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Vol.064 2020.10.30

神田外語大学 特任講師
上原雅子先生

<後編>

言語は「伝える」ためにある
「伝えたい」という気持ちを込めて
自分の意見を発言してみよう

神田外語大学 特任講師

上原 雅子 (うえはら まさこ)

東京都生まれ。神田外語大学英米語学科特任講師。NPO法人「国際人をめざす会」理事、一般社団法人「英語落語協会」理事。King's College, London(応用言語学)修士課程修了。駐ジョージア大使夫人として、1年の半分ちかくをジョージアに滞在しながら、ジョージアの魅力を日本に伝えるべく活動中。本業は大学英語講師で、特にTOEFL®指導、4技能統合型授業の推進、アウトプット系の指導法に注力。著書に『Speaking スキルが高まる必修ポイント8』『Writingスキルが高まる必修ポイント10』(共にくもん出版)など。

英語教育改革の最中にある今、柱となっているのが「読む」「聞く」「書く」「話す」の英語4技能を統合的に学ぶことです。現在大学で英語を教える上原雅子先生は、かねてより4技能統合型の英語教育の推進に注力、TOEFL ®の指導にも精力的に取り組まれています。一方では高座名「鹿鳴家一輪」としての「英語落語」の実践者でもあり、さらにはロシアやトルコに挟まれたコーカサス地方の国・ジョージアの日本大使夫人という顔もお持ちです。「英語嫌いの時期もあった」と振り返る上原先生に、英語力の伸ばし方やTOEFL® の意義のほか、英語落語やジョージアの魅力など、幅広い話題でお話をうかがいました。

目次

英文記事を読み「日本以外の違う価値観がある」と気づいたことがバネに

上原雅子先生

こうして現在、英語指導に携わっている私ですが、自分が教える立場になるとは思ってもいませんでした。私が英語に出合ったのは、小学校に入った頃、母が自宅で英語教室を開いたのがきっかけです。「ぐりとぐら」などの英語版の絵本を覚えて、皆で劇や紙芝居をするという教室でした。いま、英語落語をしている私ですが、小さい頃からそんなことをしていたのだなと、ときどき思い出します。

育った家庭では欧米の方の出入りも多く、英語が身近ではありました。そのため、「英語は得意でしょ?」といわれることが多かったのですが、入り口がコミュニケーションだったため、中学に入ってから文法が苦手になってしまい、じつは英語の授業にあまりいい思い出はありません。

ですからいま、「コミュニケーション重視で学習してきたために文法が苦手」というお子さんの状況や気持ちがよくわかります。今ではもちろん文法も楽しく教えていますし、だからこそ、そうした人に適切な教え方ができると思っています。

「英語が嫌い」と思うこともあった私が、なぜここまで英語に関わり続けられたかというと、『TIME』や『Newsweek』などの英文記事を読んでいると、日本では得られない情報に接することができることに気づいたからです。理不尽なことがあっても、「これは他の国ではたいしたことないんだ。理不尽だと思う私の感覚は間違っていないんだ」という妙な安心感がありました。「何が書かれているのか知りたい」と思うようにもなりました。

就職してからは、海外を担当する部署に配属され、英語を使って仕事をするように。そこで英語の必要性を実感しました。結婚を機に退職した後は、学生時代に英会話学校で教えていたこともあり、子育てをしながらあちこちで、子どもから大人まで、さまざまな人に英語を教えていました。

やがて夫のアメリカ転勤に伴い、子連れで渡米。そこで前述したTEFLコースに通って最新の教授法を学んだことが、私の転機になりました。教え方が変わり、その後ロンドンの大学院で応用言語学修士課程を修了し、大学で指導するようになり今に至っています。

これからの子どもたちに求められるグローバル人材

ジョージアから学ぶ「グローバル」とは?
「国同士、影響し合う」感覚を持とう

上原雅子先生

近年よく、「グローバル」「グローバル化」がいわれ、関連して英語の必要性も話題になります。そうした中、駐ジョージア大使の配偶者として、ジョージアと日本をつなぐ活動をしていて思うのは、「“日本にいるとグローバル化を感じにくい”という自覚を持つことが大切」ということです。

日本とジョージアの大きな違いは、「隣国に接しているかどうか」です。ジョージアのみならずヨーロッパは、自分の祖母の時代には自国だった場所が、いまは他国になっている、といったことも珍しくありません。周囲を大国に囲まれたジョージアは、攻められ、大国の支配下に入るたびにそれらの国の言葉を覚えなくては生き延びることができませんでした。生活は、常に隣国と影響し合いながらあるわけです。

今、ジョージア国内で公用語でもない英語を流暢に話す人が多いのは、そうした歴史のもと、言語を学ぶことに抵抗がなく、それにより得られることの大きさを理解しているからでしょう。また学校教育以外に、英語で映画、アニメなどが手軽にみられるなど、英語に接する環境が多くあることも影響しています。

インターネットが発展したいま、日本でもそうした学びは可能なのに、英語が流暢な人はそう多くいません。ジョージアのように隣国から攻められることもなく「英語ができなくては」という危機感がないため、必死に学ぶ必要が日本にはないのです。

「島国だから仕方ない」「わかる人だけわかればいい」という意見もあるかもしれませんが、そうも言っていられません。世界の多くの国では隣国と影響し合って生活をし、英語で意思疎通ができています。その中に入ろうとするならば、日本人もそれだけ英語を理解しなくてはなりません。「影響し合う」という感覚を持つことも必要です。さらに、「知識を英語でインプットして、それに対して自分の意見を言う」ことができれば、本当のグローバル人材になるのではないかと思います。コロナ禍が収まったらぜひ、短期間でも国外に出てみてください。英語を学ぶだけでなく、「日本とは違う価値観で動く国がある」ことを実感してほしいと思います。

ところで、よく「海外で生活すれば英語ができるようになる」と考える人がいますが、英語に限らず、どこにいても、何ごとも身につくかどうかは自分の努力次第です。その意味ではコロナ禍でも日本にいても、できることはたくさんあります。人には自分に合った学び方があるので、「映像を観る」「音で聞く」など、自分がおもしろいと思う勉強法を見つけて、大人も英語を学び直してはいかがでしょうか。

先生がこれまで大切にされてきたこと

「否定的な言葉」はなるべく控える
「自信を伸ばす」だけでなく「自信を壊さない」心がけを

上原雅子先生

私が大切にしてきたのは、「否定的な言葉はなるべく使わないこと」です。アメリカで子育てをしていた頃、なぜ子どもたちはあんなに自信があるのかと不思議に感じていました。あるとき、それはアメリカのお母さんたちは、子どもに対して否定的な言葉を使わないからだと気づきました。

子どもでも大人でも自信を持つことは簡単ではなく、「自信を持ちなさい」と言ってもすぐに持てるものではありません。自信とは、人から褒められたり認められたり点数が上がったりと、小さな成功体験を積み重ねてできるものです。否定的な言葉は、そうしてできた自信を、一瞬で崩してしまいます。大人も子どももそのことをもっと意識して前向きな言葉を選んで話さなければと思います。言葉はそれだけ力があるのですから。

子どもはとくに「親がわかってくれる」ことが、人生においての一番の原動力です。その親が否定的な表現を使わないだけでも、子どもの自信はもっと伸びるのではないかと思います。「子どもの自信を伸ばす」のも大切ですが、「子どもの自信を壊さない」環境を私たちは作っていかなければいけないと思います。

お子さんに伝えたいのは、「好きなことにトライすること」。それから「自分の意見を具体的に、建設的に発言すること」です。大学で時々自分の意見を言ってはいけないと思っている学生がいて驚きます。発言したとしても、例えば「世の中をよくしたい」という具体性のない事は言えるのですが、「では、そのためにあなたは何をする?」と問うと、答えに詰まってしまうのです。英語では具体例を挙げなくては「考えていないこと」と見なされてしまいます。普段から「自分は具体的に何ができるか、何に貢献できるか」を考えることを習慣化するといいですね。

私自身は、これからも子供から社会人まで年代問わず多くの人の英語の指導にかかわっていきたいと思っています。今までの経験を役立て、いかに英語で情報を得、コミュニケーションをとり、相手に正しく自分の意見を発信できるようなれるか、という観点で指導を続けたい。TOEFLや英語落語を活用することもできます。4技能をフルに使って英語を学べるよう、学習者に寄り添っていければと思います。主役は学ぶ人たちですから。

英語落語については、コロナ禍を抜けたら海外での公演の機会を増やしたいですね。ちなみに現在の持ちネタは17です。こちらも増やしていきたいし、そもそもの目的だった英語教育にも活かしていきたい。現在小学生向けに英語落語の本を出す企画も進行中です。

またジョージアと日本との交流に微力でも尽力できればと思います。ジョージアは知れば知るほど好きになる素敵な国です。“コロナ禍が収まったら行きたい国”のリストに是非加えてくださいね。

関連リンク 神田外語大学


 

前編のインタビューから

-英語指導者、英語落語家、ジョージア夫人、多彩な顔を持つ上原先生とは?
-世界基準で自分の英語力のレベルがわかるTOEFLテスト
-英語を上達させるコツはリスニングと音読

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