演劇初心者にこそ観てほしい『ライオンキング』
|
私は劇団四季の俳優として舞台に立っています。現在は、ロングラン上演中のミュージカル『ライオンキング』に出演しています。私もそうでしたが、演劇は観たことがない人にとっては敷居が高いと感じるかもしれません。『ライオンキング』はそういう方にこそ、最初の1本として観ていただきたい作品です。その理由は、命をテーマにした家族の物語だからです。アフリカのサバンナを舞台に、主人公シンバの成長が描かれています。小さいお子さんから年配の方まで、共感できる部分がきっとあると思います。
もうひとつの見所は、登場する「動物」たち。もちろん、その動物たちは私たち俳優が演じているのですが、人間である私たちがどう演じているのか、それもおもしろく感じていただけるはずです。『ライオンキング』で私が演じている役柄のひとつが、サイの後ろ足。前足の人と二人でひとつの動物を演じているので、二人の息をぴったり合わせる必要があります。いかにイキイキと動き、サイらしく見えるか。ぜひ注目していただければと思います。
演劇では、メインキャスト以外のこうした役回りを、「アンサンブル」といいます。アンサンブルは「ひとつの演目でシーンによって様々な役柄を演じる人たち」のこと。その舞台の世界観を作り上げる大切な役回りです。皆さんが観ている映画でもテレビドラマでも、主役のまわりにいろんな人たちが登場しますよね。そうした人たちがいるから、そのシーンがより色濃くなるのと同じように、アンサンブルの演技があるからこそ、メインキャストたちやそのシーンが際立つのです。
劇団四季ではロングランで上演している演目が多く、また複数の作品を全国各地で上演しています。そのため、ひとつの舞台が終わったら次へ…ということではなく、短い期間で複数の演目に亘って出演することもあります。つまり、ある役を演じたらそれで終わりではなく、その先ずっと役が積み重なるイメージです。一度出演した舞台には、いつでも出演できるよう常に準備をしておく必要があります。
ひとつの役に対して複数の俳優がキャスティングされているのも劇団四季の特徴です。ロングラン公演が多いため、ひとつの役を複数の俳優が交代しながら公演を行っています。自分の出演がないときは、動物園に行っていろんな動物を観察したり、コロナ禍以降は動画を見たりして動物の動きを研究しています。また作品とはまったく関係のない音楽を聞いたり映画を観たりして、「ここは自分の演技にこう取り入れられるかも」など考えています。日々の生活すべてが勉強です。