卵を知れば、恐竜がわかる
恐竜は謎だらけ、だから面白い
大昔に絶滅してしまった恐竜には、たくさんの謎があります。生きた恐竜を見たことがある人はいないので、私たちは残された化石などから、「こうだったのかもしれない」と推測するしかありません。私が専門とする古生物学とは、化石などを手がかりにして、昔の生きものや地球の歴史を探る学問です。恐竜の場合、恐竜の骨格の化石を研究して解明していく場合が多いのですが、私は恐竜の卵の化石を調べて、恐竜の子育てや巣作りといった繁殖行動を研究しています。
繁殖行動がなければ子どもが生まれませんし、ふつう、進化も起こりません。例えば、ワニ類は卵の大半を敵に食べられることを想定して小さい卵をたくさん産みますが、鳥は限られた数の卵を大切に育てます。恐竜は、ワニ類と鳥類の中間に位置します。ですから、「どれくらいの大きさの卵を、何個ぐらい産んだのか」、「子育てをしたのか」といったことから、恐竜の繁殖戦略を探ることで、生きものの繁殖戦略がどのように進化していったかを解明していくことができるのです。
恐竜の卵はこれまであまり研究されてこなかった分野です。「恐竜の卵は何日でふ化するの?」「赤ちゃんを(卵ではなく)そのまま産む恐竜はいたの?」といった子どもたちからの簡単な質問にも答えられないのが現状でした。
しかし、卵化石はたくさん見つかっているので、パズルのピースを集めるように、一つひとつの疑問を解明しながら研究を進めています。謎には2種類あって、まだ誰も研究していないから謎のままになっているだけの場合と、タイムマシンでもない限り現代ではもう解明できない場合があります。まだ誰も解いていない謎を解き明かしていくことが、研究の面白さであり、やりがいでもあります。
実際の研究では何をしているかというと、国内外で発掘調査をしたり、研究室で卵化石を分析したりしています。大きな骨格化石は運ぶのが難しいので博物館で調べますが、卵化石は小さいので、大学の研究室に持ち込んで、顕微鏡で観察をし、データを積み重ねることができます。私は大学教員として学生指導もしますし、講演や執筆・監修の依頼なども多いので、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
取り組んでいる途中の研究もたくさんあります。例えば、多くの恐竜で、卵は何日でふ化したのかはまだわかっていません。でもあるとき、「卵にあいた穴から計算すれば推定できるのでは?」と気づきました。様々なデータを集め終え、分析できる段階に入ったので、早く時間を捻出して、着手したいです。
「不思議だな」と思ったことは
何でも研究になる
私はNHKラジオ「子ども科学電話相談」で恐竜担当の相談員をしています。子どもたちの発想はとても面白く、勉強になります。純粋な子どもの質問には、「確かにどうなんだろう?」と思わされることも多く、実際に自分や研究室の研究テーマになったものもあります。
いろんなことに「なぜ?」「不思議だな」と思うのはとても大事なことで、それが新しい研究につながります。研究というと難しそうなイメージがあるかもしませんが、そうではありません。疑問に思ったことは何でも研究になりますし、子どもでもすぐに始められます。庭にいる虫を見ていて疑問をもったら、「それを知るにはどうしたらいいんだろう?」と自分で考えて調べていくこと。それが研究です。
「研究は楽しい!」ということを子どもたちに感じてほしくて、今年6月に出版したのが『解きあかせ、恐竜タマゴのなぞ』(くもん出版)です。以前、くもん出版が出す恐竜の絵本を監修したことがあるのですが、その編集者と話をする中で、私の単著『恐竜学者は止まらない! 読み解け、卵化石ミステリー』(創元社)をベースにしながら、恐竜学者に関心のある子どもたちの疑問にもこたえられるような児童書をを作ろうということになり、実現しました。
子ども向けの恐竜の本はたくさんあり、恐竜の種類や大きさ、生態などの情報とその解釈については多くのことが書かれています。しかし、「どうしてそんなことがわかったのか?」が書かれている本はほとんどありませんでした。そこでこの本では、恐竜たちの謎をどうやって解き明かすのかという「研究の舞台裏」を書くことにしました。
たとえ研究者にならなくても、いろんなことに「なぜ?」「不思議だな…」と思うことが、学ぶ原動力になります。それを自分で調べたり、仕組みを考えたりするのは、どの分野にも共通する大切なことです。私は立場上、子どもたちの疑問に答えることが多いですが、自分の疑問は自分で解き明かすのが一番ためになると思っているので、「ぜひ自分でも研究してみてね」と言い添えることも多いです。
今は自然と情報が入ってくる環境なので、情報に対して受け身になり、「なぜ?」が浮かばない子もいるかもしれません。でも野山を歩くなど、自分から行動して、周りのものに触れると、疑問が湧いてくるものです。誰かが作ったものを受け取るばかりでなく、外に出て、自然に触れるのは大事なことだと私は思います。もともと、子どもはみんな好奇心をもっていますから、それを発揮できる場所に行く機会が増えるといいですね。
ちなみに私は日頃から、「なぜ?」と感じたことをノートに書き留めています。いつか研究の種になるかもしれないと思いながら…。
自然が大好きだった幼少期
中高時代は天体観測に没頭
私は名古屋市で生まれ育ちました。比較的緑が豊かな地域で、自然が好きな祖父母の影響もあり、ゲームよりも外遊びを好む子どもでした。祖父は山野草を写真に撮るのが趣味で、祖母はスケッチが趣味。私も一緒によく出かけて、写真を撮ったりスケッチしたりしていました。そして夏休みは毎年、祖父母と長野に滞在して、生きもの観察に明け暮れました。今でも昆虫が大好きで、この研究室でもカブトムシやクワガタを育てています。
恐竜好きになったのは、絵本がきっかけです。母が知り合いからたくさんもらってきた絵本の中に、ヒサクニヒコ先生の恐竜の絵本があり、それを愛読していました。恐竜って「かっこいい、大きい、強い」と、いろんな「一番」を持っているのがいいんですよね。工作でも恐竜ばかり作っていました。
そして自然科学も大好きでした。長期休暇になると、自治体が1泊2日の科学教室を実施していたので、化石発掘や昆虫、海の生きものといったコースに、片っ端から参加していました。
中学1年生のとき、友人に誘われて、初めて天文コースに参加したんです。それまで星には興味がなかったのですが、天体観測を体験してみて、満天の星空に感動しました。しかも、それを友人が写真に撮っている。素人の中学生でもそんなことができるんだと驚き、自分も天体写真を撮りたいと思って、祖父から古いカメラをもらいました。自分で撮った写真を天文雑誌に投稿し、何度か掲載されたこともあります。すっかりのめりこみ、高校は天体ドームがある学校に進学して天文部へ。好きなものや好奇心に導かれて、その時々でやりたいことに一直線でした。
「これ!」と思ったことに没頭する子どもでしたが、両親は私のやることをいつも応援してくれていました。例えばテレビで「チーターは木登りが得意」と紹介されたとき、私が「ホントなのかな?」とつぶやくと、「実際に見に行ってみよう」と動物園に連れていってくれました。自治体の科学教室にしても、いつも自分で勝手に申し込んで親には事後報告でしたが、ダメと言われたことはなく、ありがたかったです。
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後編のインタビューから -北海道大学で出会った恩師の教え 後編へ続く(近日公開) |









