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Vol.068 2021.06.04

特別対談 未来を生きる子どもたちのために①

<後編>

これから求められるのは
自ら課題を発見して解決できる人材

デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐

佐藤 昌宏 (さとう まさひろ)

デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐。一般社団法人教育イノベーション協議会代表理事。内閣官房「教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ」委員、文部科学省 教育再生実行アドバイザー、経産省「『未来の教室』とEdTech研究会」座長代理など、国の教育改革に関する委員を数多く務める。著書に『EdTechが変える教育の未来』(インプレス)。

時代の変化がよりスピードを増しているように感じられるなか、「どんな時代、どんな状況になっても、子どもたちが伸びていくために大切なことは何か?」――これからの子どもたちに求められる力、そして育みたい力について、各界の識者とともに探っていきます。
今回は、EdTech(=Education[教育] × Technology[テクノロジー])の第一人者として、国が推進する教育改革への提言に関わる委員などを数多く務められている、デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐の佐藤昌宏先生をお迎えして、公文教育研究会 代表取締役社長の池上秀徳が対談を行いました。前編に続く後編では、KUMONらしいICT(=Information and Communication Technology[情報通信技術])の活用について意見を交わしました。

目次

    KUMONらしいICTの活用

    特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳

    池上:KUMONとしてICTをどう活用するか。方法はいろいろありますが、やはりデータをいかに活用するかというところが焦点です。子どもたちの学習の効果を高めていくために必要なものがデータです。子どもたちへの指導やアドバイスは、学習内容を正確に記録することで、より精密なものになります。

    佐藤:公文式の教材は、体系化されていて、緻密に設計されています。一人ひとりの子どもたちが自分の力で学んでいけるよう、子どもの視点で制作された教材です。ICTの活用により公文式学習で学んだ学習者一人ひとりの学習状況をより正確に把握できる生徒の学習カルテができあがり、それを先生たちに活用していただく。きっとよりよい指導につながっていくことでしょう。そのデータが保護者とも共有できるという点も大事なことですね。

    池上:公文式教室の先生方と各ご家庭のコミュニケーションに必要なのは、リフレクション(=内省による振り返り)できる情報の共有だと考えます。子どもたちは客観的に自分の学習データを見ることで、振り返りや目標を立てながら進めていけます。

    佐藤:公文式教材は、常に子どもたちの学習状態から学びながら、よりよい教材へと進化し続けていますね。本当に素晴らしいと思います。ビッグデータによって、さらによい教材の改訂に活かすことができますね。作成された問題を子どもたちが意図したとおりに解けているかも検証がしやすいでしょう。国も教育のビッグデータ活用について議論をしていますけど、本当に大きな課題です。KUMONの取り組みは素晴らしいロールモデルになると思います。

    すべては子どもたちの幸せのために

    すべては子どもたちの幸せのために

    佐藤:これまでの学校の先生方というのは、クラスルームの30人なり40人なりの生徒たちを相手に、職人芸で個別最適化をはかっていたわけですね。ただそれはアナログだから定量化しにくいし再現性も難しい。ICTによってその解決をはかることができます。

    池上:ICTの活用でも再現が難しいことには、先生の子どもに対する「思い」や「気持ち」の部分がありますよね。ここは人間の性格や資質もあるからなかなか定量化できないところであり、それこそAIではなく人が関わることの魅力だと思います。

    特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳

    佐藤:公文式教室の先生の愛情や気持ち、そして学習者一人ひとりの「ちょうど」の見極めや関わりは、大きな強みだと思います。今のICTでは、評価まではできないと思っています。評価をアシストするデータや事実を提供するのがICTの役割です。ここはAIが勝手にやるときっとおかしなことになるでしょう。

    池上:KUMONの指導者は、子どもたちの自立を促していく大切な存在です。学力はもちろん、子どもたちの個性や気持ちをきちんと把握したうえで、個人別にちょうどの教材を提供し学習をサポートする。「一人ひとりのできること」を見つけて、可能性を引き出す存在です。手とり足とり教えるのではなく、子ども自身に自分の力で気づかせるように導くことで、自分で課題を克服する姿勢を身につけてほしいという考え方です。

    佐藤:子どもに手を差し伸べてフィードバックをする役割ですね。手を差し伸べるのはやはり人間の仕事。ICTによる正確なフィードバックと、そこに愛情を添えるのが人間ですね。EdTechを推進する側として、KUMONほどICTと親和性の高い教育企業はないだろうと思います。デジタルシフトに向けてコロナはきっかけのひとつでしょうけど、グローバル企業として世界の動きをさらにリードしていただきたいです。KUMONの今後のビジョンやICT活用の道筋をお伺いできたので非常にわくわくするとともに安心しました。そのキーワードはやっぱりビッグデータですね。KUMONはこれからビッグデータを活用して子どもたちの学習にますます貢献する企業になっていくんでしょうね。

    池上:ありがとうございます。一人ひとりの子どもたちの「ちょうど」を見極める指導者の存在と、誰もが自分の力で進めていけるようにきめ細かいステップで構成された教材に、ICTを上手に活用していくことで、子どもたちの可能性をさらに引き出すことに挑戦していきたいと思います。

    佐藤:これから数十年先にはICTの活用は今よりさらにあたりまえになります。ただ私たちの仕事は、流れにまかせていたら何十年もかかってしまう変化を、10年とか5年にどうやったら縮められるかということでしょう。ICTが変化を促しているのは教育だけではありません。たとえば農業も金融業界も、さらに医療現場でも、すごく大きな変化が起きています。そして、教育において、時代とともに変化を起こしていくのは、すべて子どもたちの幸せのためなんですね。

    特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳

    池上:そうですね。「何のため」「何を目指しているか」が大切ですね。私たちKUMONも子どもたちの幸せのために存在します。「教育を通じて地球社会に貢献する」という公文の理念そのものです。

    佐藤:ICTの教育への活用は、子どもたちのより豊かな学習のためです。私たちがいかにそれを活用して、未来の子どもたちの成長、幸せにつなげられるか、ということが大切ですね。

    池上:KUMONにとってのICT活用は60年を超える歴史の中で第二の創業に近いことかもしれません。子どもたちの可能性をさらに伸ばすこと、そして今ある仕組みをさらに伸ばすために、地に足をつけた形でのICT活用をしっかり考えながらやっていきたいです。

    関連リンク デジタルハリウッド大学大学院一般社団法人教育イノベーション協議会


    特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳  

    前編のインタビューから

    -KUMONらしいICTの活用
    -すべては子どもたちの幸せのために

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