鈴木 健斗(すずき けんと)
広島県出身。公文式学習経験者。中高一貫校在学中だった高校2年時に、世界各国から選抜された高校生を受入れる国際的な民間教育機関「ユナイテッド・ワールド・カレッジ」ドイツ校に留学。その後は米国ブラウン大学に進学し、2022年に卒業。同大大学院に進学予定。世界中に友だちを作り、社会課題を自分のこととして捉える「自分ごと化プロジェクト」代表としても活動中。
公文教育研究会 会談参加メンバー(敬称略)
静岡事務局 安藤
埼玉事務局 中元
総務部 大西
社会課題に向き合うには「自分ごと化」して
持続的に関心を持つことが重要
静岡事務局 安藤:鈴木さんが日本の若者世代たちと交流されるなかで、現在どのようなことを課題として実感されていますか?
鈴木健斗さん(以下、鈴木):ふと思いつくだけでも社会課題と言われる事柄はキリがないほどたくさんありますよね、最近感じているのは、どんな社会課題に取り組んでいくにしても、自分ごと化して、長期にわたり持続的に関心を持つことが一番重要なんじゃないかということです。
例えば先日、自分ごと化プロジェクトで、ウクライナで困っている方々に直接物資を届けていらっしゃる、ポーランド在住の坂本龍太朗さんという日本人の方にご登壇いただいたんです。その時も感じましたが、「ウクライナの方が今困っています。だから支援金を贈りましょう、子どもたちがオンライン学習できるパソコンを贈りましょう!」そしてその後、寄付が集まったら、「すごく良かったですね、ありがとうございました!」で終わりではありません。
これからまだ戦局は厳しくなるだろうし、仮に半年後に紛争が終結しました、となったところで、地雷は残っているだろうし、家はないし、そこから復興をどうするかということがもっと難しいと思うんです。だからこそ、継続的に世界中からの興味関心を集め続けることが必要になってくるのだと思いました。
総務部 大西:SDGsというキーワードに対して今取り組まれていることや、ここをもっと自分ごと化できるのではないかなど思うことがあれば教えてください。
鈴木: おそらくSDGsという言葉がなかったとしたら、こんなにも社会課題について考えよう、考えることが必要だという風潮にはなっていなかったのかなと思います。だから言葉の力というのか、SDGsという枠組みは、社会課題あるいは機会を考える力になると思います。
ただ、SDGsは17個の目標がありますが、一番重要だと感じるのは、17個あるいは設定されたゴールのうちのひとつが、自身にとってどのような意味を成すのかを考えることです。自分なりの行動を起こしたり自分の考えを発信していくことがすごく重要だと思います。SDGsという言葉は世界中で使われていますが、みんなが同じように解釈するわけではないし、できないはずです。日本の中でも都会と田舎では違うことがあると思いますから、おそらく国境を越えるともっと違うわけです。
例えば環境問題を取り上げたときに、どんな先進国だろうが途上国と言われる国だろうが、一様に温暖化に加担しているかのような考えを生みがちな気がするんです。SDGsは世界のものだから、みんな一緒に手を取り合って同じように一生懸命頑張りましょうと言いますが、地球温暖化ひとつとっても、いわゆる先進国は何十年も前からそこに加担してきています。それを今さらみんなで一緒に頑張って…というのもちょっと違うのでは?と考えます。
世の中には日ごとの生活を送ることで精一杯な人もいます。その人たちにクリーンエネルギーが…、と言っても通用しにくいですよね。そんな人たちのことも考えながら、少しでも余裕のある我々がいかに頑張っていくのか。「誰一人取り残さない」というSDGsの言葉が原動力になるのであればそれは素晴らしいと思いますが、みんなが同じように頑張っていこうとすると、パワーバランスが崩れちゃうのかな、と若干危惧しています。
大西:おっしゃったようなことは私も感じています。SDGsの17のゴールと言われていますが、一番大事なのは「誰一人取り残さない」ことであり、持続可能な地球社会を続けていくことですよね。そこの軸をぶらさないようにしないといけないと感じます。
公文式はそれ自体がSDGs
大切なのはコツコツ頑張ることができる力
安藤:公文では企業理念として、鈴木さんもおっしゃったような、一人ひとりの可能性を発見して最大限伸ばす人材育成を目指しています。そして人材として育っていただいた、まさに鈴木さんのような方が地球社会にそれぞれの分野で貢献していただくことこそを目標にしています。私たちは教室という場で公文式学習を提供するとともに、「誰一人取り残さない」ために、パートナーの方々と公文式学習を広げる取り組みも行っています。
鈴木:公文とバングラデシュのBRACとの協働
(https://www.kumon.ne.jp/kumonnow/topics/vol236/)はもちろん存じ上げていますし、学習療法や障害者施設への取り組みなどの記事も拝見させていただきました。
この活動から感じたのが、公文式はそれ自体がSDGsなんじゃないかなということです。SDGsというのはあくまでも持続可能な地球を作る手段で、持続可能な地球とはどんなところかといったときにはおそらく極論、社会課題というものが出てこない。
逆に社会課題を解決するために何が必要かを考えたときに、長期的なコツコツとした興味や関心、自分ごと化であって、公文の、少なくとも私が体感している一番の強みとは、コツコツ一日一日頑張ることができる力だと思いました。
恒久的に持続可能な地球を作る上で一番根底的になるものが公文式学習の考え方であり、コツコツ頑張る、あるいは興味を持ち続ける力なんではないかと思います。SDGsの根底的な、それこそSDGsの手段になるような、ベースになるところが、公文式学習にはあるのではないか、と考えます。
夢は一人ひとりが自らの生きがいを持てる社会を作ること
埼玉事務局 中元:鈴木さんの今後の夢についておきかせいただけますか?
鈴木:SDGsの最終的な目標が恒久平和であり持続可能な地球なのだとすれば、自分にとって一番大きな夢は、世界中の一人ひとりが生きがいを持って生きられる世の中にすることです。現在は「マインドフルネス」に注目しています。マインドフルネスとは、特定の心の状態のことです。基本的に我々の生活の5割ぐらいは、過去や未来のことを考えていると言われています。そうではなく、今この瞬間に生きているわけだから、意図的に今この瞬間に心がある状態を作るトレーニングによって心と体の健康を促進する、という研究です。
今この瞬間に集中できる心を作ることによって、一人ひとりがポテンシャルを最大に発揮できたり、自分が欲しない感情や考えに縛られることなく生きられたりすることが理想です。そうすれば、おのずと一人ひとりが人の役にも立てるんだ、といった思いにつながっていくのではないでしょうか。一人ひとりが自らの生きがいを持って、またその形をお互いに容認できるようになるのが理想です。
生きがいはもちろん自分に自信がないと始まらないし、自己肯定感があっての生きがいだと思うので、それには公文も大きな役割を果たすと思います。公文式を行うことによって、自己肯定感や自信をつけて一人ひとり生きがいを持っていくことが、持続可能な地球という目標の根底を作るのかな、と思います。
中元:鈴木さんの原点に公文があるということがとても嬉しいです。今学習している子どもたちも、鈴木さんのようにいろいろな場面で活躍できる人になっていったらいいなと思います。
自分が取り組んでいる仕事が、社会貢献につながっていることを改めて実感できました。
安藤:今のご時世、いろんな価値観がネットを介して広がってしまう時代ですし、何が正しいのかわからないところもあったりすると思います。その中で今の子どもたちは、公文の学習経験を通して、自分を見失わない力、自分のどこに自信があるのかを見つけていってほしいと感じました。
大西:一人ひとりが生きがいを持てるような社会の実現のためにやっていきたいとお話をされていて、仕事柄すごく私も共感しました。
公文の社員一人ひとりが自分の仕事に誇りを持って働き、ひいてはその仕事を通して社員自身が幸せを感じる。そんな社内環境を作っていきたいと思います。
―― 誰一人取り残さないというSDGsの原則こそ大事にしなければいけない考え方であることを再認識できました。今後の実践にしっかりとつなげてまいりたいと思います。鈴木さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
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