自分の居場所を感じられれば
子どもは伸びていく
田島:子どもは自分自身と周りとの関係を通じて非認知能力を身に付けていくことを、私たちは発達心理学の領域で20世紀の後半から研究してきました。
例えば、赤ちゃんを実験室に連れてきて、色んな刺激を与えてどんな能力があるか判定するのですが、研究者の期待に反して、赤ちゃんは反応してくれないんです。しかし実験室を離れて、家庭で実験をすると、同じ刺激に対して同じ子どもなのかというくらい反応することがあります。
4歳くらいまでのお子さんは自分の居場所だと感じられる場所ではどんどん学習していき、そうでない場ではシュリンクしてしまうということが多々あり、5、6歳になると場が異なっていても力を発揮できるようになってくることが分かってきました。生涯発達的にグローバル化を果たし始める時期といえましょう。
私が1970年代に公文式学習教材を知って驚いたのは、子ども自ら学んでいける、子ども自ら発達していけるよう、学習を支援する場を土台としたシステム教材だということです。創始者の公文公会長は、「場を作らないと教材がうまく機能していかない」とおっしゃっていましたよね。
21世紀は、子どもたちが生きがいをもって、生涯にわたって自学自習する時代と言えると思いますが、20世紀の後半からすでにその発想があったことに私は大変興味をもちました。
これからの社会環境のあり方も含めて、子どもたちが幸せになる=生まれつき持っているものを発揮するプロセスを作る場をKUMONがもっと広く開発してくれればありがたいですね。
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池上:認知能力も非認知能力も両方一人の人間の中にあるものですが、前者はテストで測れるもの、一方後者は測りにくいものです。時代によって教育のテーマがありますが、基礎学力をつけるという教育の課題はずっと変わらないもので、そのずっと変わらない教育の課題の土台に非認知能力がある。公文式学習は両方大事にしていて、読み書き計算の習得を通して、内面的な力を高めていく学習法です。内面的な力を伸ばすにはテーマが必要で、たとえば単に「やる気を出して」と言っても無理でしょう。テーマは音楽でもゲームでも、その子の好きなものでいいのですが、KUMONの場合は学習だったということなんですね。