2019/03/08更新
教育実践「響の会」会長
角田明先生 前編
愛情に満ちた厳しい目を注ぐことが
子どもを成長させる
「個」をみて教え導こう
角田 明 (つのだ あきら)
教員生活36年。私立高校を皮切りに、公立中学・小学校で、子どもたちとはもちろん、保護者や地域と向き合ってきた角田明先生。教員の力量を上げようと、1996年に教育実践ゼミナール「響の会」を立ち上げ、現役教員のための研修を開始。2007年からは日本公文教育研究会子育て支援センター顧問として全国で指導助言に務め、KUMONの指導者にも大きな刺激と影響を与えていただきました。子どもを取り巻く環境が変わりつつある中、子どもの育ちを支える大人がすべきことはどのようなことなのでしょうか? 教員を目指したきっかけから、さらに教育の本質についてもうかがいました。
1944年熊本県生まれ。1969年から神奈川県内の高校、中学の英語教師として学校教育に従事。1988年に神奈川県茅ヶ崎市の教育行政と学校現場とを往復しながら指導主事を務めた後、教育研究所長、中学校教頭、指導課長、小学校校長、指導担当参事を経て、2001年に新設開校の茅ヶ崎市立緑が浜小学校・初代校長に着任。2004年に退職後も、教育実践「響の会」会長として各地で講演活動を行う。著書に『あせらない あわてない あきらめない』(教育出版)、『人は人によりて人になる』(MOKU出版)など。
人生が大きく変わった小学校の先生との出会い
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今日の私の礎を築いてくれたのは、小学校5・6年生時の担任だった田島直人先生です。大学を卒業したばかりの新任の先生で、この先生との出会いで私の人生は大きく変わりました。私は6人兄弟の末っ子として昭和19年に生まれましたが、父は翌年に戦死。父のことを知らずに育ち、10歳上の兄が大黒柱でした。小学校に行っても、友だちとあまりしゃべることもない、何もできない子で、3年生のときにはいじめにもあいました。当時の担任に訴えても何も変わらず、本当に学校に行くのがつらかったです。
それが、5年生で田島先生が担任となってから一変しました。野球が上手な先生の呼びかけで全員で野球をやることになり、キャッチボールがうまくできない私に、繰り返し動作のコツを教えてくれました。私ができるようになると、「できなかったんじゃないよ。やらなかっただけだよ。やればできるんだよ」と言われたのです。
そのひと言で頭の中が充血しましたね。「そうなんだ、やらなかっただけなんだ」と。帰宅後もキャッチボールがやりたくて、近所の子に相手を頼んだら、その子がびっくりしていました。以来、明けても暮れても野球をやるようになり、教員になってから野球部を指導し、プロ野球選手になった卒業生もいます。
おもしろいもので、自らの還暦の同窓会のとき、私が運動音痴で引っ込み思案だったことを覚えている人はいませんでした。田島先生だけは、「2年間ですっかり変わったもんな」と。教員というオトナの言葉ひとつでこんなにも変わるという実例です。
6年生の頃、作文に「大きくなったら田島先生のような先生になる」と書きました。するとご本人から、「田島先生のような先生になっちゃダメ。日本一の先生になりなさい」と言われました。中学を卒業して進学先の高校名を田島先生に伝えると、「なんだ、君はぼくの後輩だよ」というのです。感激してその帰り道、どう帰ったか覚えていません。母校の中学校の教育実習では、なんとその田島先生のご長男を教えるという奇跡もありました。こんな経緯があるので、教員になって、黙っている子、自分から心を開こうとしない子に、何をすればいいかということをずっと考えてきました。
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