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Vol.022 2015.07.17

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋力さん

<前編>

グローバル化
世界はひとつの村になる
早いうちから世界に飛び立ち、
視野を広げる体験を積んでほしい

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター

船橋力 (ふなばし ちから)

1994年、上智大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社し、ODAプロジェクトを手がける。2000年、株式会社ウィル・シードを設立し、企業と学校向けの体験型・参加型の教育プログラムを提供する事業を手がけた。2009年には世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出。現在は、文部科学省・官民協働海外留学創出プロジェクトのプロジェクトディレクターを務める。

民間寄付目標額200億円という、かつてない規模の留学支援の官民協働プロジェクトを取りまとめる船橋力さん。大手総合商社での勤務から起業家を経ての転身ということで、小さいころからリーダーシップを発揮してきたのかと思いきや、意外にも幼いころは引っ込み思案だったそう。両親の教えと、視座の高い仲間に影響を受け、いま社会起業家の精神で活躍するまでの軌跡についてうかがいました。

目次

2020年までに日本からの留学生を倍増させる産学官協働のかつてないプロジェクト

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん

私はいま、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」(以下、トビタテ!)で、プロジェクトディレクターをしています。トビタテ!というのは、文部科学省が意欲ある全ての日本の若者に、自ら海外留学の一歩を踏み出す気運を醸成することを目的とする留学促進キャンペーンです。東京五輪が開催される2020年までに、海外留学する学生を倍増する目標(大学生6万人→12万人、高校生3万人→6万人)を掲げて、2013年にスタートしました。

2014年からトビタテ!の主な取組の一つとして、産学官が協働して、「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」(以下、本プログラム)がスタートしました。これは留学にかかる授業料や現地活動費などを、返済不要の奨学金でサポートする留学支援制度です。

200億円の民間支援を目指す本プログラムは、企業に、学生の面接やメンタリング(相談役)、インターンシップなどでも協働してもらっていることが特徴です。これまでの国の留学支援は、経済的に苦しい学生や好成績の学生が対象で、単位取得などの実績を求められていました。本プログラムは、留学目的がボランティアやインターンシップなども認めて、成績に限らず人物と留学計画の内容を重視して学生を選定しています。

グローバル人材を求める民間企業からは、賛同・協賛の声が予想以上に大きく、幅広い業界から計148社(2015年6月25日現在)が参加し、お約束いただいている寄付の総額は約103億円にのぼります。また、トビタテ!の組織運営においては、たとえば立ち上げ時にコンサルティング会社の社員に、半年間週末だけ参画してもらうなど、できるだけ多くの方が関わりやすいよう、政府としては前例のない運用をしています。民間企業の声を多く取り入れた留学支援制度といえるでしょう。また2015年7月から募集開始する第4期からは「海外初チャレンジ応援枠」や「家計基準の一部撤廃」を行い、応募がしやすくなりました。

本プログラムに参加した学生の著しい成長も感じています。先日、本プログラムでフィリピンのソーシャルベンチャーにインターンをしている大学4年生2人に会いました。彼らは「大学3年間以上に留学中に学ぶことが多かった」と語ってくれました。自分にしか語れない経験が、大学3年間よりも留学の数ヵ月でできた、という意味だと思います。留学から帰ってきた学生の報告会では、学んだエピソードに事欠くことはなく、たくましく成長した姿が多く見受けられます。

世界を生き抜くための力を鍛えられた海外で過ごした子ども時代とは?

両親の自立を促す教育方針で生き抜くための力を鍛えられる

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん

幼いころの私は引っ込み思案でした。3歳のとき、親の転勤にともなってアルゼンチンに住み、言葉もわからない状態で現地の幼稚園に通いました。初日から3日間泣いて家に帰った記憶があります。当時は差別や偏見もあり苦労をしました。30~40年前のアルゼンチンでは日本のことがよく知られていませんでした。でも「空手」はすごく強いというイメージがあったようで、「兄が空手を習っている」と言っては、からんでくる相手を追い返したりしました。ここで社会で生き抜く力が鍛えられたかもしれません(笑)。

その後7歳で一度日本に帰国したのですが、高校に入学して1ヵ月後のタイミングで再び父のブラジル転勤が決まりました。両親からは、「世界のいろんな社会を見なさい、人の役に立ちなさい、自立しなさい」と、幼いころから言い聞かされてきました。そして、ブラジルの学校に行くかどうかも、自分で決めさせられました。「日本に残っても仕送りはしない。どちらを選ぶ?」と。ほとんど、決められたようなものですけどね(苦笑)。

結局、高校はブラジルのインターナショナルスクールに通うことになったのですが、英語での授業について行けず、1ヵ月くらいでノイローゼになりました。ただ、数学は小学4年生ごろから中学生にかけて、公文で微分積分まで学んでいて得意だったこともあり、学校で数学ができることが心の支えでした。加えて、スポーツが得意だった私は部活動の開始と共に、周囲に認められる居場所を作ることができました。インターナショナルスクールでは一芸に秀でていれば、お互いを受け入れ尊重する風土だったことも幸いしました。

また、高校3年生のときには、周りの友だちからの推薦で生徒会長になりました。学内にはアメリカ系とブラジル系の2大派閥があったのですが、私が選ばれたのは、日本人特有の調整能力が買われたのではないのかな、と後から日本人の強みに気がつきました。

大きな転機となったダボス会議での経験とは?

国際会議での議論の体験がターニングポイント世界を知り、発信していく重要性を痛感

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん
ダボス会議の様子
 海外で生活してきてそれが当たり前だった私は、日本で大学に入ってから、同年代の若者たちが社会問題についてまったく関心がないことや、自分の意見を言わないことにショックを受けました。大学を卒業して商社に就職後、異業種交流会を立ち上げながら、その想いはますます強くなります。その後、教育研修事業を行う株式会社ウィル・シードを設立し、全国の小学校に貿易ゲームを通じて世界で起きている問題について体感できる研修を導入してもらうなどの事業を展開していました。

そんななか、私自身がターニングポイントになる体験をしました。2009年に世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選ばれて、「ダボス会議」に参加したことです。その場では、世界中から選出された40歳以下のリーダーが集まり、世の中をよくするためにはどうしたらよいかという議論を交わすのですが、世界各国のリーダーたちの、情報量、教養、ディベート力、語学力などの凄さに打ちひしがれ、劣等感にさいなまれました。帰国子女で海外駐在も経験した自分でしたが、10年のブランクで日本的になっていたのでしょうね。

でも、この大変さはきっと乗りこえられると取り組み続けたら、周りからは、「Mr. Funabashiは傾聴力がある」と言われました。私としては、日本にいるときほど発信ができていないと歯がゆく思っていたのですが、日本人特有の聞く力を発揮していたのでしょう。みんなの意見を聞いた後に、効果的な発言をして場を変えることができる、と。自分の弱みを強みに変えることができた体験といえるでしょう。

また、日本と海外のリーダーの違いも感じました。海外のリーダーたちは、個人で斬新な考えを発言するのですが、その場限りのものが多いです。日本人は個人では目立たないものの、チームで真面目にアクションまで落とし込みます。たとえば「Table for Two」という、協賛している飲食店で食事をしたら発展途上国に2食分(20円)支援する仕組みを考えたのも、日本のヤング・グローバル・リーダーたちです。

ダボス会議の経験を通して、世界を知って発信する重要性を再認識しました。いくら他人に何かをすすめても、人は体験でしか気がつきません。その後私は、既に約10年経営していた株式会社ウィル・シードで海外へ社員を出す新たな教育プログラムをつくるなどのビジネスを始めました。このときにすでに、「海外と教育」という、トビタテ!の留学促進につながる流れが私の中でできていたのだと思います。

※KUMONはトビタテ!留学JAPANに協賛しています。


トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん  

後編のインタビューから

– 使命を感じて飛び込んだ国家プロジェクト
– 船橋さんが考える「これからの子どもたちに必要な3つのこと」とは?
– 2020年の東京五輪は、若者たちが活躍する楽しみな未来

 

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