妊娠を機に働き方を見直し、5年間専業主婦に
![]() |
JT生命誌研究館では毎日午前様で帰宅するくらい、思いっきり仕事に没頭していました。若くして管理職になったので、さまざまな体験をさせてもらいました。そんなときに妊娠が判明。しかも、夫は研究のためアメリカに。夫についていくか悩みましたが、そろそろ働き方を変えないとだめだとも思っていました。というのも、当時は仕事が忙しく、インプットが足りないと感じていたからです。
もちろん、仕事としてアウトプットする前提のインプットはできたのですが、仕事とは直接関係のない、たとえば科学史や科学哲学について学びたくても、仕事が忙しすぎてそんな暇が全然なかった。それで一度現場を離れてみようと決心し、1人目の妊娠8ヵ月のときにアメリカに渡ったんです。
渡米後もできる範囲で仕事を続けていましたが、その後今度は夫がドイツへ行きたいとなりまして……。このときばかりは職場と働き方の条件面が折り合わず、結局退職することになりました。ドイツで2人目を出産し、下の子が幼稚園に入るまでは専業主婦として過ごしたというわけです。
子育てを通して、私自身さまざまな面で成長したと感じています。仕事をするうえで、自分に新しいチャンネルが増えたからです。仕事というのは、来たら処理するものですよね。でも、子育てはそうはいかない。子どもが成人するまでは20年と大変長いし、特に小さいうちは24時間365日関わらなければいけない。それに、仕事は成果を明確にイメージできることも多いですが、子育てはそれが難しい。子どもは別人格ですから、完璧にはコントロールできません。
「いったん受け入れる」「待つ」という部分の対応力は、子育てを通して徹底的に鍛えられました。そしてそれは仕事にも役立ちました。「あ、この案件はいったん受け入れておくけれど、あまり触らないほうがいいな」という判断ができるようになったり。私の仕事である“伝える”という観点でも、「お母さん」というくくりで、ずいぶん多くの方に伝えられることがあるなとも思います。