持てなかった鉛筆が持てるように!生活面での成長も。
ビタミンクラブ2階の学習部屋は、落ち着いて取り組めるよう、遊びのスペースとはドアで仕切られています。平日の夕方60分(30分×2部)が「くもんタイム」。対象となる利用者さんはそれぞれ決められた週2回の学習日に公文式学習に取り組みます。
しかし「もっとやりたい」という気持ちから、自分の学習日でなくても部屋に入って取り組もうとする利用者さんもいるそうです。公文式学習がスタートしてまだ1年余りですが、まさに高久保さんが期待していた「自ら取り組もうとする意欲」が生まれているのです。その他にも、公文式学習に取り組む利用者さんには、多くの変化が見られるといいます。
「ある利用者さんは、以前は一人で部屋に入ることもできなかったのに、公文式学習に取り組む中で、スムーズに入室ができるようになりました。また落ち着いて座っていられなかった利用者さんが、30分の学習時間中、座っていられるようになりました。他にも、短期間で鉛筆が持てるようになった利用者さんや、語彙数が増えて多くの単語を発語できるようになった利用者さんもいます。こうした姿を見ると、公文式学習を導入してよかったと心の底から思います。」
公文式学習担当の伊皆さん |
とは言え、公文式学習をスタートする際に行うテストでは、イスに座ることができないなどの理由で、テストを受けることすらできない利用者さんがほとんどだったそうです。しかし普段から利用者さんの特性を把握しているビタミンクラブの職員は、一人ひとりをしっかり「見て」、「待ち」、「見守る」ことを積み重ね、サポートを続けてきました。
職員の伊皆(いみな)健治さんは、公文式学習導入当初から利用者さんを見守ってきた立場からこう語ります。
「放課後等デイサービス入所時には一人ひとりアセスメントを行い、サービス計画を個別にしっかり立てた上で、公文式学習にどう取り組んでいただくかを決めます。取り組むのは基本的には国語ですが、『この利用者さんは算数もできそうだな』というように、一人ひとりに合わせて計画を立てます。そうやって個別に対応していくと、本当に少しずつですが、しかし確実に成長が見られるのです。練習を繰り返して、線がきれいに書けるようになったり、ひらがなが書けるようになったりするだけではなく、普段まったく動かず何もしなかった利用者さんがおもちゃで遊ぶようになるなど、行動意欲の向上や生活面での成長も実感できるのです。」
「ほめる」ことでやる気を引き出し
「待つ」「見守る」ことを心がける
利用者さんの成長が見られるのは、本人がやる気をもって取り組むからに他なりませんが、そのやる気を引き出すには、「ほめること」が大切だと高久保さんはいいます。
「大人でもほめられると悪い気はしませんよね。ですから私たちも、日ごろから利用者さんをほめることや、『ありがとう』と声をかけることを意識しています。またご家族がお迎えに来られたときには、利用者さんが取り組んだ実際の教材をお見せしながら、その日にできたことをお伝えすると、『うちの子はここまでできるのですね!』『こんなこともできるようになったのですか!』と、とても喜ばれます。そうしたご家族の喜ぶ様子を見ることは、利用者さんにとっても嬉しいことなので、更なるやる気につながります。私たち職員も、ご家族が喜んでくださり、また『ありがとうございます』と声をかけていただけると、本当にやっていてよかったと思いますし、励みにもなります。」
伊皆さんは、利用者さんの成長が見られるのは、「スモールステップで進める公文式の教材があるからこそ」と言います。そして「やってみて、無理だったらまた戻る」ということを、職員のみなさんが地道にくり返すことも大切だと言います。そして、利用者さんの気持が乗らないときは無理に促すことはせず、あくまで「待つ」「見守る」ことを心がけるそうです。
その日の利用者さんの取り組みが 一目でわかる記録用紙 |
また「公文式における個別対応アセスメント」という日報式の記録用紙を用いて、職員全員で情報を共有していることも、公文式学習の取り組みをスムーズにしている工夫のひとつです。
学習者ごとに作られた記入欄には、取り組んだ学習プリントの記録のほか、「あいさつができた」「イスに座れた」といったチェック項目や、気づいたことを記入するコメント欄があります。考案者の伊皆さんは「よりよいものにするため随時改善しています」と話します。
高久保さんはこの記録用紙の活用について次のように説明してくれました。
「これを見れば、その日にそれぞれの利用者さんがどのように取り組んでいて、何ができていたのかが一目でわかり、そして職員みんなで情報を共有することができるのです。月に1回の会議でも、この記録用紙の情報をまとめて、利用者さんの変化や課題を共有し、次の月にどう取り組むかについて意見を出し合います。また会議では、こうした情報共有や意見交換のほかにも、公文式学習の準備や学習の進め方についての内部研修も行います。」
職員一丸となって様々な工夫をしていることが、公文式学習の効果を底上げしているといえそうです。
「ビタミンクラブの仲間になりたい」という人を増やしていきたい
学習中の利用者さんと伊皆さん |
高久保さんによると、公文式学習の導入による変化は、利用者さんだけでなく、職員にも及んでいるといいます。
「スタートしたのがコロナ禍だったこともあり、学校の分散登校への対応や感染防止対策に追われることも少なくなく、最初は職員の公文式学習に対する理解や共有が十分ではありませんでした。今考えれば、どのように学習を進めていけばよいのか、ご家族にはどのように説明すればよいのかといった不安の方が大きかったのかもしれません。現在も不安がまったくなくなったわけではないと思いますが、公文式学習によって利用者さんが変わっていく様子は、職員にとっても嬉しいことですので、職員全員で記録用紙の改善に取り組んだり、対応方法について検討したりと、いい方向に進んでいます。」
ビタミンクラブでの公文式学習では、利用者さん一人につき職員が一人つきます。一定時間、じっくりと個別に関わりを持つことで、利用者さんの表情や様子の変化を感じやすくなったそうです。
最後に、高久保さんに今後めざしていきたいことについてうかがいました。
「これからも一人ひとりの利用者さんに合わせて公文式学習を続けていき、小さな成果を積み上げていきたいと思っています。続けていくことで、これまでとは違った変化が見えてくるのではと考えると、私自身ワクワクします。そして公文式学習を継続する中で、利用者さん・職員・ご家族の連携が深まり、成長を実感しながら三者の笑顔と喜びが増え、ビタミンクラブの仲間になりたいという新たな利用者さん・ご家族を増やしていければと思います。また私たち職員も、利用者さんと自分自身の成長をめざして、より質の高い支援を提供できるよう日々研鑽を積んでいきたいと思います。」
利用者さんの成長はもちろん、ご家族や職員など、関わる人たちみんなの喜びと笑顔を増やしていきたい―
自己肯定感を育む公文式学習は、様々な人たちを笑顔にするきっかけのひとつとして、これからも様々な場面で貢献することが期待されています。
関連リンク 公文教育研究会 施設・学校向け公文式導入事業 公文式を導入している障害児・障害者支援施設での学習効果アンケート|KUMON now! 児童発達支援・放課後等デイサービスでの公文式学習|KUMON now! “つながる”療育支援―児童発達支援、放課後等デイサービス、自立訓練・就労移行支援施設での公文式 |KUMON now! 療育のなかのKUMON-放課後等デイサービスでの取り組み|KUMON now! 社会福祉法人 足利むつみ会
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