熊本で生まれ育った「パリに住む日本人」として
「自分にしかできない音楽」を追求
![]() |
私はパリを拠点に、日本を含むさまざまな国で活動しています。1年のうち、4ヵ月から6ヵ月は日本を含む海外で公演をし、それ以外はパリで演奏、創作活動をしています。
パリは、言わずと知れたアートの首都。世界中から集まる個性あふれるアーティストが挑戦している街で、コンサート、お芝居、絵画鑑賞などに行くたびに、インスピレーションを受け、創作活動に不可欠なインスピレーションの源となっています。
今年9月中旬までは2ヵ月半、ハイクラスホテルでの専属演奏契約のため、中東のアブダビに滞在しました。中東は初めての訪問で、行く前は文化の違いに不安もありましたが、現地に行くとその不安は解消されました。やはり音楽は世界共通語なのだと思いを新たにしました。
ほかにアメリカ、シンガポール、ベトナム、韓国など、これまで8ヵ国で音楽活動をしてきました。地域が違っても、似たような音楽や楽器があり、言語でも似通った表現があるなど、いろいろな文化を知れば知るほど共通点が見えてくるのがおもしろいですね。人も同じで、文化やバックグラウンドが異なっていても、共通点は必ず見つけられると感じています。
もちろん違いもあります。10年暮らすフランスでは、メンタリティが日本のものと異なります。そして、「自分のアイデンティティは何か」をものすごく問われます。パリに渡った日本人の一人として、音楽を通して何を提案できるかを考えていくと、おのずとルーツをたどることになります。故郷熊本で見た風景、色、思い出、幼少期に聞いた音楽……そんな自分の中にあるさまざまな記憶の引き出しと、現在住んでいるパリで受けるインスピレーションなどが相まって、「私にしかできない音楽」をつくり続けているところです。