「いのちの電話」と「公文式」に共通する「人のぬくもり」
![]() |
「いのちの電話」の相談員として電話に出るのは、私も含め一般の人たちです。学歴や職歴は関係なく、電話1本で、「この人は私を大切にしてくれているか?」と、相談者が感じ取れるかどうかが勝負です。
それには3つのことが大切です。身近な「思いやり」、相談員の人生経験からくる「知恵」を伝えられること、そして「素人」ではなく「素の人」、すなわち人として当たり前のことをしていくこと、です。この3つについて、「いのちの電話」の広報誌に書いたことがあります。そのちょうど同じ時期に、「くもん相談ダイヤル」のスーパーバイザーにならないか、との話をいただきました。
公文の名は知っていましたが、公文公先生や指導者がされていることを知れば知るほど、私のアプローチとまったく重なることに驚きました。とくに共通するのは「人のぬくもり」です。子どもにとっては、丸付けのやり取り自体が「自分を大切してくれるのだ」との思いにつながります。ですから、それを無意識にやってしまうのではもったいない。公文の指導者だけでなく、スタッフの先生方も、意味を分かった上で丸付けをしていただければと思います。
公文式の特徴のひとつ「ちょうどの学習」も、臨床現場や教育現場と共通しています。「ちょうど」は、「ジャスト」ではなく、「フィット」「マッチ」「チューニング」という言葉が適切で、これらは「関わり」の中で大切なキーワードです。
中でもチューニングは、相手の発しているものにこちらが合わせていき、合ったときに澄み切った音が聞こえる、という意味を持ちます。これは相手をちゃんと見ていないと実現しません。丸をもらってから次に進む公文式は、「濁っている状態」を「澄んだ状態」にしていく作業です。「一つひとつていねいに、コツコツとやっていく」と言い換えられます。人との関わりでも同じことが言え、心理面接や学校現場でも、本当に大切にしたいことです。