「スタディ将棋」がきっかけで将棋にのめり込む
公文教育研究会 池上(以下、池上):
本日はよろしくお願いします。藤井さんは棋士として輝かしいご実績をお持ちで、各地を回るタイトル戦など、たいへんお忙しい日々を過ごされていると思いますが、普段はどのような日常を過ごされているのでしょうか。
藤井聡太竜王(以下、藤井):
こちらこそよろしくお願いします。棋士の藤井聡太と申します。
棋士ということで、普段はだいたい週に1回ぐらいのペースで将棋の対局をしています。それ以外の時は将棋の勉強をして、対局に備えています。棋士は自由に時間が作れる一面もありますので、たまには息抜きもしながら日常を過ごしています。
池上:
藤井さんは将棋に触れたきっかけがくもん出版の「スタディ将棋」だと伺っております。
藤井:
5歳頃のことですが、祖母と「スタディ将棋」で遊んだことが将棋を始めたきっかけでした。祖母から将棋のルールを教わったわけではなく、祖母も初心者だったので、一緒に遊びながら覚えていきました。
「スタディ将棋」は駒そのものに動かし方が矢印で描かれているので、将棋のハードルを下げてくれて初心者でも始めやすかったです。
池上:
お祖母様と「スタディ将棋」で対局されていかがでしたか?
![]() 当時の駒の形は四角形だった。 現在の商品(「NEWスタディ将棋」)は 駒の形も本将棋と同じに五角形になっている。 |
藤井:
祖母は本当に初心者でしたので、最初の頃から私の方がたぶん勝っていたと思います。
祖母相手ではありましたが、将棋で互角に戦って勝つ経験を小さい頃からできたことは、すごく楽しかった思い出があります。当時はとても負けず嫌いでもありましたから。
やがて今度は祖父と対局するようになり、もち
ろん最初は勝ったり負けたりのレベルでしたが、そのうち祖父にも勝てるようになりました。そして次のステップとして、祖母が地元の将棋教室を探してきてくれて、通うようになりました。
「スタディ将棋」がきっかけで将棋に夢中になって、勝てることの嬉しさを身に付けて、だんだんと将棋そのものの面白さに気づいて、のめり込んでいきました。
池上:
将棋を覚えてだんだん強くなって、さらに強い相手と切磋琢磨できる将棋教室という場に出合ってさらに将棋が好きになられたということですね。
初めて将棋の大会に出られたのはおいくつぐらいの時だったんですか。大会に出始めた頃はすでにお強かったのでしょうか?
藤井:
おそらく6歳ぐらいの時の大会だったと思います。大会に出始めたのは小学生になる前で、その時は小学校低学年の大会に出ていたのですが、まわりは年上ばかりで最初はなかなか勝てませんでした。
池上:
藤井さんでもそうだったのですね。
藤井:
ええ。それが小学1年生になって、少しずつ上に勝ち進めるようになって。
池上:
藤井さんは詰将棋でもたいへん有名で、詰将棋解答選手権でも実績をあげられています。将棋教室では詰将棋もすごく勉強されたそうですね。
※詰将棋(つめしょうぎ)……将棋のルールを用いて、駒が配置された将棋の局面から、相手の玉将を詰めていくパズル。
藤井:
詰将棋を通じて基礎を練習できたことがすごく良かったのかなと思います。
池上:
公文式学習は、基礎からスタートして、少しずつステップを踏みながら学習を高いレベルまで進めていくのが特長でもありますが、藤井さんもご自身の能力を高められるために日々の振り返りや積み重ねというところを大事にされているのでしょうか。
藤井:
はい、そうですね。たとえば公式戦の対局では、やはり必ずどこかでちょっと良くなかったかなという反省があって、ではなぜその手を指してしまったのかを考える、というところで自分の今の弱点を知ることができます。それを把握した上で、「じゃあどうするんだ?」「改善できるのか?」ということを積み重ね、考えながら取り組んでいます。