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Vol.029 2016.02.12

WWFジャパン 橋本 務太さん

<後編>

「きっとできる」と思うこと
トライ&エラーを繰り返すことで
量は質に変わり、道が拓ける

WWFジャパン

橋本務太 (はしもと むたい)

WWFジャパン森林グループ長。2000年英国ノッティンガム大学環境管理専攻修士課程修了。2004年WWFジャパン入局。海外プロジェクトのマネジメントを行うほか、企業による木材・紙の調達における森林生態系への配慮を目指し、企業コンサルティングも多数実施。

世界100ヵ国以上で活動している、パンダのロゴマークで馴染み深い環境保全団体、WWF(=世界自然保護基金)。日本でも40年あまり前にWWFジャパンが発足されました。同団体で働く橋本務太さんは、おもに森林資源の保全問題に取り組む森林グループ長。一筋縄ではいかない利害関係も絡み合うという、現在の自然環境保護をとりまく課題に、橋本さんは日々どのように向き合っているのか、うかがいました。

目次

できるようになる前に「できるんだ」と思うこと

橋本務太さん

私がWWFに入った当時は、まだ世の中の環境意識もそれほど高くなく、「世界の森林資源について話をさせてください」と企業にお願いしても門前払い、ということもありました。およそこの10年の間に、自然環境に対する社会の関心が増したというのももちろんありますが、やはりくり返しお願いすることしか打開策はないんですよね。地道に粘り強くやり続けると、たとえばお願いのメールの文章ひとつにしてみても上手になってくる。だんだん量が質に変わってくる。そのうちに、今までビクともしなかった扉が急に開けたりするから不思議です。

私たちは自然を相手にしているわけですから、基本的に何事も計算どおりに行かないのが当たり前です。きれいな因果関係が見えない活動です。現在たずさわっているスマトラやボルネオでの活動でいえば、個々のプロジェクトはうまくいっています。ところが総量で考えると、その地域の森林は減り続けているんです。そういう事実と向き合ったとき、やるせない気持ちにもなります。だけど、私たちはひたすらトライ&エラーをくり返すしかないのです。自分が正しいと思うやり方でくり返しやるしかない。そのときに大切なのは「いつかできる」と信じることです。

この仕事は英語が必須ですが、私はもともと英語が苦手でした。だけど高校3年生あたりで急に「伸びたな」というのを実感したんですね。わからなくても長文を読み続けているうちに、コツみたいなものをつかんだのだと思います。そのときに感じたのは、できるようになる前に“できるんだ”と思うことがいかに大切なことか。できないことを言い訳にするのは本当に簡単ですが、それでは前に進まないどころか、後退してしまう。環境破壊もまさにそれなんです。

環境問題を身近に感じるためにできる橋本さんおススメのこととは?

なんでもいいから「アクション」を起こす

橋本務太さん
極東ロシア・アムールの森林地帯

私がこれから叶えたい夢は……やはり今の仕事を通して、できる限り自然を残したい、せめて回復傾向にしたい、ということです。人と自然が共生できる社会は、WWFの目標であり、私の夢でもあります。そしてこれは私ひとりでは叶えられない夢です。私はあくまでも触媒的な立場。サポーターの支援なくて、この活動は成り立ちません。

「環境に対して一人ひとりが身近に感じるにはどうしたらいいのか?」という質問をよく受けます。おすすめしたいのは、キレイな場所に行ってみることです。そこで身をもって「体験」すれば、こういう場所を残したいと自然に思うでしょう。それがスタート地点になります。

その目標を頭に置いておくことで、ちょっとした買い物でも気をつけるようになると思います。この製品はどんな材料でどのように作られているのか、そして今の自分に本当に必要なものなのか、と。なんでもいいので、まずはアクションを起こせば、環境問題も自分事としてとらえられるようになるんです。

ちなみに私がとくに感動した風景は、極東ロシアの森林地帯です。本当に広大で雄大で、自然ってキレイなんだなぁと心から思いました。ここは残さなきゃいけないよな、という使命も感じました。

今まさに学びの段階にある子どもたちには、ぜひ「行動する人」になってほしいと思います。ちょっと勉強がつまらないな……と感じているなら、将来どんな人間になりたいかを想像してみてください。そして、その姿を実現させるためには今何をすべきなのか、自分の頭で考えましょう。世の中にはいろいろな情報があふれています。情報がありすぎて逆に何が正しいのかわからなくなる。だからこそ自分の頭で考える力が試されるのです。

橋本さんから子育て中の保護者へのメッセージ

「自分は世界とつながっている」と感じてほしい

橋本務太さん

一方で、親が子どもにしてあげられることはそんなにないと思います。決断を子どもに任せるというのは大変勇気がいることですが、そうやって段階を追うことでしか、子ども自身が決断力を身につける方法はないと思います。

そしてできれば、今世界でどんなことが起こっているのか、子どもたちに教えてあげてください。それが彼らに「自分は世界とつながっている」という感覚を与えます。子どもは視野を広げることができます。そしてそういう次世代が増えれば、環境への意識はさらに変わってくると思うのです。

私が仕事へのやりがいを感じる瞬間、それは一緒に働く人たちに喜んでもらえたときですね。以前、エコツアーを開催する現地グループの支援をしていたときのこと。メンバーが英語を話せないということで、WWFで英会話のレッスン費用を提供しました。レッスンでとくに英語力がアップした人が、英語で感謝のスピーチをしてくれて、今ではそのグループの会計と通訳を担当するまでになりました。本当にうれしかったですね。

また日本の企業に我々の提案した資材の購入方針を受け入れてもらえたときも、門前払いの辛かった日を思い出して、あきらめなくてよかったなとしみじみ思います。人々との関わりなくして、自然を守る仕事は成り立ちません。人と人が、人と自然が、無理なく共生できる世界になるまで、私たちの挑戦は続きます。

関連リンク
WWFジャパン


橋本務太さん 

前編のインタビューから

-WWFがめざしていること
-橋本さんが今役に立っていると感じる「公文で身についた力」とは?
-物理学専攻だった橋本さんが環境問題に興味を持つようになったきっかけとは?

前編を読む

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