指導法、教材、評価……
英語教育現場での課題解決に向けて研究中
![]() シンガポールの幼稚園 英語の音と綴りの学習 |
私の専門は、義務教育における英語教育の教授法や、子どもたちの言語習得に関することです。研究対象は主に日本ですが、アジアの子どもたちが母語とたとえば英語など2つの言語をどう学んでいくかというバイリンガル教育についても関心があり、日本との比較もしています。また、CEFR (Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)の日本語版である「CEFR-J」のプロジェクトにも関わり、Pre-A と A1 level(小学校レベル)を研究しています。その成果として『英語到達度指標CEFR-Jガイドブック』(大修館書店、投野由紀夫(編))等があります。
日本では、2011年度から小学校5・6年生での外国語活動が必修となりました。2020年度からはグローバル化に対応した英語教育改革が計画され、外国語活動は3・4年生からとなり、5・6年生では教科となります。教科になるので、教科書もあり、評価もされます。この改革では、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能が求められるようになり、子どもにとっても教える側にとってもハードルが高くなるでしょう。
2018年4月からの2年間は移行期と位置づけられ、私はそれに伴う小・中の連携についても研究しています。現在、すでに小学校、あるいは先生によって指導方法に違いがあり、塾など学校外で学ぶ子とそうでない子の差などもあります。
また2020年の改革に向かうなか、大きく3つの課題があると思っています。まず指導法です。「聞く」「話す」能力はALT(外国語指導助手)のおかげもあり、少しずつ力がついてきたと感じますが、「読む」「書く」という文字を媒介にしたコミュニケーションの小学生に適した指導法は、まだ明確には確立されていません。
次に評価の問題です。これまでは、たとえば「積極的にコミュニケーションを図ろうとしている」などと曖昧さがありましたが、今後は学習の到達目標を「~することができる」という形で指標化し、英語を使って具体的に何ができるようになったのか、明確にしなくてはなりません。その評価を的確にすることができるのか、日本中同じ物差しで本当にできるのかが疑問です。
3つ目は教材についての課題です。移行措置の教材として『We Can!』(暫定版)が文部科学省から提示されました。2018年度から2年間、子どもたちが使用することになります。この教材は、新しい学習指導要領を踏まえて制作されていますので、「三人称の表現」、「副詞や形容詞、動詞等の語彙の増加」、「過去形の導入」に加えて「読むこと」や「書き写すこと」等、これまでの教材よりもレベルが高くなっています。これらの教材を使って教える指導者の研修の機会は少なく、また、この教材の効果についての検証はなされないまま、2020年度から使用する「教科書」が出版されます。的確な教材やそれにともなう指導方法については、しばらく時間がかかりそうです。