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Vol.031 2016.04.15

起業家 マリタ・チェンさん

<後編>

世界チャンスに満ちている
テクノロジー
世界の人々を助けたい

起業家

Marita Cheng (マリタ・チェン)

1989年オーストラリアのケアンズ生まれ。工学とコンピューターを学んでいた学生時代に、学生団体「ロボギャルズ」を設立、2012年には「ヤング・オーストラリアン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。現在は人々の役に立つロボットを作る「2Mar Robotics」と視覚障害者のためのiPhoneアプリを作る「Aipoly」の2つの会社を経営している。

女子学生にロボット工学の楽しさを紹介する団体を大学在学中に立ち上げ、現在は起業家として2つの会社を経営する、オーストラリア人のマリタさん。2012年には同国を代表する栄誉である「ヤング・オーストラリアン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた27歳の彼女に、ロボット工学の魅力、そして彼女の事業と夢についてうかがいました。

目次

    女子学生たちにロボット工学の
    魅力を伝えることにやりがい

    マリタ・チェンさん

    大学では工学とコンピューター・サイエンスを学びました。いつか自分のロボット会社を作りたいと思っていました。19歳のときに、Robogals(ロボギャルズ)という学生団体を創設しました。男性が多くを占めるロボット工学分野にもっと女性を呼び込むべく、さまざまなワークショップを行う団体です。アメリカ、イギリス、日本などの国で、現在までに5万人以上の女子学生たちのために、ロボット工学の魅力を伝えるワークショップを開催してきました。この活動が評価されて2012年に受賞したのが、オーストラリアの若手ロールモデルに贈られる賞、「ヤング・オーストラリアン・オブ・ザ・イヤー」です。

    数多くの人材が集まることでアイディアも多様化しますので、ロボット産業界はもっと女性を雇用したがっています。実際に大学では、数学や科学を学ぶ女子学生に対してさまざまな奨学金も与えています。ただ、業界の一部にまだ男性社会的な空気が残っていることもあって、女性はまだまだ少ないのが現状です。

    Robogalsではさまざまなワークショップを行い、女子学生たちにロボット工学の魅力を伝えてきました。私が自分の体験を話すことで、「20代の女の子のマリタが、アップルのような会社と仕事ができるなら、私にもできる!」と思ってもらえましたし、ロボットがいかに人間の生活にインパクトを与えるかを話すと、「自分の仕事が社会の役に立てるのかもしれない!」と心を動かしてくれる女の子もいて、やりがいがあります。

    あるとき、大学を中退した若い男の子たちがシンプルなロボットを製作して売り始めたことを知り、「彼らができるなら私にもできる」と思いました。ロボットを作るのに、博士号は必ずしも必要ないんですね。それで私はロボットを作る今の会社を設立しました。

    うまくいかない時のマリタさん流の乗り越え方とは?

    自分のペースで、一歩一歩進むことが大切

    マリタ・チェンさん

    これまでいろいろなプロジェクトで成功も収めてきましたが、うまくいかない時も何度もありました。せっかく頑張っていたのに、またお金やエネルギーを注いで一からやり直さなければならない、という時もありました。そういう時、私は自分を奮い立たせるために、状況を整理して「書き出す」ことを心がけてきました。何がうまくいって、何がうまくいかなかったのか。書きだすことで解決法や別の案が浮かび上がり、また歩みを進めることができるのです。

    たとえば、2012年に「ヤング・オーストラリアン・オブ・ザ・イヤー」を受賞してから、私は”社会のために何か大きな貢献をしなければ”というプレッシャーを感じました。そこで、体に障害のある方のためのロボットアーム(義手)の開発を試みたのですが、それは高い技術力が必要な上に高価なものでした。1年半後、自分にはまだそれを実現するだけの技術が備わっていないことに気づきました。その後、私はよりシンプルな技術で、多くの人々に低予算で役立てていただける「テレプレゼンス・ロボット」*の開発を思いつくに至ったのです
    *「テレプレゼンス・ロボット」ついては前編1ページをご覧ください。

    このことで、私は「自分のペースで、段階的に進むことの大切さ」を学びました。いくらやる気があっても、高度なプロジェクトに一足飛びにとりかかるべきではないのです。私はよく人から「世界を変えるために、今は何をしようとしているのか?」とたずねられます。しかしこの経験を経た今、私はこんなふうに答えています。「――今はこのロボットをささやかな第一歩として創っています。これが完成したら、私の技術力は今より高まり、もう少し大きなことを考えられるでしょう。そして数年のうちに社会に大きな貢献ができるようなプロジェクトに取り掛かれると思っています」と。

    マリタさんから子どもたち、親へのメッセージとは?

    世界はチャンスに満ちている

    マリタ・チェンさん

    それから立て続けに2つの会社を設立し、私はあちこちから注目され、アメリカの団体から「世界でもっとも影響力を持つ若者25人」の一人に選んでいただいたり、世界各国から招かれて講演を行うようにもなりました。注目されたり、憧れの目で見られることにはプレッシャーも感じますが、この立場だからこそ、いろいろな場所に行って、さまざまな方にお目にかかることもできます。そこから新たなアイディアも得られますので、私は自分がとても幸運な人間だと思っています。

    今の短期的な目標は、開発中のロボットを完成させてもう少し大がかりなプロジェクトに着手すること。そこでさらに多くのことを学んで、将来に生かしていきたいと思っています。

    でも究極的な人生の目標は、「テクノロジーで世界の人々を助けること」です。私は、自分のために何かを、ということは考えたことがなく、つねに他の人たちのためにということを考えます。そうでないと意味がないと思うのです。

    子どもたちには、「自分が興味を持ったものに一生懸命取り組んで」と伝えたいですね。何かに興味を抱き、それを学ぶことで道は開けていきます。世界はチャンスに満ち満ちています。

    また、子育て中のお母さんお父さんたちには、お子さんにたくさん読書をさせてあげることをおすすめしたいです。読書によって、子どもたちは世界がどういうものかを知ることができます。想像力も豊かになりますし、言語能力も高まるでしょう。それによって、その子の未来が創られていくのではないでしょうか。私自身、たくさん読書をしているので、そのことを痛感しています。

    もうひとつ、お子さんには基本的な母国語と数学力をしっかり身につけさせるといいのではないかと思います。これらは、将来子どもたちがどんな仕事をするにしても、必要なのではないでしょうか。とくに数学力に自信があれば、世界中の人たちと仕事ができます。私もいつか子どもを持ったら、その子に公文の数学をやらせてあげたいなと思っています。

    前編を読む

    関連リンク2Mar RoboticsAipoly


    マリタ・チェンさん 

    後編のインタビューから

    -ロボットとアプリ開発、2つの会社を起業
    -マリタさんの子ども時代とは?
    -マリタさんとロボットとの出会いとは?

    前編を読む

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