サイエンスコミュニケーターのパイオニアとして
![]() 工藤先生は着物が好きで、スーツを着るような シチュエーションには着物を着ているとのこと。 |
私は日本でおそらく一番初めに「サイエンスコミュニケーター」という職業を名乗った人物だという自負があります。サイエンスコミュニケーターとは、「科学に関する情報を伝える人」のこと。ですから、科学雑誌を作っている人、理科の教科書を作っている人、理科の先生、科学館の職員も、広い意味ではサイエンスコミュニケーターといえますね。
私自身は生物・自然・医学などのライフサイエンスの分野で、科学の成果をビジュアル化することを得意としています。もちろん文章も書きますが、言葉で書かれたものを理解できる人は、放っておいても自分で勉強できます。一方で、専門的な知識を持たない人はビジュアルからのほうが理解しやすいものです。そこで私は一般の方々に向けて、科学に対する興味を持ってもらうために、ビジュアル化に力を入れているというわけです。
アウトプットの場は、映像や科学館での展示、ホームページなど、さまざまなジャンルです。特に私の専門とするライフサイエンスの分野というのは、DNAや細胞、タンパク質など、顕微鏡で見えるか見えないかの小さいものが多い。ですから、それらを目に見える形にしてあげることが、わかりやすく解説するための第一歩ですね。
たとえば、植物の細胞壁についての展示を行ったときには、ビーズを使って細胞壁の構造を表現しました。細胞壁は、さまざまな種類の糖が鎖のようにつながってできています。なので、糖の種類によってビーズの色を変えて、結合の違いによって、ワイヤーの通し方を変えて、それを実際の細胞壁の構造のように再現しました。
たいていの方は作り手のそういう細かいこだわりまではなかなかわからないと思うのですが、専門家は「ほお~、こんなふうに再現しているのか」と驚いてくれます。そうやって、科学の知識を正しく、でも一般の皆さんにもわかりやすく伝えるというのが私の仕事です。