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Vol.081 2021.09.24

オアシススタイルウェア代表取締役
中村有沙さん

<後編>

学びによって自分も世の中も変えていける
「妄想」が「現実」に変化していくことを楽しもう

オアシススタイルウェア代表取締役

中村 有沙 (なかむら ありさ)

神奈川県横浜市生まれ。東京大学経済学部卒業後、マンションの水道メンテナンス事業を手がける株式会社オアシスソリューションに入社。営業職として4年間活躍後、人事部を立ち上げる。採用難の解決と現場のイメージ改革を目指し、作業着のリニューアルプロジェクトを担当したことがきっかけで、スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を考案。2017年12月株式会社オアシススタイルウェアの設立時に代表取締役に就任。3歳から公文式教室に通い、中学2年生まで算数・数学、国語、英語を学ぶ。

スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を考案し、大ヒットに導いたオアシススタイルウェアの社長、中村有沙さん。意外なことに社会人になる前は内気で、「こんな自分に何ができるのか」悶々としていたといいます。そんな中村さんにとって、3歳から続けてきた公文式は「世界を広げてくれた存在」でした。知的好奇心を蓄えつつ、就職先に可能性を感じた水道工事会社を選び、自ら人事部をつくり、異業種のアパレル市場に進出し……と、活躍の幅を広げ、さらに前進中です。行動の原動力となったのは、自分や社会を「変えていきたい」という強い願いでした。

目次

「内気な性格を変えたい」と
就職活動は営業職を希望

オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん

中高は女子校で似たような環境の人が多かったのですが、入学した東京大学では女子はクラスに1割程度。地方から来た人、ずっと年上の人など、バックグラウンドの異なる人たちがたくさんいて刺激的でした。

当時印象に残っているのは、あるベンチャー企業の創業者の講演です。企業が利益を上げることの大切さを説いた上で、今はない事業を立ち上げることで多くの人が助かる可能性があり、既存の仕事を守っていくことも大事だけれど、そうではないところに目を向けるとおもしろくなる、というような内容でした。それを聞いて、ゼロから事業を立ち上げることに興味を持つようになりました。

そんなふうに感化される一方で、現実の私はやっぱり内気で友だちも少なく、何か持っているわけでもない。勉強が得意だったから受験はうまくいったけど、ただそれだけ。そんな自分に何ができるのか悶々とし、自分を変えたいという気持ちが大きくなりました。子どものときからずっと、積極的で友だちの多い同級生がうらやましく、「自分もあんなふうに社交的になれば人生が変わるかも」と思っていたのです。

就職活動も、「引っ込み思案な自分を少しでも変えたい」と思い、営業をやらせてくれる会社を探しました。でも面接に行っても、受け答えの印象から営業ではなく経理部を進められることもよくありました。そんな中、「営業をやりたいならがんばってみる?」と背中を押してくれたのが水道工事のオアシスグループでした。

自分でもできるのかどうかと思いながらも粘れたのは、40歳過ぎの先輩に、「今の時点での向き不向きは当てにならないから、やりたい気持ちを重視したほうがいい」と助言されたことが影響しています。

就活はベンチャー企業や中小企業に絞りました。大きな会社で今人気の事業をやるよりも、小さい会社を大きくする過程に携わるほうがおもしろいのではと考えたからです。ただ、当時の旬なベンチャー企業はゲームアプリ開発がほとんどでした。私はゲームには興味がなく、生活に密着した事業に関心がありました。そんな時、たまたま求職サイトで見つけたのが、入社を決めたオアシスグループでした。地味ではありますが、水道工事は生活に欠かせませんし、説明会で代表の話を聞き、おもしろそうな会社だなと興味を引かれたのです。そこに就職が決まると、両親は驚くと同時に、「大丈夫……?」と心配顔。説得に1ヵ月かかりましたが、最終的には「やりたいならがんばって」と応援してくれました。

入社後に経験した営業職と人事職

育ててくれた会社をよりよくしたい
やってみてダメだったら別の方法を考える

オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん

入社後は希望通り営業職で、マンションの管理会社などに水道のメンテナンスを提案するなどの仕事をしました。仕事内容につらさやギャップは感じず、コミュニケーションの底辺からのスタートだったので、いろいろなことができるようになっていくことがとても楽しかったですね。

入社時は、現場の職人さんたちから「東大卒のロボットみたいな女の子が入社してきたけど大丈夫?」と心配されたり、先輩と商談のロールプレイをするときも、私だけ「そんな話題はお客さまに失礼だからこうしよう」など、ふつうなら注意されないことを注意されたり(笑)。でも、水道工事はチーム力が大事で、社内にはみんなで新人を育てていこうという、温かく見守ってくれる雰囲気がありました。私もたくさん教えていただき、2年ぐらいかかりましたが、変わることができました。気長に育ててくれた会社にほんとうに感謝しています。

4年ほど経つと、社内の課題が見えてきて、それを改善して会社をもっとよくしたいと思うようになりました。そのひとつが、当時はなかった人事部をつくること。後輩と一緒に企画書をもって、社長に思いをぶつけました。風通しのよい社風ではありましたが、直接社長に提言するのは初めてで、勇気がいりました。社長は「ふたりでやってみたら」と受け入れてくれ、その後、評価制度のほか、3ヵ月に1回社長が全社員に直接、思いや今後の計画などを伝える「社長研修」をつくったりしました。

設立10周年を機に発足したのが、ユニフォームリニューアルプロジェクトです。当時、技術職の新卒採用の応募者が少なく、採用活動では第一印象の違いが採用に大きな影響を与えると感じていたので、制服を刷新しようとしたのです。運用まで1年半ほどかかりましたが、技術職の応募は3倍に増えました。そうして前回お伝えしたように、取引先から反響があり、事業化することになって今に至っています。

少しずつ、現実の自分が妄想していた自分に近づいてきました。この会社に入って、実現できる力を得られるようになったと思います。周囲のお陰はもちろん、学んでいくことが根本的に好きだったことも一因かもしれません。いろいろな人に話を聞いてアドバイスをいただいたり、本で読んだりして学んだことを実際にやってみる。それによって変化していくことが好きなので、そうしたことを自然とたくさんやってきました。その分うまくいかないこともありますが、やってみてダメだったら別の方法を考える。とにかく進んでみることを意識してきました。

中村さんが描くこれからの活動

わが子が大人になったときいい世の中であるように
課題解決につながる事業を追求していきたい

オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん

2020年3月に長女を出産し、1年間の育休を得てこの4月に復帰しました。妊娠がわかってから出産まで約8ヵ月あるので、その間に、メンバーに任せられるよう準備を進めました。お陰で復帰後は、長期的な経営を考える余裕ができています。仕事というのは落ち着くタイミングは、多分ありません。なので、「落ち着いたら出産しよう」とは考えずに、どちらもひとまずやってみようと楽天的に考えました。それでなんとかなっています。

出産後は、「いい社会にしたい」との思いが強くなりました。わが子が成長した時代に、今よりいい世の中になるようにしたいですし、生きづらさもなくなっていてほしい。そのために自分ができることがあれば、もっともっと関わっていきたい。今は洋服という商材で事業をしていますが、それにこだわらずにアンテナを張って、課題解決につながるような事業をしていきたいですね。

出産して着目するようになったのは教育市場で、学校制服へのワークウェアスーツの導入を広めていきたいと思っています。丸洗いできるので清潔に保てるし、動きやすく、子どもの成長を妨げません。すでにインターナショナルスクールに導入いただき、親御さんからご好評いただいています。

ライフワークとして取り組みたいのは介護業界に関する仕事です。両親が介護離職をしているという背景もありますし、お客様である介護事業者も人手不足で悩んでいます。今後高齢人口が増える中、まだまだ課題のある業界だと思うので、何かできないかと考え中です。

私は仕事には2種類あると思っています。ひとつは今ある仕事を守っていく仕事。これはAI化が進むでしょう。もうひとつはゼロからつくっていく仕事。これは人にしかできないと思うので、それをいかにできるようになっていくかが、これからの子どもたちには大事でしょう。それには、こうなりたいからこれをがんばろうという自分発信で出てくる力、進めていく力が必要です。

親は子に、好きなことを徹底的にやらせたり、興味につながるようなものをその子の周りに置くなどして促したりするといいかもしれませんね。私の娘は今チョウチョブームなので、チョウチョが登場する絵本を図書館で借りまくっています。親1年目なので大きなことは言えませんが、私が両親にされてよかったと感じているのは、やりたいことを見守ってくれたこと。もし就職時にとめられて、別の会社に入っていたら、今の私はありません。私自身も、娘のやりたいことを見守っていきたいと思っています。

前編を読む

関連リンク

株式会社オアシススタイルウェア


オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん   

前編のインタビューから

-ワークウェアスーツを開発するに至った経緯
-公文式で学んだ2つのこと
-中高時代に影響を受けたある先生の言葉

前編を読む

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