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Vol.106 2024.09.13

一般社団法人Earth Company
共同創設者/最高探究責任者
濱川知宏さん

<後編>

人生も地球もこの世は美しい
「感じる」ことを大切にして生きていこう

一般社団法人Earth Company 共同創設者/最高探究責任者

濱川 知宏 (はまかわ ともひろ)

横浜市出身。ハーバード大学卒業後、NGOスタッフとしてチベット高原で働き、後ハーバード大学ケネディ行政大学院で修士号取得。英国大手財団CIFF、国際開発NGOコペルニク、世界銀行バングラディシュなどの勤務を経て、ソーシャルイノベーション、インパクト評価、サステナビリティ教育を専門とする。2014年、ダライ・ラマ14世より「Unsung Heroes of Compassion (謳われることなき英雄)」受賞。元東京大学特任教授。国際会議での登壇や国際ジャーナルでの論文出版の実績多数。国内外のソーシャルベンチャーやNPO団体のアドバイザー・理事として従事。現在はインドネシアのバリ島在住。四児の父。公文では小2から小5の間、算数と国語を学習。

アメリカの名門ハーバード大学で学び、外資系金融機関でインターンをして内定を受けながらも就職はせずに、20代の頃は中国、インド、東南アジア、米国などに渡り、その時々の感情を大切にしてアクションを起こしてきた濱川知宏さん。2014年に妻の明日香さんとともに、「チェンジメーカー(社会起業家)」を支援する一般社団法人Earth Companyを立ち上げ、「最高探究責任者」として、バリ島を拠点に世界中を飛び回っています。探究に必要な力を養ったのには、幼少期に学んだ公文式学習も一役かっているそうです。現在に至るまでどのような想いで、どのように行動されてきたのか、夢をかなえるヒントをうかがいました。

目次

    ふたつ目の原体験はチベットに
    「応援したい」ヒーローに出会う

    濱川知宏さん
    チベットでの活動写真、友人のペロと

    条件の良い内定先を断ったのはいいですが、さて、では何をしよう。たまたまのご縁で、東南アジアでガイドブックのライターを数ヵ月して、一度横浜の実家に帰りました。

    ちなみに私の母は、1960年代後半の20代だった頃に一人で1か月間船に乗り、ハワイ経由でサンフランシスコへ行き、その後バスでニューヨークに行ったという、当時としては大変冒険的な女性です。そういうこともあり、母は私の一番の理解者で、とても応援してくれています。

    しばらく実家で暮らした私は、今度は中国へ行きました。2002年の当時、中国は経済大国として成長していることがアメリカでも注目されていて、文化的に日本人として知っておかねばと思ったからです。ところが北京の英会話教室で英語を教えていたときに、SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行し、ニューヨークに3ヵ月ほど避難。焼き鳥屋のアルバイトや新聞社のインターンをしながら、友人の家を転々としていました。

    SARSがおさまって中国に戻り、しっかり中国語をマスターしようと、清華大学で1年間学んで中国語を習得。目的は達しましたが、もう少し中国で暮らしたくて、チベット高原で活動している米国のNPOで働くことにしました。ここで初めて正職員となりました。24歳のときです。

    チベットでは現地の教育改善プロジェクトに従事し、山奥に図書館をつくりました。私のふたつ目の原体験となるのが、この中国・チベットでの活動です。自然や文化がすばらしかったです。一緒に活動したチベット人のペロは「自分たちのなくなりつつある文化をなんとかしたい。コミュニティに貢献したい」と、見返りを求めずに取り組んでいました。

    周囲からガンジーと呼ばれるほど人望のある人物です。年齢も近く、仕事も遊びもいつも一緒にするうちに私は彼にインスパイアされ、そして気づいたんです。「自分はこういう仲間とインパクトのある仕事に携わることに生きがいを感じるんだ」と。

    中国には結果的に4年間滞在し、その後は公共政策を学ぶため、私はアメリカの大学院へ。ペロも自分で団体を立ち上げました。離れていても友情は続き、私は「できることはなんでもする」というスタンスで、見返りは求めずに、彼の団体立ち上げから資金調達などをしばらくサポートしていました。

    「彼はすごい人。彼の活動がもっと拡大し基盤がしっかりすれば、もっとインパクトを届けられるし、インパクトが高まる」という確信があったからです。それが、Earth Companyの「インパクトヒーロー支援事業」の源流です。

    その後、ハワイ大学のリーダーシッププログラムに参加し、後に妻となり、一緒にEarth Companyを立ち上げる同志ともなる明日香と出会います。彼女にも私と同じように、「何があっても応援したい」という東ティモールの女性がいました。ふたりの思いが重なってEarth Company設立に至りました。

    直感、何より感情を大切にして動こう

    濱川知宏さん

    ところで、なぜバリかというと、結婚当初私が日本で働いていた団体がバリにも拠点があり、代表者からバリに来ないかと誘われたことがきっかけです。東京のような都会に住み続けたいと夫婦ともに思っていなかったので家族で移住することを決めました。

    振り返ると紆余曲折ありましたが、うまくいくか・いかないか、というときに、私は「絶対にうまくいく」と信じています。そう自分に思い込ませるのではなく、「あ、うまくいくんじゃないかな」というマインドセットがもともとあるんです。楽観的なんですね。

    ポリシーというのもとくにはありませんが、大事にしているのは「直感」です。この直感というか、「感じる」ことや「感情」はとても大切だと思います。でも、それが今の日本では軽視されがちなのが気になります。

    学校でもそうですし、仕事でも「プロは感情を見せない」という風潮が強いように思います。ですが、感情があってこそ人間です。とくに社会貢献したいというときには、どれだけ他者に共感できるかが重要です。

    共感は心を開いてこそ生まれるものです。感情と向き合わねばならず、ポジティブな気持ちも怒りも原動力になります。でも感情を押し殺していてはパフォーマンスも上がりません。自分が疲弊するだけで、負のサイクルになってしまいます。

    そこの根本的なことをはき違えているのではと、とくに日本企業に感じます。「感情的になる」ということではなく、「感情とうまく付き合っていくこと」が大切ではないでしょうか。

    もうひとつお伝えしたいのは、「世界は美しい」ということを、大人が示していかねばならないということです。私の4人の子どもたちはバリのシュタイナー教育の学校に通っています。その学校の創設者から、教育の目的は「子どもたちにこの世界がどれだけ美しいかを示すことである」とうかがい、まさにそうだなと共感しました。

    この世の中が素晴らしいと思えたら、元気も意欲も湧いてきますよね。今はそれが足りていないのかもしれません。だからこそ、人生も、地球も美しいと、この世界の美しさを見せるのが、親を含む大人の役割だと思います。

    子どもたちには「美しさ」を発見してほしいですね。世の中の美しさを見つけてポジティブにとらえることができれば、「生きたい」という意欲が湧き、自分の役割や存在も肯定的にとらえられ、希望も湧いてくるのではないでしょうか。

    日本社会を元気にしていきたい

    濱川知宏さん

    ところで、公文の教室も世界中にありますよね。公文式は、個を大事にし、自分のペースにあわせて学習できるのが強みだと思います。教育の機会に恵まれていない途上国でも、ベースラインがどこであってもスタートすることが可能です。インフラが整っていないと個の力がでこぼこだと思うのですが、だからこそ、そうした場でやることに意義があり、社会貢献しているすばらしい事業活動だと思います。

    我々Earth Companyは、今年創業10年を迎えます。2030年までに、インパクトヒーローのコミュニティを100人に、インパクトアカデミーの参加者を10万人にするといった数値目標はありますが、同時に私は、日本企業向けの研修を広げていき、日本社会を元気にしたいと考えています。

    創設記念日の10月6日には、2名のインパクトヒーローが来日するEarth Company&Mana 東京ポップアップ 「Re: Earth~地球まるごと共繁栄へ!」のイベントを、お台場の日本科学未来館で開催します。パートナー企業さんとのディスカッションや、企業単位ではなく個人でも気軽に参加できる社会人を対象にしたプログラムも用意しているので、興味のある方はホームページをのぞいてみてくださいね。

    バリ島の魅力は、豊かな自然や文化だけでなく、「多様」で「寛容」な人々がどこまでも受け入れてくれること。加えてバリのシンプルな生活から学ぶことはたくさんあります。ソーシャルキャピタル(=関係資本)を大事にする、つまり村という共同体の行事などに重きを置いていて、「人間の大切なところ」を大事にしていると感じます。バリに滞在してそうした価値観に触れてみると、人生の美しさに気づいてより元気になると思います。ぜひバリに来てみてください。

    バリは遠い…という方には、2024年10月6日のイベントに足を運んでいただければと思います。

    さらに、マナのコンテンツを東京で再現しようということで、現地で提供している料理を味わっていただくこともできます。どなたでも自由に参加できますので、ぜひご家族でいらしてくださいね。

    今、「若者や学生は夢がない」と否定的に言われていますが、それは我々大人の責任。子どもや若者が憧れる大人が少なすぎることが原因ではないでしょうか。それで暗い表情の次世代をつくってしまっている。輝く大人をもっと増やさなければならないと思います。

    私が定期的に日本に帰国して感じるのは、人々が個性を出していない、自己表現ができていないということです。その状況は自分には窮屈で、もっと自然体になるといいなと思います。

    その殻を打ち破るためにも、探究心や好奇心はとても大切です。私は公文式を続けることで、「ひとつずつやっていったその先には何があるんだろう」と探究心を養うことができました。とくに海外で活動するには、この探究心はとても大事だと思います。

    前編を読む

     


     

    濱川知宏さん  

    前編のインタビューから

    -バリはイノベーションの宝庫
    -公文のおかげで数学には困らなかった
    -「何もないけれどすべてある」フィジーでの原体験

    前編を読む

     

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