正しい知識の土台が、夢の実現を支えてくれる

アナウンサーをめざすきっかけは、小4のときにアメリカのニュース番組でコニー・チャンさんという女性キャスターを見たことです。ニュースキャスターの安藤優子さんにもあこがれました。凛とした空気をまといながらニュースを伝える安藤さんは、キラキラととても輝いて見えました。それが同じアジア人として、日本人として誇らしかったです。
とはいえ、アナウンサーになりたいという思いはあっても、帰国子女ということもあり、日本語に対するコンプレックスがありました。中2のときに日本にもどってきてから、母に勧められて公文の教室に通っていたんですよ。小さい子たちといっしょに一所懸命、国語のプリントをやりました。たまにでしたが、「中学生なのにまだそんなとこやってんの?」という、小学生の男の子のちょっとトゲのあるカワイイ声援も受けながら(笑)。でも、そこで日本語の基礎をあらためて学んで本当に良かったと思っています。
考えてみると、アナウンサーとして入社できたことは奇跡的ですが、アナウンサーになってからも日本語へのコンプレックスは少なからずありました。ただ、日本語がほかのアナウンサーのレベルに達していないという自覚は、この職業を続けていくうえでは、良い方向にも働きました。言葉ひとつひとつの意味をつねに意識して、読んだり書いたりするようになりましたから。意味がよくわからない言葉を集めたノートを作って、言葉の意味や使い方や語源などをこまめに調べるようにもなりました。
言葉の意味を調べるときもなりふりかまわずでしたね。アナウンス用のたくさんの資料や原稿といっしょに、子ども向けの四字熟語の本や漢字ノートが並ぶ私の机は、当時の先輩方から「小学生の学習机」って呼ばれていたくらい(笑)。しかし、テレビのニュースでは、どんなにむずかしい内容や事象もわかりやすい言葉で伝える必要があります。その点では日本語を「わかったつもり」にならずに、いつも真正面から真摯に向き合えたことはとても良かったと思うんです。
いまの時代は何でもネットで調べられるし、それでわかったつもりになりがちなことが多いのかもしれません。さらに、そのなかには誤った情報もたくさんあるので、それを判断できる力が大切ですね。その判断力を支えるのは、正しい知識の土台だと思います。だからこそ、学びつづけることが必要なのだと思います。とくに子どもたちには、自分の夢の実現のためにも、そのことを知ってほしいと思っています。どんなに素敵な家も土台がしっかりしていなければ建てられないのですから。