盆栽家にとって大切な「素材を見極める力」
それは日々の積み重ねで身につけていく
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実家の盆栽園では、父のお客さまは父のことを信用して来てくださるわけで、私のことを信用してくれるとは限りません。ですから、イベントで自分が育てた盆栽を販売しながら、そこで出会ったお客さまの盆栽を預かったり、展示会に出展したりして、信用を高めていきました。
展示会で賞をとることによって技術的に自分の腕を認めていただき、それを積み重ねて実績を作っていくことが必要です。審査で入選しないと飾れない展示会もあり、入選率を上げていくよう技術を磨き続けなければなりません。
そのために必要なのは、素材を見極める力です。こんな素材からこういう作品を作ることができた、という経験を重ねれば重ねるほど、素材に対する感覚を高めていくことができます。手入れを続けていくと、元気がなかった木が、急に調子が良くなり風格が出てくることもあります。それは毎日の積み重ねによるもの。時間をかけて世話をすることで木が本来持っていた良さが出てくるのです。タイミングを見計らって適切な手入れをしていくことが大事になります。
突然スイッチが入るというのは、人にも起こりうることではないでしょうか。そこまでに積み重ねがあってこそ、ある時急に成長するように見えるのでしょう。子どもの場合、興味が出てきたそのタイミングで後押しするようなきっかけを作ってあげると、その子の可能性が広がってくると思います。
盆栽は、今の形は良くても何年後かには幹が太って面白みがなくなってしまう場合もあります。5年、10年、それ以上の先を見越して、「ここを切るとこうなるな」「ここは必要ないな」と考えながら作り上げていきます。そのために、常に「先を見る」ことを心がけてきました。
盆栽はとてもスパンの長い趣味。早いことがいいことのように言われる今の時代、盆栽のように時間をかけてやることは、時代に逆行しているのかもしれませんが、大事なことだと思います。公文式もそうですが、続けることによって結果はあとからついてくる。簡単にすぐにできてしまうものよりも、苦労してできたもののほうが、本人のためになるし、見えなかったことが見えてくるものだと思います。