手に負えないくらいの負けず嫌いでした
ANIMAX主催の第4回全日本アニソングランプリ(応募総数10189組)で優勝したのが2010年、歌手としてデビューしたのは2011年5月でしたので、あっという間の3年間でした。去年の3月に大学を卒業したのですが、それまでは大学に通いながらお仕事のときに新幹線で東京にくる生活。夢(仕事)と学業の両立は難しかったけれど、自分なりの立ち向かい方は見つけられたのではないかと思います。
幼稚園で公文を始めたころから、「決めたことをちゃんとやってから、やりたいことをやる」と両親に教えられてきました。スポーツやピアノや遊び……やりたいことをやるなら、まずは勉強をちゃんとやってからと。だから、大学生活も歌手としての仕事も、どちらも中途半端にはしたくなかったです。この大学四年間で初志貫徹できないなら、人生の初志は貫徹できない、と自分に言い聞かせていました。
公文と同じ時期にピアノも習い始めたのですが、私はすごい気分屋で、弾きたくないときは全然弾けない子。でも先生がとても懐の深い方で、気分が乗らない演奏をしている私に、「きょうは好きな曲を弾いていいよ」とよく言ってくれました。“ピアノが好き”っていう気持ちを大切にしてくれていたんだと思います。
小学校に入ってからはそこにダンスもプラス。けれど、私はもともと家で勉強しているほうが好きなタイプでしたから、人前で踊ることには何か抵抗があって……。なぜかずっと真顔で踊っていました(笑)。当たり前ですけど、笑顔の子がセンターのポジションに置いてもらえるんですね。しばらくして地元の大会に私たちのチームが出場することが決まって、そのときですね。どうしても選抜メンバーに入りたいと思い、笑って踊るようになったのは。それからはすごく楽しくなって、ダンスも突き詰めたいと思うようになりました。手に負えないくらいの負けず嫌いなんです。
「歌いたい」気持ちが弾けたとき
本当は小学生のころから歌手になりたいと思っていました。でも、中2くらいまでは誰にも話すことはなかったです。いちばん大切な夢だから、周囲に否定されるのが怖かったのかもしれません。歌手って資格があってなれるものではないし、夢見がちって思われてしまったり、勉強からの逃げって思われてしまったりするのかなって、そういう目線が怖くて話せなかったんだと思います。
その思いが弾けたのが、ピアノの発表会のとき。弾き語りをしたいと思って、歌いたいと思う曲もあって、思い切って先生に相談してみたんです。先生は何も否定せずそれを受け入れてくださいました。「これ歌っているとき、私は気持ちいいけど、聴いている側はどうなんだろうか?」と考え込んでしまう私に、「マリナちゃんの歌は伝わるものがあるから大丈夫」って言い聞かせてくれて。とにかくいつも励ましてくれたので、自信をもって歌手を目指すことができました。先生がいなければ大学のときにアニソングランプリに応募することはなかったと思いますね。
あんなに人見知りだったのに、あのときどうして「弾き語りがしたい」って思ったのか、今でもふと考えることがあります。たぶん「歌いたい」っていう気持ちが臨界点まで達していたのでしょう。本気の夢だから、言えないことが悔しくて、もどかしかったのかもしれない。発表会で歌えたことももちろん嬉しかったんですけど、アンケートの「もう一度聴きたい演奏は?」という質問に、私の名前を書いてくださる人がけっこういて。もっともっと歌もピアノも磨かなければと思いました。
アニソンの魅力に触れて
歌手を目指してはいたものの、中学から大学まで実際に行動することは一度もなくて、受験勉強だったりサークル活動だったり、目の前のことを必死にやっているという日々が続いていました。それがガラっと変わったのは大学生のとき。アナウンサー志望の友人がアルバイトしたお金で、大阪から東京までアナウンススクールに通っているのを目の当たりにして……。めちゃくちゃかっこよかったんですよ。それに比べて自分はどうだろうって。私も一歩踏み出さなきゃって考えていた矢先、偶然アニソングランプリの案内を目にしたんです。きっとこの友人が背中を押してくれたんだと思います。
アニメもアニソンもずっと好き。さかのぼると3歳のときに『スラムダンク』に出会って、そこからですね。『スラムダンク』は育ての親と思っているくらい(笑)。『スラムダンク』のアニメのオープニングとエンディングの曲を歌うと、どんなに体や心が疲れていても不思議とやる気が出てくるんです。
それから大学の軽音サークルのアニソン好きな先輩が「深夜アニメ」をたくさん教えてくれて、アニソンのコピーバンドに誘ってくれました。そこで『マクロスF』の主題歌『星間飛行』を初めて歌って、「やっぱりアニソンは最高だ……」って震えました。アニソンは、歌っている私自身のストーリーとアニメのストーリーが重なっている。だからみんなに届けたときの一体感はすごいし、頭のなかのイメージが何層にも広がっていくのが特別な魅力だと思います。
アニソンを歌うならもっともっと綿密にアニメを好きにならなきゃいけないと思っていた時期もありましたが、そうじゃなくて、ただただ自分の気持ちを素直に表現することが大事なんだということが最近ようやく分かってきた気がします。