骨から絶滅動物の姿が見えてくる?
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多くの子どもたちは、男の子でも女の子でも、恐竜が好きですよね。私も子どもの頃から大好きでした。お気に入りは、以前はトリケラトプスでしたが、現在のイチオシは、その祖先的な仲間ともいわれている二足歩行のプシッタコサウルスです。二足歩行の恐竜はたいていスレンダーなのですが、プシッタコサウルスはまったく違うのです。頭でっかちでずんぐりむっくりのおデブちゃん。博物館でその標本に出合ったとき、「かわいい!」と、ノックアウトされました。
恐竜好きになるきっかけは、人によりいろいろあると思います。私は図鑑に描かれた恐竜にひかれました。生きている姿を想像するのが好きだったのです。そして現在、「絶滅した動物はどういう動物だったのか。生きていたときはどんな姿だったのか」という研究をしています。
学問領域でいうと、動物の運動能力などの「機能」と骨などの「形態」の関係を調べる「機能形態学」、動物の筋肉や骨、内臓の研究をする「解剖学」、絶滅してしまった恐竜などの脊椎動物の研究をする「古脊椎動物学」となります。
この3つは部分的に重なっていますが、なかでも私の主たる専門は「機能形態学」です。機能形態学は、もちろん生きている動物を研究対象とする場合もありますし、形態も「骨」に限りませんが、私は「骨」に着目しています。絶滅した動物は、基本的には骨しか残らないからです。そのため骨の形からわかる情報を抽出し、より真実に近い姿を探っていきます。
骨にはいろいろな形があります。例えばカモシカの腕(前足)の骨も、ニホンザルの腕の骨も、骨の形は違います。ですが、「腕についている筋肉」の種類は同じです。ただ、筋肉がついている場所が少しずつ違うのです。
カモシカはひじを伸ばすのはラクにできますが、曲げるのは苦手なように設計されている。これは、ふだん四つん這いで、前足で全身を支えることと整合的です。サルはひじを伸ばすのは苦手だけど、曲げるのは得意。これは、腕を曲げて木にぶら下がる動きと整合的です。ナマケモノは懸垂の状態でぶら下がっていられるけど、地面に落ちたとき体を持ち上げることは絶対にできない。それぞれふだん、よくする動きがしやすいような筋肉がついている。その筋肉がつく場所が違うので骨の形も違うわけです。つまり、骨の形を見ると得意な動きもわかります。
もうひとつ機能形態学の例をあげましょう。イノシシの肋骨は、前の方はまっすぐで太いのですが、後ろの方は湾曲していて広くなっています。それはなぜでしょうか。前方の肋骨は、全体重を支える役割があるので太いのです。そして後ろの肋骨は、肋骨の内側に収められている肺を広げたり縮めたりして、呼吸をするためのポンプの役割があるため、湾曲して動かしやすくなっているのです。このように骨には役割分担があります。
動物の骨がバラバラで見つかり、復元するときに、よく「前足はどこについているか」、あるいは「関節をどんな角度で保っていたのか」が問題になるのですが、こうした骨の形と機能の関係性を知っていれば、説明することができます。
恐竜がどんな姿だったかを知るためには、残されている恐竜の骨の形を見て、姿を想像していくしかありません。しかし、根拠がなかったら妄想になってしまいます。それでその根拠を探求し、より真実に近い姿を想像しようというのが私の研究です。

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