スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2018/11/30更新

Vol.051 跡見学園女子大学 学長
笠原 清志先生  前編

を開き、異質なものへの
素直な興味を持ち続けよう

笠原 清志 (かさはら きよし)
1948年埼玉県生まれ。慶應義塾大学社会学研究科博士課程単位取得修了(社会学博士)。1978年から1980年まで、ユーゴスラビアのベオグラード大学経済学部に留学、1986年4月から立教大学社会学部助教授に就任。その後同学部教授、経営学部教授、副総長を経て、跡見学園女子大学マネジメント学部教授。2018年より同大学長に就任。著書に『自主管理制度の変遷と社会的統合』(時潮社)、『社会主義と個人 ―ユーゴとポーランドから』(集英社新書)ほか多数。

跡見学園女子大学の学長を務める笠原清志先生は、社会学の研究者として、社会主義国の労働や生活などを、現地に滞在しながら研究されてきました。20年近く前からは、バングラデシュの女性自立支援やミャンマーの寺子屋支援などに関わられています。2013年にはバングラデシュ国内で活動する世界有数のNGOであるBRACと公文教育研究会との橋渡しを行い、貧困層の子どもたちへの教育支援をされています。公文との協働に至る経緯や、ソーシャルビジネスの意義、現地での教育にかける思いなどについて伺いました。

ロマの女性たちが自立を可能にしたシステム

ソーシャルビジネスに関心を持つようになったのには、いくつかのきっかけがありました。お伝えしたように、私は東ヨーロッパ研究からスタートしましたが、この分野では研究職につきにくいことがわかりましたので、就職用に経営や組織論の研究をし、その業績で立教大学に就職ができました。立教大学に勤められたのはいいのですが、本来の研究分野と大学で教えている分野とが一致せず、「自分の研究は、一体何なのか」というアイデンティティクライシスみたいなものがいつも心の中にありました。そのような時に、歴史的事件や社会的活動への話がありました。

ひとつは、1989年8月にポーランドで連帯運動が勝利して社会主義体制が崩壊し、東欧の社会主義国が市場経済を導入しなければならなくなったことです。社会主義の研究者は数多くいます。また経営や組織の研究者も多くいます。しかし、両方の分野を研究している人は限られており、私のキャリアや研究が生きる可能性が生まれてきました。

もうひとつのきっかけは、1995年頃だったと思いますが、アメリカのフォード財団や日本の財団などが中心となり、中部ヨーロッパの国々(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)が再び社会主義に戻らないように、草の根のNGOやNPOをサポートする国際的な動きがあり、私は日本サイドの委員会の責任者に就任することになりました。このことがきっかけで、中部ヨーロッパの国々のNGOの支援事業に関わるようになりました。

あるとき、少数民族であるロマの女性たちの自立支援のプロジェクトの仕事で、ハンガリーに行きました。ハンガリーのNGOでは、無担保で少額のお金を女性たちに貸し、それを元手に小さな事業を始めさせるという「マイクロクレジット」による経済的自立の支援プロジェクトを行っていました。ロマの女性たちの家にも行きましたが、彼女たちから、「最近、夫に殴られなくなった」という言葉を聞きました。その意味はわかっていましたが、あえて私は「それはなぜですか」と聞きました。そのときに、「私たちが経済的な力を持ったからではないでしょうか」という答えを聞き、私は改めて大きな衝撃を受けました。どんな素晴らしい法律や憲法が男女平等を宣言しても、インドやバングラデシュ、そしてハンガリーのロマの女性たちの現実は変わらないのに、女性が自立してお金を稼ぐようになると、こんなにも短期間で状況は変わるのだ、ということがわかった瞬間でした。

「マイクロクレジット」は、NGOから女性たちが5人で連帯保証することによって無担保でお金を借り、そのお金を使ってスモールビジネスを組織して自立を目指すというシステムです。金融システムの外にある人たちが、お互いに助け合うシステムとして、頼母子講などを発展させてきているケースはわが国にもあります。「マイクロクレジット」の場合では、NGOが貧困対策と女性の自立支援の分野においてこの手法を用いて、一定の成果を上げているということに気がつきました。

フォード財団のスタッフから、グラミン銀行のユヌス博士やBRACのアベド総裁が提唱しているシステムであると教えていただきました。双方の方と交流のあるバングラデシュ人研究者を通じて連絡がとれたことが、今日までの交流につながりました。当時勤務していた立教大学で講演してくれるようお願いしておりましたが、2006年にユヌス博士がノーベル平和賞を受賞して脚光を浴びた翌年の2007年に約束通り来てくださり、名誉博士号の授与式も執り行いました。翌年にはBRACのアベド総裁も立教大学に来てくださり、同じく名誉博士号の授与式も執り行うことができました。そういう経緯でお二人と接点ができたことが、今の私の活動、とりわけKUMONとBRACとのソーシャルビジネスの締結の際の橋渡しのような仕事ににつながっていったものと思います。

 

関連リンク
跡見学園女子大学 貧困層の子どもたちへ持続的な教育支援を目指して|KUMON now!


 

 

後編のインタビューから

-「型」から入ることの大切さとは?
-今の大学生に抱く危機感
-笠原先生から保護者の方へのメッセージ

 

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