300種の動物の骨格をひたすら観察
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博士への進学に迷っていた修士の終わりの10月頃、博物館にある様々な現生動物の骨格や動物を見ているうちに、ひらめくものがありました。
どういうことかというと、前足の関節(ひじ)の出っ張りの向きが、動物によって違うことに気がついたのです。例えば、ひじを曲げて立つネズミは内向きに、まっすぐ立つゾウはまっすぐ伸ばすというように。ひじの出っ張りと角度は対応しているのではないかと思いつきました。
これをトリケラトプスの前足の付き方や歩き方に当てはめることができるのでは、と考えたのです。つまり「今生きている動物の骨を見て復元できるのでは」という考えがひらめいたのです。ほかにも、動物の体の中で、肋骨のカタチの違いがあることと、そのことから、前足の位置を復元することができるのではないか、ということもひらめきました。そこから論文に出せるような研究や、解決したい課題が見えてきて、博士課程に進む決意ができました。そして、「骨の形からその絶滅動物の生きていたときの姿を復元すること」をテーマにすることにしました。
形の違いが動物の動きの違いを生む。動物が一番ラクに立つための角度というのは、骨の形が決めているはず―― そう予測して動物園へ行き、確かめることにしました。脇を広げて歩く動物、締めて歩く動物は、それぞれどんな動きをしているか、どの筋肉を使うか、観察したり撮影したりして、動物の前足の骨格をひたすら調べ、最終的には300種以上の動物の骨格を観察していました。その動きと、トリケラトプスの標本を当てはめた結果、トリケラトプスは脇を締めて歩くタイプに含まれることがわかったのです。
こうしてうまく動物のポーズの説明ができると、これに関連したネタがどんどん思いつくようになります。また、「化石を使わなくても、生きている動物からのアプローチで、存分に古生物の研究ができる」という発想が、私たちぐらいの世代から浸透してきました。古生物学の研究の幅が少し広がってきたと思います。
じつは私はヒトの筋肉も好きで、自分の筋肉を使って、いろいろな動きを見たりしています。相撲も観たり調べたりするのが好きで、力士の写真を見ては筋肉に目がいっていました。若い頃は単に相撲好きだっただけですが、大学で研究を始めるようになってからは、つり技が得意な力士は僧帽筋が発達し、突き技が得意な力士は三角筋などが発達するというように、体型と得意技の関係も想像して楽しむようになりました。体型を見ながら、だいたい得意技を想像していくのが楽しいですよ。趣味だったことが、あとあと結びついているからおもしろいですね。

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