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Vol.058 2018.10.19

コピーライター
佐々木圭一さん

<後編>

「伝え方」を学べば、
 人の心を動かし行動を変えられる。
 子どもたちの夢を後押しできる。

コピーライター

佐々木 圭一 (ささき けいいち)

1972年東京都生まれ。上智大学大学院を卒業後、1997年博報堂に入社、2014年クリエイティブブティック・株式会社ウゴカスを設立。日本人初、米国の広告賞「One Show Design」で金賞を獲得(Mr.Children)。カンヌ国際クリエイティブアワードにて、金賞を含む計6つのライオンを獲得するなど、合計55のアワードを入賞受賞。郷ひろみ・Chemistryの作詞家として、アルバムオリコン1位を2度獲得。著書『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)シリーズは127万部を突破。

ベストセラー『伝え方が9割』シリーズの著者として知られるコピーライターの佐々木圭一さん。大学での講義や、企業での講演を通じて、日本のコミュニケーション能力のベースアップをめざして精力的に活動されています。そんな佐々木さんですが、じつは以前は人とコミュニケーションをとるのが苦手だったとのこと。佐々木さんがコトバの達人に至るまでの道のりや伝え方の大切さ、これからの夢などについてうかがいました。

目次

3年間、コトバを書き写して気づいた法則とは

佐々木圭一さん

たとえば、映画『燃えよドラゴン』の「考えるな、感じろ」や、ドラマ『踊る大捜査線』シリーズの「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きているんだ!」という名セリフ、アサヒビールのCMのコピー「コクがあるのに、キレがある」といったものがあります。これらは単語そのものは違いますが、正反対のコトバを使っています。正反対のコトバを使うと、印象的になることに気づいたんです。この「法則」は、『伝え方は9割』で「ギャップ法」として紹介しています。

佐々木圭一さん

このとき気づいたのは「ギャップ法」でしたが、これだけではなく、ほかにも法則があるはずだと思うようになりました。そうして意識してコトバに向き合うようにすると、いろいろな「法則」があることを発見しました。それらの法則については『伝え方が9割(2)』で、「強いコトバをつくる8つの技術」として紹介しています。

それまでは印象的なコトバは「ひらめき」や「センス」でつくるものと思っていました。しかし、ひらめかなくてもつくれるんだ、数学に公式があるようにコトバにも公式があるんだと気づきました。その法則に基づいてコピーを書くようになってから、私の人生は激変しました。数々の広告賞をいただくようになったのです。この気づきを、自分だけのものにしておくのはもったいない。伝えるのが苦手な人たちの助けになれば!と思って書いたのが『伝え方が9割』です。

じつはこのタイトル自体が「ナンバー法」という技術を使っています。この本は「伝え方が大切」という内容ですが、それをタイトルにしてしまっては、誰も手にとらないでしょう。「大切」を「9割」と、あえて数字にすることで、印象に残りますし、理解されやすくなります。

佐々木さんが家庭で実践されている伝え方とは?

伝え方を変えれば子どもは動く
「勉強しなさい!」ではなく「一緒に勉強しよう」

佐々木圭一さん

伝え方によって、印象も変わるし、行動も変わります。それは、広告だけでなく、日常生活にも応用できます。たとえば、「うちの子は勉強しない」と、悩まれている保護者の方も多いと思います。それを解決するいい方法をお教えしましょう。「勉強しなさい!」と言うのではく、「一緒に勉強しよう」と言ってみてください。これは伝え方の技術のひとつ「チームワーク化」です。

もちろん、同じ勉強でなくても、本を読んだり家計簿をつけたりするでも、何でもいいのです。同じ空間で一緒にやることが重要です。人は「一緒に」と言われると、それだけでうれしくて、そのコトバにのりたくなるのです。勉強だけでなく片づけでも同じです。「片づけなさい!」と言っても、子どもは片づけませんよね。でも、「一緒に片づけよう」と言えば、100%ではなくても、動いてくれる可能性はぐっと高くなります。「一緒にやる時間なんてない」という方もいるかもしれませんが、子どもはすぐ成長してしまいます。触れ合う時間は限られています。

じつはわが家にも、3歳と6歳の娘がいるので「伝え方の技術」を頻繁に使っています。一例をご紹介すると、「選択の自由」という技術です。子どもは「着替えなさい」といってもなかなか着替えませんよね。そんなとき「ウサギさんのシャツと、クマさんのシャツと、どっちがいい?」と聞きます。すると、「ウサギさんがいい」と、自分で選んで着替えるようになります。人は「AとBどちらがいい?」と聞かれると、思わず、どちらか選んでしまうのです。親から言われてではなく、「自分で選んでいる」意識になるのがポイントです。

先日、「おっ!」と思ったことがあります。玄関先でなかなか靴を履こうとしない3歳の次女に、6歳の長女が「サンダルがいい?スニーカーがいい?」と聞いているんです。親が繰り返し言っていることは、しっかり子どもも学ぶものなんですね。

佐々木さんから保護者の方へのメッセージ

夢は「伝え方」の教科書をつくること

日本にはいい製品やサービスがたくさんあります。しかし、それがうまく伝わっていないことがたくさんあると感じます。企業の商品やサービスもそうですが、個人にもいえます。一人ひとりはいいものを持っているのに、それがうまく伝えられていない。とてももったいないことです。伝え方を学べば、相手に「この商品を買ってみよう」「この人の話をもっと聞いてみよう」と思ってもらいやすくなるはずです。

佐々木圭一さん

アメリカでは小学生のうちからコミュニケーションの授業があります。つまり、伝え方は学ぶことができるのです。日本人が「話すのが苦手」「伝えベタ」といわれてしまうのは、人種の違いではなく教育が違うからです。

伝え方は学ぶことができるのに、その認識はいまの日本にはありません。『伝え方が9割』シリーズは累計127万部に至っていますが、これは人口のたった1%に過ぎません。もっともっと多くの人に知ってもらうには、どうしたらいいか。それには教科書をつくる必要があると思っています。そして、それが私の夢です。ハードルは高いですが、賛同していただける方と一緒に実現したいと思っています。

これまで私は、「まず、やってみる」ことを心がけてきました。いまの夢に向かっても、まず、動いてみたいと思います。もう1つ、心がけてきたのは「ほかの人がやめても、自分は続ける」ことです。壁にぶつかると、人は「やっぱりダメだった」「自分には向いていない」と理由をつけてやめたくなります。そこを、続けるのです。私はずっと、印象に残るコトバを書きため続けてきたことで、法則を見つけることができました。続けることで壁を突破して、ふつうの人が行けない場所に到達できると信じています。

保護者の方には、お子さんに勉強だけでなく、「伝え方」も学ばせてあげてほしいと思います。「伝え方」の技術を身につけていれば、夢を実現する後押しになるでしょう。「伝え方」ひとつで、人の心を動かし、行動も変えられるのですから。人生の壁をも乗り越える力になるに違いありません。

前編を読む

関連リンク 株式会社 ウゴカス


佐々木圭一さん

前編のインタビューから

-佐々木さんが携わるコトバの仕事
-公文式と『伝え方が9割』との関連性
-理工学部から広告代理店へ。その理由とは?

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