く気づきたいと考えたのです。

そして、インタビューの最後には、親御さんたちへのこんな心温まるメッセージを話してくださいました。

親も子も忙しくなってきている今、余裕がなくてカリカリしてしまうこともあるでしょう。ですが、何が一番大事かをよく考えてみてください。もちろんしつけや勉強も大事ですが、その土台となる自己肯定感をしっかり育てていけば、本当の人間としての力になっていくし、大きな挫折を経験しても簡単には折れないのではないでしょうか。自己肯定感がしっかり養われれば、しつけも身につくし勉強も伸びていきます。

こうお話ししてくると、「私はいつもイライラしてしまうダメな親」と思い悩む方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。それは、子どものことを愛しているからこそだと言えます。そういう親がいる限り、日本社会はまだまだ大丈夫だと思っています。

今年3月と9月、明橋先生はさらに新たな活動をスタートさせています。ご自身が理事長を務めるNPO法人子どもの権利支援センター・ぱれっとが主催する「認定子育てハッピーアドバイザー養成講座」です。これは「自己肯定感の大切さ」を全国各地域に広めていく仲間づくりのため、明橋先生ご自身が講師となり、2日間・計15時間におよぶ密度の高い講座。この活動のことを聞いたとき、取材スタッフ全員が心配になりました。「今も超がつくほどの忙しさなのに、休みの日はあるのだろうか。いや、それ以前にいつ眠るのだろう…」と。

2013年12月公開  本編をよむ


 

Vol.005 丸の内ブランドフォーラム代表 片平秀貴さん
気乗りせずとも飛び込んでいくと道は拓け、
それぞれの「らしさ」を大切にすれば 人生はもっと豊かになる

「ブランド」の本質を解き明かし、人々の“ワクワクする暮らしづくり”に貢献する片平さんが、ブランド研究の第一人者となったのは、気乗りしないことにも前向きに取り組んできたことが背景にあるといいます。インタビューの前半で、片平さんが本格的にブランドの研究を始めたのは1990年代に入ってからと聞き、それほど以前からではないことが意外だったのですが、このお話を聞き、納得!でした。

(ブランドを)もっと究めるために、海外を中心に一流といわれるブランドを作り上げている企業の経営者に直接話を聞きに行くことにしたのです。「当たって砕けろ」の精神で、手紙を書いて取材を申し込んでいったところ、結構OKが出る! どの相手も、「ブランドのことを聞きたい」というと、喜んで話をしてくれるのでした。

そうしてさまざまなブランドの経営者の話を聞いているうちに、みな同じことを言っていることに気がつきました。強いブランドに共通するキーワードは、「夢」と「革新」と「一貫性」。このときの取材を拙著『パワー・ブランドの本質』としてまとめ、ブランド研究の道をひたすら歩むことになります。

長い時間をかけての研究ももちろん重要ですが、こうした形で“徹底して現場に聞く”ことのくり返しが時間を凌駕する場合もあるのですね。そして、インタビュー後半は、ブランドともリンクする「人の生き方」の話になります。その肝ともいえる一節。

固有の「らしさ」の塊ともいえるブランドに取り組み続けてきた私からしてみれば、少なくともこの20年、日本人は個を出さないようになったと感じています。みな同じ「会社語」を話していて、内心、「違うんだよね」と思っていても、自分の本当の考えを押し殺して議論している。これは勤め人ばかりでなく、主婦や子どもにも見られる傾向です。その反動で、ネット上には、本音や自分の生活をさらけ出す人があふれています。

自分を隠してムリをするのはナンセンスで、これからは、誰もが自分の固有名詞で生きなくてはならない時代になっていくでしょう。親も、自分自身に、そしてわが子に対しても自信をもち、また持たせてあげてほしいと思います。子どもが「自分しかできないこと」「自分が本当におもしろいと感じること」ができるよう応援し、自分の世界を開発していくよう導いてあげるのです。

ブランドを究めていくことが、教育論にも通じ、人生論にも通じる。インタビューは意外なポイントで収束しました。

2014年1月公開   本編をよむ


 

Vol.006 脳科学者 東北大学 加齢医学研究所所長・教授 川島隆太先生
学びの本質は、過去を知って未来につなぐこと
子どもたちに伝えたい“夢をかなえるための4つの約束”

謎多き人間の脳について、見る・聞く・話す、さらに記憶・学習・手を動かすなど、どんな活動で、脳のどこが働くかを画像で調べる「ブレインイメージング研究」の日本における第一人者、川島先生。『脳を鍛える大人のドリルシリーズ』の刊行や認知症高齢者への「学習療法」の実践などにより、研究成果を広く社会に還元しています。一方で、現代の社会環境は「子どもの脳の発達によくない」とも。脳科学者の視点から「脳」と「学び」の関係に迫ったインタビューです。

現代の社会環境が、なぜ子どもたちの脳の発達によくないかの理由はぜひ本編をご覧いただくとして、「こうした複雑な社会環境の時代だからこそ、学びの本質について考えてほしい」と川島先生は訴えます。

親世代には、学びの本質をわかっていてほしい。子どもに「何のために勉強するの」と聞かれて、「いい仕事につくため」ではおかしいのではないでしょうか。「先人の知恵をまず自分のものにして、その上に新しい知恵を加えて未来につながる子孫たちに渡す、というのが我々人間の本来の役割」ということを、すべての親が哲学として持っていてもらいたいと思います。

取材スタッフ全員、インタビューのその場では厳しい言葉と受けとめていましたが、取材を終え帰途につくころには、「自分は何のために働くのか」「何のために生きているのか」を自問自答していました。みなさんは、どうお考えになりますか。

そして、子どもたちに向けたメッセージ、“夢をかなえるための4つの約束”です。

子どもたちには、将来やりたいことができる大人になるには、いくつか守らねばならないことがあることを伝えたいですね。1つ目は、早寝早起きで、小学生であれば夜9時までに寝ましょう。2つ目は、朝ごはんをおかずと一緒にモリモリたくさん食べること。3つ目は、家にいるときは、家族と話をしたり、本を読んだりするように意識すること。

そして最後に4つ目です。学校などでしている勉強も公文も、自分たちのさまざまな能力を上げる力を秘めていることが、僕らの研究でわかったので、それを信じて学び続けてほしいということです。勉強がつらいのは僕も経験済みですが、信じて続けていればきっと夢はかなえることができます。

3つ目までは「あたり前のこと」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、その「あたり前のこと」ができていないために、学力低下をはじめ、子どもたちの脳の健やかな成長が妨げられているという現実もあります。私たち大人は、そのことをしっかりと見つめ続けていく必要があります。子どもたちを取り巻く環境の変化が激しい今だからこそ。

2014年2月公開  本編をよむ


sp_vol013_2_img_main    との関わり、との出会い、
紆余曲折探求への目覚め、
そして学びを究める
Vol.013 年間ハイライト 後編

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