スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2015/06/19更新

Vol.022

国際基督教大学教育研究所顧問
千葉杲弘先生  前編

チャンスがあるところに
舞い降りてくる
異文化に接することで「自分」を理解して
夢の実現のために学び続けよう

千葉杲弘 (ちば あきひろ)

1934年東京生まれ。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業、同大学大学院教育学研究科修了。1961年、ユネスコパリ本部教育局入局。ユネスコアジア太平洋州教育事務所次長、ユネスコ本部教育局次長、同オペレーション事業調整局局長などを務めたのち、1991年より国際基督教大学教授、2004年より2008年まで同大学COE客員教授。日本ユネスコ国内委員、日本ユネスコ協会連盟理事、世界寺子屋運動委員会委員長、ユネスコアジア文化センター識字協力委員会委員長などを歴任。

日本人として当時最年少の27歳でユネスコ(国際連合教育科学文化機関)のパリ本部に勤務し、世界を舞台に基礎教育の普及と発展に努めてきた千葉杲弘先生。小6のときに終戦を迎え、そのときに感じた平和のありがたさから、ユネスコで働く夢を抱き、実現させました。異文化・多文化のなかでさまざまな経験を積まれた千葉先生が、夢をもつことの素晴らしさを語ってくれました。

「もう空襲がない!」終戦時の喜びをたいせつにして生きたい

国際基督教大学教育研究所顧問 千葉杲弘先生私は日本人がまだ外国へは自由に行けなかった1961年に、ユネスコの本部があるパリに行き、31年間を国際公務員として働きました。ユネスコは、教育、科学、文化という3つの分野で各国の協力と交流を通じて、国際平和に貢献することを目的とした国際連合の専門機関で、第二次世界大戦後の1946年に創設されました。

ユネスコで働くことは、私の夢でした。なぜそこで働きたいと思うようになったか。その原点は、疎開先で終戦を迎え、平和のありがたさをかみしめたことにあります。戦時中、両親の故郷である岩手県に疎開していた私は、「空襲が来そうだぞ!」という警報にびくびくしながらも友だちと遊ぶ日々を過ごし、アメリカ軍の戦闘機に追われたこともありました。そして国民小学校6年生のときに終戦となり、「これでもう、空襲がない!友だちと遊んでいられる!」と、大きな喜びを感じたことを覚えています。

そのときはただうれしかっただけですが、振り返ると、そのときの喜びが自分の体内に記憶されていて、「平和となったこの喜びをたいせつにできるような社会にしたい」という思いになったことが、私の人生を方向づけていったのではないかと思います。

私は岩手県から裸一貫で上京してきた苦労人の父と、その父をじっと支える母の間に生まれました。父は自分が苦労してきただけに、私が勉強するためには何でも自由にやらせてくれて、必ずサポートをしてくれました。そんな父に一度だけ、反対されたことがあります。「パリのユネスコで働く」という私の夢が実現しようというときに、「親の死に目にあえないようじゃ困る」とポツリと言ったのです。喜ぶと思っていただけにショックでした。

しかしその後、赴任が本決まりになる直前に父に手紙を書いたところ、今度は喜んで認めてくれました。20代の若者が異国に就職するというのは、当時の日本においては月に行くようなものでしたが、私がユネスコで働くということが、日本にとってどういうことを意味するのか理解してもらえたことが、一転して喜んでくれた理由のようです。後に家族から聞いたところによると、父は「なぜあのとき、最初に反対するようなことを言ってしまったのか」と悔やんだといいます。

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