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Vol.022 2015.07.24

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋力さん

<後編>

グローバル化
世界はひとつの村になる
早いうちから世界に飛び立ち、
視野を広げる体験を積んでほしい

トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター

船橋力 (ふなばし ちから)

1994年、上智大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社し、ODAプロジェクトを手がける。2000年、株式会社ウィル・シードを設立し、企業と学校向けの体験型・参加型の教育プログラムを提供する事業を手がけた。2009年には世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出。現在は、文部科学省・官民協働海外留学創出プロジェクトのプロジェクトディレクターを務める。

民間寄付目標額200億円という、かつてない規模の留学支援の官民協働プロジェクトを取りまとめる船橋力さん。大手総合商社での勤務から起業家を経ての転身ということで、小さいころからリーダーシップを発揮してきたのかと思いきや、意外にも幼いころは引っ込み思案だったそう。両親の教えと、視座の高い仲間に影響を受け、いま社会起業家の精神で活躍するまでの軌跡についてうかがいました。

目次

    視座が高い仲間に支えられて国家プロジェクトにチャレンジ

    トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん
    トビタテ!留学JAPANプロジェクトチーム
     ダボス会議を通して、ヤング・グローバル・リーダーでつながった仲間ができ、目線を上げられる体験をしてきました。印象的なのは、東日本大震災のときの話。震災の3日後に、近藤正晃ジェームスさん(Twitter Japan代表)や、藤沢久美さん(ソフィアバンク代表)、高島宏平さん(オイシックス代表取締役)たちから、被災地のために何ができるか、スカイプで緊急会議をしようと持ちかけられました。震災の影響で、それぞれの会社も大変なときだったので、とても驚きました。会議した結果、「BEYOND Tomorrow」(一般財団法人教育支援グローバル基金)という、被災地の学生たちの教育を支えるための団体を立ち上げて活動することに決めました。

    さて、トビタテ!が発足したのは、2013年4月に文部科学大臣とそんなヤング・グローバル・リーダーの仲間たちで、日本のこれからの教育について議論したのがきっかけです。世界のグローバル化が進む流れに反して、2004年を境に留学する日本の学生が減ってきていました。このままでは日本が取り残されてしまうという危機意識から、意欲のある学生を世界に出すべきだという話になりました。大臣も同じ想いを持たれていて、意気投合しました。

    ダボス会議の体験から、世界を知り発信していかなければならない時代であることを肌で感じていました。その上、信頼しているヤング・グローバル・リーダーの仲間たちに推される形で、これは運命、使命であると感じ、トビタテ!にコミットしたいと強く思ったのです。

    船橋さんが考える「これからの子どもたちに必要な3つのこと」とは?

    やり続ければ失敗はないチャレンジをして生き抜く力を育む

    トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん

    グローバル化する社会で、これからの子どもたちに必要なことは3つあると思います。10年前にいまの変化が想像できなかったように、これからの社会は急激な変化があるでしょう。ある説では、そう遠くない将来、現在ある仕事の65%は無くなり、45%が機械化されるという話もあります。でもその変化は、不安を煽るものではなく、ワクワクするものだとも思います。

    何しろ加速度的なICTの発達によるボーダレス化・グローバル化で、世界はひとつの村とも言えるほどの単位になりました。かつての常識ですら変わっていくことは間違いありません。そうした世の中で、子どもたちが「チャレンジ精神」を持って、自らの道を切り拓くアントレプレナーシップを養っていくことが重要だと思います。やり続けている以上、それは学びであり、失敗ではないのです。

    もうひとつ大事なのは、客観的に日本や自分のことを語れることだと思います。世界を知らなければ、自分が何者かはわからない。常識だと考えていたことが、海外ではそうでなかったり、弱みだと感じていたことが、強みかもしれない。必ずしも留学という形でなくてもよいですが、なるべく早い時点で広い世界を知ることが重要で、それによって広い視野が育まれると思います。私は“Think global, act local.”とよく言うのですが、グローバル化する企業で求められるのは、情報は地球規模でアンテナを張りつつ、目の前のことにアクションをとれる人ではないでしょうか。

    そして、生き抜く力を養うために必要なことは、若いうちのアウェイ体験や修羅場経験だと思います。これは筋トレみたいなもので、ある程度の辛さを耐えられたなら、乗り越えて成長している自分になります。それを知っているか知らないかが大きな違いになるでしょう。もう少し頑張れば乗り越えられることがわかっていれば、続けられる。辛いところで、自分はダメなんだと肯定感を下げて終わらないように、若いうちに修羅場を切り抜けた体験をすることが大事だと思います。留学にはその要素が多くあります。

    若者たちが活躍する楽しみな未来とは?

    中途半端な夢であれば、無理に持たなくていい
    好奇心を持ち、いろいろな体験を

    トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん

    たとえばスポーツ選手みたいに幼いころから具体的な大きな夢がある場合は別として、みんながみんな無理に夢をもつ必要はないと思います。「計画された偶然(Planned Happenstance Theory)」という考え方があります。これは、キャリアは偶然のできごとで築かれるものが多いので、よりよいキャリアにするために様々な行動をしよう、というもので、私はこの考え方が好きですね。

    自分自身、まだ学生のころから国際人にはなりたいと漠然と考えていましたが、起業することはもちろん、まさか文部科学省で仕事をするとは思いませんでした。好奇心をもちながらいろいろな経験を積んでいくことで、それがきっかけとなりキャリアがつくられる。だから、留学に限らず、いろいろな世界を知る環境に身をおくことが大事だと思います。

    たとえばこの間、娘が10歳になるハーフ成人式の記念に、英国を一緒に旅行しました。彼女はハリー・ポッターが好きで、「魔女になりたい」と言っていたからです。私自身はそれほど興味を引かれなかった街並みや旅先の大学構内ですが、娘はそれらを気に入り、語学や留学に興味を持ち始めています。何をきっかけに夢や目標を持つかはわからないので、子どもにはいろいろな体験をさせることが必要だと再認識しました。

    私が楽しみにしている未来は、まず東京五輪のある2020年です。それまでに、本プログラムからは1万人の留学生を送り出している予定です。学生には「100人、友だちを作ってこよう」と言っているので、世界中で100万人のつながりができているはず。また、日本に来ている外国人留学生が帰国した後も、日本とつながれるようなコミュニティをつくろうと構想しています。こうしたつながりで、東京五輪のときには、過去に経験したことのない体験が訪れるのではないかとワクワクしています。

    意欲のある若者たちが、視野を広げて戻ってきて、活躍する未来。「トビタテ!留学JAPAN」は、「日本の明るい未来のため、日本と海外や産学官のすべてをつなげられる歴史的プロジェクト」だと思い、やりがいを感じて日々邁進しています。

    ※KUMONはトビタテ!留学JAPANに協賛しています。


    トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター 船橋 力さん  

    前編のインタビューから

    – 産学官協働のかつてないプロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」とは?
    – 世界を生き抜くための力を鍛えられた海外で過ごした子ども時代
    – 大きな転機となったダボス会議での経験

     
     

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