スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2020/04/10更新

Vol.061

臨床心理士、国際TA協会公認交流分析家
末松渉先生  後編

「心の危機」は成長の機会でもある
「学ぶ喜び」を知って
「生きる力」にしていこう

末松 渉 (すえまつ わたる)

1951年宮崎県生まれ。慶応大学法学部卒業後、企業での勤務経験ののち、2度目の大学生活(哲学)、都立高校勤務(9年)の傍ら大学院生活(臨床心理学、コミュニティ心理学)を送る。その後、東京いのちの電話(ディレクター、事務局長)に10年、大学教員(准教授)として5年勤務。米国のSoutheast研究所でヴァン・ジョインズ博士より博士課程プログラムトレーニングを受ける(TA、グループセラピー、ファミリーセラピー/1998-1999)。*現在も同博士よりスーパービジョンを受けている。
現在は末松TAコミュニティ研究所を開設して心理臨床活動をしながら、TA、ゲシュタルト療法を中心として地域社会の心理学的支援活動に携わっている。
臨床心理士/国際TA協会公認交流分析家・准教授資格(心理療法部門)/清泉女子大非常勤講師/東京都スクールカウンセラー/いのちの電話研修委員長・東京いのちの電話理事長/チャイルドライン(品川区、港区)スーパーバイザー

「いのちの電話」をはじめ、企業や民間団体のスーパーバイザーなど、「心」に関するさまざまな支援活動をされている末松渉先生。子育てに関わる電話相談窓口「くもんダイヤル相談」のスーパーバイザーや、指導者対象の「コミュニケーション講座」では講師を務めるなど、公文教育研究会の活動にも尽力いただいております。今に至るまで、国内外の複数の大学などで学びを深め、「現在もまだまだ学びの途中」と話す末松先生。若い頃には“心の危機”があったと振り返り、だからこそ今があるといいます。その道のりや学びを積み重ねてきた原動力、活動を通じて感じる課題などについてうかがいました。

表情が変わったときに気づいて
声をかけてあげよう

近年気になるのは、子どもたちの「感情を味わう」「感情を表現する」体験が少なくなっていることです。SNSですぐ反応し合うため、感情が自分の体と心に落ちていく時間がなさ過ぎるのではないでしょうか。例えば「カチンときた」場合、「カチンときた」以外の、違う心の動きもあるはずですが、それを味わうことが難しくなってきているように思います。人は、感じて、考えて、行動していくものです。知的にはレベルが上がっているのかもしれませんが、身近な関わりに対する情緒的な感覚が伴っていないと、成長していく上では心配です。

臨床心理士、国際TA協会公認交流分析家 末松渉先生

子どもを育てることは、小中学生までは、植物を育てることに似ていると思います。種を植えたら終わりではなく、苗も見てあげる。若木になっても、ちょっとしたことで倒れてしまうこともあるので、見守ってあげる。そして、子どもの表情が変わったときが、心にも変化があるときなので、そこで気づいて声をかけてあげる。それをするかしないかで、その後が大きく違ってきます。

この頃は、受け身の「学び」で、「今まで知らなかったことが見えてくる体験」をする時期です。その体験が本人の力になります。高校生以上になれば、新しい体験を恐れずに、自ら歩みを進めることが「学び」となります。そしてこの年頃になれば、親ライオンが子を谷に落とすような覚悟が必要です。子離れには勇気がいりますが、それが子の成長につながります。

子どもたちに伝えたいことは――ある程度の「木」がしっかり育っている子の場合は、大志を抱いて本人の好きに進んで欲しいと思います。そうでない子には、「自分が思っている以上の力を、自分は持っている」ことを知って欲しいですね。そして、どんなことでもよいから、自分が一生懸命になれるものを見つけてください。そうすれば、そこから学びが広がっていき、自信もつきます。もともと備わっているものが、開かれていくということです。

スクールカウンセラーをしていて、つくづく感じるのは、子どもは「ぬくもり」を求めているということ。今の時代、大人は忙しすぎますが、保護者のちょっとした声かけ、目を合わせること、にっこり笑いかけることだけでも、子どもにとっては喜びとなります。ぜひ、実践してみてください。

 

関連リンク
東京いのちの電話
チャイルドライン

くもんダイヤル相談


 

臨床心理士、国際TA協会公認交流分析家 末松渉先生  

後編のインタビューから

-現在の活動は「“人を支える”人」のサポート
-会社員、模索の時代を経て哲学を学ぶ道へ
-高校教師になり気づいた「本当の支援」とは

 
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