「加齢」は人の発達プロセス
それに賢く対応する「スマート・エイジング」を提唱
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現在、私は東北大学のスマート・エイジング学際重点研究センターに所属しています。このセンターは「加齢医学研究所」での研究活動を発展してできたところです。「学際」という言葉がついているように、医学だけではなく、工学、文学、宗教学、経済学、農学など、学部横断的に加齢を科学しています。
例えば認知症ケアに関する問題は、医学の領域だけでは解決できませんし、介護の現場だけでも解決できません。そうしたことを横断的に研究して解決していこうというのがセンターの役割です。そこで私は特任教授として、センターで研究者が生み出した知見を、企業の皆さんと共同研究あるいは共同事業の形にして、社会に根づかせていく任務を担っています。
「スマート・エイジング」とは、私が提唱した概念です。そもそもどんな概念なのかを説明しましょう。「エイジング」を日本語で表現すると「加齢」です。ただ、加齢は「老化」と同義と捉えられがちで、「格好悪くなって衰退する」という非常にネガティブなイメージがあります。しかし、これは誤解です。
加齢というのは、受精した瞬間からあの世に行くまで人間が発達するプロセスをいいます。つまり「生き続けること」です。人間は歳を重ねるに伴って、いつまでも成長できる。私はそういう気持ちを込めて「スマート・エイジング」という言葉を使っています。「スマート」とは「賢い」という意味ですが、私は「人間として成長する」と捉えています。
人も社会も、経年によるいろいろな変化があります。そうした変化に賢く対処し、個人としても社会としても知的に成熟していく。それが「スマート・エイジング」ということです。
もうひとつの肩書きにある村田アソシエイツというのは、私が40歳の時に独立起業した会社です。ここでは企業のシニアビジネスのコンサルティングを行っています。もともとは、シニアビジネスに限らず、さまざまな新しい事業の企画開発をし、社会に展開させてきました。海外のビジネスを日本に普及させたものもありますし、逆に日本発のビジネスを海外に展開させたものもあります。そのひとつが、KUMONの「学習療法」のアメリカへの展開です。