スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2016/05/20更新

Vol.032 認知科学者 明和政子先生  前編

やりたいと思ったことは
迷わず進んで「やってみる」
ぶれずに貫く自分をみている人がいる

明和 政子 (みょうわ まさこ)
富山県生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。京都大学霊長類研究所研究員、滋賀県立大学人間文化学部専任講師などを経て、現在は京都大学大学院教育学研究科教授。専門は「比較認知発達科学」。主な著書に『霊長類から人類を読み解く なぜ「まね」をするのか』(河出書房新社)、『心が芽ばえるとき コミュニケーションの誕生と進化』(NTT出版)、『まねが育むヒトの心』(岩波書店)など多数。

ヒトの心だけでなく、チンパンジーの心も研究対象とすることで、「比較認知発達科学」という新分野を開拓された明和政子先生。研究結果から、ヒトの育児スタイルは本来、「共同養育」と提唱し、多くの母親たちの共感を呼んでいます。自らの妊娠・出産・育児体験を踏まえ、ヒトらしい心の発達に必要な条件を科学的に解明しようと研究を続ける明和先生に、ご自身のお子さんとの関わり方も含め、学びの原動力についてうかがいました。

「チンパンジーの育ち」から「ヒトの育ち」をひも解く


野生のチンパンジーの子ども

チンパンジーがヒトにもっとも近い現生種だということは、みなさんご存じかと思います。よく、「チンパンジーは人間でいうと、3歳から5歳くらいの知性」と言われますが、その表現は正しくありません。チンパンジーはチンパンジーとして生きる環境で育つための知性を獲得して進化してきたわけで、ヒトの発達と同じものさしで比較するのはフェアではありません。「ヒトの育ち」と「チンパンジーの育ち」、それぞれの共通部分と異なる部分の両方を特定し、「ヒトはいつからヒト独自の心のはたらきを獲得していくのか」を解明する。これが、私が築いてきた「比較認知発達科学」という学問です。

恩師のひとり、元京都大学霊長類研究所の松沢哲郎先生(現京都大学国際高等研究院特別教授)は、チンパンジーの認知機能を明らかにすることで人間の知性の進化的起源を探る「比較認知科学」という研究分野を開拓されました。私はそこに「発達」という時間軸を組み入れ、それぞれの動物種の育ちの多様性を重視しました。

小さいころから心に興味がありました。「人間ってなんだろう」、「自分ってなんだろう」と考えるような子でした。小学生の頃は、校庭で友達と遊ぶよりも、空を見上げて「死ぬってどういうことかな、体がなくなるとどうなるのかな」、なんて考えているほうが好きでした。変わった子ですよね(笑)。

母によると、とにかく「しゃべらない」、「本が友だち」だったようです。ことばを介す必要のない相手、つまりヒト以外の動物が好きで、将来は獣医さんになりたかった。家庭の事情で犬は飼えなかったのですが、犬が登場する本を読んでいると、本当に自分が犬を飼っている気分になってきて、それで満たされていました。空想の世界に入り込むタイプだったので、あまりしゃべらなかったのかもしれませんね。

ことばにすると、「誤解されるかも」という不安が強かった。話すのはあまり好きではありませんでした。そのかわり、相手の振る舞いをじっと観察したり、「この人何を考えているんだろう?」と想像したり。今思えば、チンパンジー研究そのものですね(笑)。チンパンジーとはことばは介しませんが、表情やしぐさで分かり合えることがたくさんありますから。幼少期から、ことばを介さないコミュニケーションに興味があったのだと思います。

明和先生の高校時代の将来の夢は?

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