アンテナを広げ、「知っていること」を疑ってみよう
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どうしたら着想力がつくのか。私はできるだけ動きと骨の形を結びつけて考えるようにしています。例えば動物園に行ったとき、ぼーっと眺めるだけでなく、「なぜこの動物はこんな動きができるのだろう」というようにです。なぜこういう動きをするのか、なぜこうなってるのかと、「なぜ」が見えたら、掘り下げていきます。
学生たちもおもしろいことを言ってくれるので、それがヒントになることもあります。狭い世界に閉じ込もらずに、分野が違う人たちと話すことも大事にしています。アンテナを広げるということですね。
加えて、「知っているから気づく」ということもありますが、「知っている」ということを、まず疑うことが大切だと思います。教わったこと、あるいはなんとなく情報としてみたもの、「これが当たり前」という刷り込みを疑うことが、次の学びへのステップとなるのではないでしょうか。
プシッタコサウルスも二足歩行と言われていますが、違うとみています。私自身はそこまで研究できていませんが、身体の前後のバランスを考えると、前につんのめってしまうはず。軽快に走るような生き物であるはずがない、と考えています。
研究で大切なのは、自分の持てる知識を総動員すること。その「持てる知識」というのは、これまで学校で習ってきたことも、もちろん含まれます。私も学校の授業で「これが何の役に立つのか」と感じることもありましたが、ちょっと遠回りして、今自分の研究に役立っている別分野がいっぱいあります。普段でも自分と関係ないと思っていたことが、後々自分の研究でひも付くことが結構あります。
研究もそうですが、勉強も一番おもしろいと感じる瞬間というのは、自分の経験と習ったことがリンクしたとき、いろいろな知識がひも付いたときではないでしょうか。私の場合、修士時代に研究がうまくいかなかったのは、化石や動物しか見ていなかったから。そこから「動物をメカとして考える」という着想を得ると、そこで物理と数学がすごく役立ってきます。人によっては化学と結び付けて生物の生きざまを調べていくこともあるでしょう。
学びの本質は、この「さまざまな知識のひも付け」だと思います。研究テーマを思いついたときもそうですが、ひも付けられると急に視界が開けてきます。そうすると、ほかの人が思いつかないところに、先に到着できます。教育においても、「普段やっていることはこれと同じことだよね」というように、体験とひも付けられていくと、学ぶ側はおもしろくなっていくと思います。