OB・OGインタビュー
Catch the Dream - 夢をかなえる力

2015/03/13更新

Vol.018

被災地内科医 森田知宏さん  後編

最先端医療10人を救うよりも
別の方法で10万人を救う医療をめざして
被災地での現状に向き合う

森田知宏 (もりた ともひろ)

1987年大阪生まれ。2012年3月東京大学医学部医学科卒業。同年4月より千葉の総合病院にて初期研修。2014年5月より相馬中央病院の内科医として勤務。同年4月より、東京大学大学院医学系研究科にも在籍、相馬での実践を科学的に分析する研究も始めている。

中学生のときから医師を志し、夢をかなえた森田先生。大学時代の同期の多くが専門医・認定医として特定医療分野をめざすなか、あえてその道は選ばず、医師免許を取得してすぐ、いまだ「被災地」である福島県相馬の病院に自ら希望して赴任。東日本大震災とそれに伴う原発事故の影響もあり高齢化が加速する地域の現状は、「近い将来の日本の姿」だと考える森田先生に、自身がいますべきこと、めざしたい未来についてうかがいました。

社会的な問題を医療の視点で捉える
それも、科学的な視点と分析で捉える

被災地内科医 森田知宏さん

大学に入学してしばらくして、ある研究室に入りました。その研究室は、医学部内にあるものの、医療過誤や訴訟や薬害などをはじめ、社会のなかで医療はどうあるべきかという方向で、社会的な問題を医療の視点で捉える研究をしていました。そこで僕は社会と医療の接点を深く考えるようになりました。研究室でお世話になった教授には、現在も大学院の研究科で指導していただいています。

そうして冒頭(前編)でお伝えしたように、医学部6年生のときに東日本大震災が起き、その研究室の先生方とともに震災2ヵ月後に飯館村に入りました。そのときも放射線量はけっこう高かったので心配でしたが、「なんとかなるだろう」と何の根拠もなく思っていました。線量計はずっと鳴りっぱなしでしたが、とにかく現地入りすることが最優先でした。

医学生として福島に何度も行って感じたのは、「復興が形として見えるまでには、かなりの時間がかかるだろう」ということ。だからこそ、「ここで医者をやりたい」との思いを強くしました。初期研修は千葉の総合病院に決まっていたので、それが終わって医師免許を取得し、すぐに福島の相馬市の病院に赴任することにしました。

多くの医師は、医師免許を取得後、つぎのステップとして「専門医」や「認定医」をめざしますが、僕はその道を選びませんでした。もちろん、今後もこのままかどうか、まだ具体的な未来像が見えていないのでわかりませんが、「専門医」をめざすよりは、より多くの人を診たいという思いで医療活動を続けたい、という考えです。

たしかに専門医となって最先端の医療を担うことも大事で、その最先端医療で10人を救うという道もあります。ですが、それとは別に、もっと安価で簡便な方法で10万人を救うという道もあると思います。どちらが大事かという話ではなく、僕としては10万人を救うほうに賭けたいのです。その糸口が、いま相馬で携わっている医療活動のなかにあるのではないかと考えています。

自分の専門性を高めることに時間を費やすよりも、僕にとってはもっと大切だと思うことがあります。それが、社会のさまざまな問題や課題に対して医療は何ができるか、を考えること。そして、その大きな問題や課題のひとつが「高齢化社会」です。それに、きちんと向き合いたいと思うのです。

これから日本はどんどん高齢化が進みます。若者2人で高齢者1人を介護しなくてはならない時代も、そう遠くない未来にあると思います。そのときが来たとき、現状のままでは立ち行かないことは明白です。やがてくる、必ずやってくる、その問題に向き合う人も知恵も必要です。いま相馬の病院で働いている、というよりもがいていると表現したほうが合っているのかもしれませんが、毎日が困難や迷いの連続です。けれども、そのことが、近い将来、日本が直面する問題の解決や改善に、きっと役立つとも思っています。

大学院の研究科に籍を置こうと思ったのも、未熟な自分にはもっと学ぶ機会が必要ですし、なにより相馬での医療活動を科学的にきちんと分析したいとの思いからです。被災によって高齢化が加速する現場で、高齢者を中心とした方たちを診て、いま何が起こっているのか、何に困っているか、どうすればもっと良い状態になるのか。そういったことに対して、医療従事者としてアドバイスしたり診療したりすることがいちばん大切です。

ですが、そうした医療活動を続けるうち、そこで得られた記録やデータや情報を科学的に分析すれば、さらに地域の人たちへのより良い医療につながっていくのでは、と考えるようになりました。そして、その分析や研究は、未来の日本にも必ず役立つはずですから。

「専門医」「認定医」の道をあえて選ばなかった2つの理由とは?

関連記事

2015/03/06更新

Vol.018 被災地内科医 森田知宏さん

最先端医療で10人を救うよりも 別の方法で10万人を救う医療をめざして 被災地での現状に向き合う

2016/03/04更新

Vol.030 貼り絵作家 岡森 陽子さん

学びや経験の積み重ねは 貼り絵のように重なり合い その人自身の色として輝きを放つ

2016/03/11更新

Vol.030 貼り絵作家 岡森 陽子さん

学びや経験の積み重ねは 貼り絵のように重なり合い その人自身の色として輝きを放つ

2019/06/19更新

Vol.063 JAXA 宇宙航空研究開発機構 主任研究開発員
渡辺英幸さん

柔軟な価値観を持ち 変化を不安と思わずに チャンスととらえて楽しもう

2019/06/19更新

Vol.063 JAXA 宇宙航空研究開発機構 主任研究開発員
渡辺英幸さん

柔軟な価値観を持ち 変化を不安と思わずに チャンスととらえて楽しもう

バックナンバー

2022/05/13更新

Vol.088 絵本作家
きもとももこさん

人にはそれぞれ“すわる場所”がある やりたいことを見つけて続けていけば きっとそこへたどり着ける

2022/03/25更新

Vol.087 ピアニスト
中川優芽花さん

「まずは行動して、失敗して、学ぶ」 プロセスは 音楽にも勉強にも大切なもの 失敗しても、すべての経験は力になる

2022/02/18更新

Vol.086 ライゾマティクス 主宰
真鍋 大度さん

子ども時代の「好き」を大切に 専門家にはなれなくても そこに近い未来が開ける

2022/01/07更新

Vol.085 株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL
荒木隆義さん

可能性の芽が摘まれないよう チャレンジできる機会を 多くの人に提供したい

2021/12/03更新

Vol.084 劇団四季 俳優
金子進太郎さん

奇跡は起きるものではない 起こすもの 作品の感動を 多くの人に届けたい

記事アクセスランキング
おすすめ記事 Recommended Articles
KUMONトピックス
Feature Report 進化し続ける活動
カテゴリーを表示
NEW
Vol.447
放課後等デイサービスでの公文式学習①
(後編)
「ほめる」「待つ」「見守る」ことで 関わるみんなの笑顔と喜びを増やす
Vol.446
放課後等デイサービスでの公文式学習①
(前編)
「ほめる」「待つ」「見守る」ことで 関わるみんなの笑顔と喜びを増やす
Vol.445
川島隆太教授オンラインセミナー報告
いつまでも脳を元気に保つために 〜スマート・エイジングのための 脳の効果的なトレーニングとは〜
Vol.444
19万組の親子が実践!子育てママ・パパの声から誕生したミーテ
ミーテ運用担当のKUMON社員にインタビュー 〜うた・読み聞かせで子育てが楽しくなるヒミツ!〜
スペシャルインタビュー
Academic Milestones 学びを究める力
NEW
Vol.071 後編
メディアと広報研究所 主宰
尾関 謙一郎さん
多角的な見方を磨き、 自分だけの価値を見つけよう
Vol.071 前編
メディアと広報研究所 主宰
尾関 謙一郎さん
多角的な見方を磨き、 自分だけの価値を見つけよう
Vol.070
特別対談 未来を生きる子どもたちのために③
学び合いが創り出す KUMONならではのホスピタリティ
Vol.069
特別対談 未来を生きる子どもたちのために②
生涯にわたって必要なのは 自ら「自学自習」できる力
KUMON now! フェイスブックページ
KUMON now!に「いいね」して、子育てに役立つ情報を受け取ろう!