スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2021/08/27更新

Vol.069

特別対談 未来を生きる子どもたちのために②
  前編

生涯にわたって必要なのは
自ら「自学自習」できる力

田島 信元 (たじま のぶもと)

1946年生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。東京大学大学院教育学研究科修士課程(教育心理学専攻)修了。博士(人間科学)。北海道大学教育学部発達心理学研究室助手、東京外国語大学外国語学部心理学研究室助教授・教授、白百合女子大学人間総合学部発達心理学科教授・同大学付属生涯発達研究教育センター所長を経て、現在、センター特別研究員、東京外国語大学・白百合女子大学名誉教授。

時代の変化がよりスピードを増しているように感じられるなか、「どんな時代、どんな状況になっても、子どもたちが伸びていくために大切なことは何か?」――これからの子どもたちに求められる力、そして育みたい力について、各界の識者とともに探っていきます。
今回は、発達心理学の専門家として長きにわたりKUMONとの共同研究にも関わってくださっている田島信元先生をお迎えして、公文教育研究会 代表取締役社長の池上秀徳が対談を行いました。今回お届けする前編では、学びを支える非認知能力について意見を交わしました。

21世紀は持っている能力を
生かしていく時代

特別対談:田島信元先生,池上秀徳

田島信元先生(以下、田島):20世紀は子どもたちの持つ知識や技能、態度、広く言えば思考力や分析力等の認知能力は、学校や社会を通じて育てていくべきだと考えられていました。しかし、研究の進展や多くの事例から、それらの知識や技能は実践的に使える能力にはならないだろうという発想に変化していきました。
実際、社会や経済もなかなか問題解決が難しい状況になってきましたし、環境の変化や研究の成果も含め、認知能力と想定されていたもののベースは、子ども自身が持つ、非認知能力であり、その重要性が叫ばれるようになりました。
20世紀の教育は学習内容に対してレベルを設定して、そこにいかに早く到達するか、一種のトレーニングを行い、テストをして確認していたわけですが、21世紀の学校では子ども自身が「こんな力を身に付けたい」と学習目標を立て、それに積極的に向かっていく「学習に向かう力(非認知能力)」や、社会状況に応じて周りの人々と協働しながら新しい知識や技能を創造していく力を育てるために、非認知能力を活かした授業を行い、教師と生徒、そして生徒同士がディスカッションやネゴシエーション、すり合わせを通して、新たな知識や技能を身に付け、創造までしていくことを目指すようになってきました。
(※非認知能力=意欲、粘り強さ、計画性など、数値化することが難しい個人の特性による能力)

公文教育研究会 池上(以下、池上):子どもたちに必要な力という切り口について言いますと、一つの論点は世の中が子どもたちにどんな力をつけてほしいと望むかということだと思うのです。たとえば日本の戦後、高度成長期の1950年代から70年代までであれば、産業社会が、日本人としてこういう成人、企業人が欲しいと考えていたものが教育の目標になっていたと思います。現在はグローバル人材ということがよく言われますが、これは、社会がグローバル化したことに即応しています。子どもたちは社会の中で自己実現を果たしていくことになるのですから、今求められる人材と言われると、それはグローバル人材と言えるのではないでしょうか。

田島:グローバル人材というと、地理的、文化的に異なる世界を超えたグローバルな世界に通用する人材のことだと思いますが、そのためには、学校は学校、社会は社会ではなく、学校から社会に至る異なる発達段階を超えて、生涯発達の全過程で通用するグローバルな人材を企業や社会が求めているということは、大変共感できます。
実際、非認知能力というのは、子どもたちが生涯発達していくために必要な力であると言えますし、私がリカレント教育(義務教育期間や大学で学んだ後に、「教育」と「就労」のサイクルを繰り返す「教育制度」)に関わった時に、自分はやればできるという自己肯定感を持った人は伸びていくとあらためて思ったことがありました。自己肯定感というのは、まさに非認知能力の到達点であると考えています。

池上:非認知能力を高めることは子どもたちにとって非常に重要だと思います。私たちは非認知能力という言葉をそのまま使っていませんが、「自学自習力」や「内面的な力」という言葉を使ってきました。公文式学習は基礎学力とともに、学習習慣や自分で考える力といった内面的な力を伸ばす教育をしてきたと言えます。

自分の居場所を感じられれば子どもは伸びていく

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