弁護士人生の折り返し地点で
弁護士というと、事件の発生に伴う刑事裁判や離婚訴訟などの民事裁判で活躍するといったイメージが強いかもしれません。私はそうした分野とは異なり、これまで「企業法務」という分野を主に手がけてきました。その名の通り、依頼主は個人ではなく企業で、企業間の取引において発生する様々な契約の確認や訴訟のサポートをおこないます。また、企業法務の中でも海外の案件や海外企業とのやり取りが絡む「渉外業務」を中心としてきました。
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私が取り扱っていたのは知的財産権の分野、中でも特許訴訟や技術関連の取引がメインで、その大部分が国際的な案件でした。たとえば、ヨーロッパの会社が日本で起こした特許紛争の代理、製薬会社がグローバルベースで行う共同研究契約やライセンス契約(知的財産権の使用を相手方に許諾する契約のことです)のサポートなどです。KUMONとの関連では、学習療法のアメリカ展開時などにお手伝いをしたことがあります。海外とやりとりすることが多く、業務は半分以上、英語で行ってきました。
こうした業務を、昨年10月までベーカー&マッケンジーという世界最大級の国際総合法律事務所に所属して約15年間行っていました。しかし、弁護士になって20年過ぎたことを機に独立。かつて一緒に仕事をしていた橋口泰典弁護士とともに、橋口・松本法律事務所を立ち上げました。
なぜ独立したかというと、もう少し、いわゆる「マチ弁」のような仕事がやりたかったからです。マチ弁とは、地域密着型で個人を診療する「町医者」のように、地域の個人や中小企業を依頼人として、一般民事訴訟などを取り扱う弁護士です。職業人生を40年としたら、20年は折り返し地点です。この後の人生を考えたとき、私は以前からやりたかった分野に改めて挑戦したいと考えたのでした。一方で、これまで行ってきた企業法務・渉外業務も継続してやっていこうと思っておりまして、いわば「いいとこどり」をしようと考えております。
ベーカー&マッケンジーは世界45地域に展開し、6,000名以上の各国弁護士有資格者を抱える大組織です。日本でも約150名の弁護士や税理士などの専門家が所属し、専門ごとにグループに分かれています。お伝えしたように私の専門は知的財産関連ですが、「今までの専門以外にももう少し業務の幅を広げていきたい」と思ったことが独立を後押ししました。現在はこれまでの経験を活かして企業法務・渉外業務も続けながら、中小企業や個人のご依頼にも対応しています。