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Vol.081 2021.09.17

オアシススタイルウェア代表取締役
中村有沙さん

<前編>

学びによって自分も世の中も変えていける
「妄想」が「現実」に変化していくことを楽しもう

オアシススタイルウェア代表取締役

中村 有沙 (なかむら ありさ)

神奈川県横浜市生まれ。東京大学経済学部卒業後、マンションの水道メンテナンス事業を手がける株式会社オアシスソリューションに入社。営業職として4年間活躍後、人事部を立ち上げる。採用難の解決と現場のイメージ改革を目指し、作業着のリニューアルプロジェクトを担当したことがきっかけで、スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を考案。2017年12月株式会社オアシススタイルウェアの設立時に代表取締役に就任。3歳から公文式教室に通い、中学2年生まで算数・数学、国語、英語を学ぶ。

スーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を考案し、大ヒットに導いたオアシススタイルウェアの社長、中村有沙さん。意外なことに社会人になる前は内気で、「こんな自分に何ができるのか」悶々としていたといいます。そんな中村さんにとって、3歳から続けてきた公文式は「世界を広げてくれた存在」でした。知的好奇心を蓄えつつ、就職先に可能性を感じた水道工事会社を選び、自ら人事部をつくり、異業種のアパレル市場に進出し……と、活躍の幅を広げ、さらに前進中です。行動の原動力となったのは、自分や社会を「変えていきたい」という強い願いでした。

目次

    「こんなチャンスはないだろう」と社長就任を決意

    オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん

    ストレッチ性があって動きやすく、丸洗いができ、速乾・撥水機能もあり、ポケットも多い。かつスーツに見えるので、その後のデートもOK。そんな「スーツに見える作業着」を製造販売しているのが、私が代表を務めるオアシススタイルウェアです。当社は水道工事業を行うオアシスライフスタイルグループの一子会社で、長年培ってきた施工現場でのノウハウを活かして、こうした高機能のスーツをつくっています。

    会社は設立4年目。従業員は5人から40人に増えました。私は経営全般に関わっていて、営業チームと一緒に営業展開の方法を考えたり、広報チームに今後の動きをアドバイスしたりとメンバーとやりとりするほか、今後の商品企画や販売方法など長期的視点での戦略も考えています。

    なぜ水道工事会社がアパレルの会社を作ったかというと、そもそもは水道工事会社の人事部で自社の水道工事部門の制服(作業着)をリニューアルしたことが始まりです。新しい制服を打ち出した採用活動を始めたところ、ありがたいことに反響が大きく、技術職希望者が3倍に増えたのです。取引先のお客様からの問い合わせも増えたことから、オーナーが事業として成り立つのではないかと考え、会社として独立させることになりました。

    社長に就任することを打診されたとき、実は迷いがありました。私は新卒で水道工事業を手掛けるオアシスソリューションに入社し、営業を経て人事に異動。そこでユニフォームリニューアルプロジェクトを担当したことが、現在の立場になるきっかけとなったわけですが、じつは人事部も自ら立ち上げていたので、そこでもまだやりたいことがありました。人事を続けるか、新しい事業のトップとして働くか、かなり迷い、「こんなチャンスは滅多にないだろう」と今のほうを選びました。

    素人がいきなりアパレル分野に飛び込んだわけです。洋服をつくること、在庫をもつこと、販売すること、すべてがまったく初めてで、苦労もありましたが、逆に素人目線で商品づくりや仕組みづくりに取り組めたことが強みとなりました。例えば、アパレル業界の関係者からは「作業着なんて個人には売れないよ。やめたほうがいい」と忠告されたのですが、ニュースサイトでご紹介いただいたところ、個人からの問い合わせが増えたのです。1ヵ月でECサイト(ネットショップ)を整え、手応えを得ることができました。ひとまず小さくスタートしてみて、ダメだったらまた考える。そんなふうにしてここまで成長してきました。

    4年経ってみて、正直、今までの仕事の中で一番つらいです。営業や人事では「こうしたい」というビジョンがありましたが、代表となった当初は明確なビジョンはなく、そこから形を見つけていかねばなりませんでした。いまだに試行錯誤しています。

    公文式で学んだ2つのこと

    好奇心を持つきっかけになった公文式

    オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん

    小さい頃は引っ込み思案でとてもおとなしい子でした。じつは社会人になるまでずっとそうでした。友だちも少なく、小学校から帰宅したあとは、3歳下の妹とお菓子を食べながら自宅で本を読むのが日々の楽しい遊びでした。公文と出合ったのは私が3歳の頃です。妹を妊娠中の母は、出産のため大阪に帰省しており、そのときに私を一時的に公文式教室に通わせました。母によると、字を書くことを覚え始めた時期でとても楽しそうにしていたようです。それで横浜に戻ってからも地元の教室に通うようになり、算数・数学、国語、英語を中2まで続けました。

    続けていてよかったと思うことは2つあります。ひとつは好奇心を持つきっかけになったこと。国語のプリントでは小説の一部が取り上げられていて、元の小説を読むようになりました。母もそのことを知っていて、例えば京都に家族旅行したときに「ここは森鴎外の『高瀬舟』の舞台だね」と話題にすることもあり、机上の勉強と実体験とがつながるきっかけにもなりました。英語では、アルファベットを書けるようになったら「筆記体も書きたい」と、ドリルを買って自学したこともあります。こんなふうに何かを知る入り口になり、世界を広げてくれたのが公文です。

    もうひとつは、ズバリ勉強として役立ったことです。特に算数・数学は得意科目となり、受験勉強らしきものはせずにすみました。幼稚園の頃に「幼児優秀児」をめざして母と二人で頑張っていて、中学教材まで進むことができたのです。今思えばよくやったなと思います。小学校にあがってからは、簡単なところに戻ってやり直しながら進み、中2で大学受験レベルまでいきました。母は教育には力を入れていましたが、勉強の中身よりも「がんばればOK」という姿勢で、努力する大切さを教えられました。

    公文式は、先生と相談しながら自分のペースで学習を進められます。それがクラス全員で進む学校の勉強とは異なる点です。また、つまずいたら「簡単にできるところ」に戻って、それを繰り返すことができるのも公文ならではです。例えばかけ算でつまずいたら、かけ算の練習をするだけではなく、簡単な足し算まで戻ってそれを完璧にするまで繰り返す。「そうすると、自然にかけ算も解けるようになるんだよ」と、通っていた教室の先生に指導されたことを覚えています。コツコツ積み重ねていけば自然と前に進めるのだ、という自信になりました。

    中高時代に影響を受けたある先生の言葉

    勉強ばかりしていた中高時代に
    視点を広げてくれたある先生の言葉

    オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん

    内気ながら小学生の頃の夢は政治家でした。高学年のころ、政治の課題を学ぶ授業があり、「私だったらこうするのに」と幼な心に思っていました。両親がニュースの解説をしてくれたり、子ども新聞を読んだりと、家庭で社会問題に関心があったことも政治に興味を持った一因だと思います。学校でもおとなしくて、何か行動をしたわけでもない。「私だったら」は単なる妄想にすぎませんでした。

    進学した中高一貫校でも、相変わらず友人は少なく、何かに打ち込むこともなく、漫然と過ごす日々。今でいう「陰キャ(陰気なキャラクター)」でしたね。東大を目指す子が多い学校だったので、私も中3のときから大学受験の勉強をしていました。とくに目的意識があったわけでもなく、できないことを攻略してできるようになっていく、ゲーム感覚が楽しかったのでしょう。運動は苦手で、部活は週1回、料理やお菓子をつくってみんなで食べる料理部でゆるく活動していました。

    勉強メインの中高時代を過ごす中、意識が変わったのは、ある英語の先生の言葉です。「あなたたちは恵まれた環境で教育を受けてきた。だから、今後、大学に入ったり社会に出たりしたら、世の中にどう還元していくかを考えなくてはいけないんだよ」と。それまでは自分のインプットしか考えていませんでしたが、この先生の言葉で、次はアウトプットの段階なのだなと気づきました。今後、自分はどう社会に貢献できるのか。そんな視点がこのとき加わりました。高2のときです。

    進路を決めるにあたり、会社という組織に関心が出てきたので、経営学科に進むことにしました。10人程度のゆるい組織であっても、みんなで何かを決めて進めるのは難しい。もっと人数の多い会社はどうやっているのだろうと、気になり出したのです。公文の教室でお世話になっていた先生に、経営を志すことにしたと伝えたら「これからの人はゼロからビジネスをつくっていく力が大事になるよ」と言っていただいたことが心に残っています。

    後編を読む

    関連リンク

    株式会社オアシススタイルウェア


    オアシススタイルウェア代表取締役中村有沙さん   

    後編のインタビューから

    -就職先のオアシスグループとの出合い
    -入社後に経験した営業職と人事職
    -中村さんが描くこれからの活動

    後編を読む

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