「心の窓」を開くために高校生を家庭訪問
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恩師に憧れて教員になると決めた私は、「教育学部でなくても教員にはなれるよ」との高校の担任教員の助言で、大学は得意な英語が学べそうな貿易学科へ進学します。
大学生時代には、恩人といえる方との出会いがありました。神奈川寒川町の大久保さんご一家で、私のために畑に一軒家を建ててくれて、そこで私は大学生ながら塾を開き、実家からの仕送りがなくても生活ができました。血縁関係もないのに大久保さんは、「自分は戦争から生きて帰って来られた。死んでしまった戦友のために私ができることをしてあげているだけなんだ」というのです。この言葉は、その後の私の指針となりました。
いざ就職となると、故郷の母をラクにしたいという思いから、給与が高かった商社を希望。しかし入社には至らず、1年間大学の聴講生となり、そこで教員免許を取得しました。
大久保さんの紹介で最初に勤めたのが神奈川県内の私立高校です。クラスの生徒42名のうち半分は県立高校の不合格者。その生徒たちは覇気がなく、明らかに教員に対して不信感を持っていました。この子たちの「心の窓」を開こうと、思いついたのが家庭訪問です。高校生にもなって家庭訪問なんて……と、生徒たちから反発されましたが、夏休みに1日1戸ずつ実行したところ、胸の内を語ってくれました。9月の始業式にはそれまであった遅刻者がゼロ。保護者が勤務していた保養所で、4日間の勉強合宿も行いました。教員が心を開くことで、生徒たちも心を開いてくれたのです。
よく「開かれた学校」といわれますが、このようにお互いが心理的に「開く」ことが必要ではないかと思います。物理的にも「開く」ことが大切です。私は小学校の校長だったとき「ガラス張りの校長室」をつくりました。はじめは校長室のドアと窓ガラスを開けて、子どもたちが入ってきやすくしていましたが、冬になり締め切らねば暖房費のムダになるということで、ガラス張りに替えたのです。教員は、校長室に苦情に来た親が誰なのかがわかってしまうので嫌がりましたが、子どもたちの意見を取り入れた結果でした。
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