非認知能力をいかに見える化するかがカギ
原 良憲教授(以下、原):お話をお聞きし、KUMONは創業の時から、相手への気づきや理解といったホスピタリティの要素を持ち合わせていたことが改めて分かりました。指導者が学習のプロセスの中で、生徒の様子に気づいたり、褒めて自己肯定感を高めたりといったことを通して、生徒の自学自習の向上をはかっているのですね。
![]() |
公文教育研究会 池上(以下、池上):私たちは、そうした生徒たちの自己肯定感や教材を自分で解こうとする意欲などの内面的な力をいかに育むかということにこだわってきましたが、KUMONというと計算を速くするというイメージが世間では強く持たれているように思います。計算が速くなることは、それはそれで意味のある事ですが、そうした学力と同時に内面的な力を高めていくことに取り組んでいることは世の中にあまり認識されていないように思います。生徒の中にそうした変化や成長が起きていても、私たちがこれまでその点を分かりやすく伝えてきていない、言語化できていないことも一因だと思っています。計算が速くなることは分かりやすく、時間や正解数と言った目に見えるものがあるので、保護者にも価値を感じていただきやすいのですが、自分で考えるようになってきた、ねばり強くなってきた、自己肯定感が高まってきた、といったいわゆる「非認知能力」と言われている力は、目に見えにくく数値化もしにくいという難しさがありますね。しかし、学習のプロセスの中で子どもたちの変化・成長に気づき、それを言葉に表現して分かりやすく保護者に伝えていく仕組みが必要だと思っています。こうした仕組みにテクノロジーを積極的に使っていきたいですね。例えば、先生方は保護者とのコミュニケーションをとても大切にしていますが、子どもたちががんばった瞬間を記録にしてデータ化しておくと、このコミュニケーションの場で内面的な力の向上を具体的に保護者に伝えていくことができますね。テクノロジーはコミュニケーションを強力にサポートする魅力的なツールになります。
原:目に見えないものに、人は価値を見出しにくいところがあります。目に見えるものには対価を払いやすいので、目に見えない無形資産を見える化するというのは大事だと思います。教育の世界で、非認知スキルという言葉をよく聞くようになりましたが、そうした非認知スキルの見える化の動きは今後色々な形で起きてくるでしょうね。ある非認知能力を“データ化する”という点においては、テクノロジー企業が強いと思いますが、大事なことは、どういった非認知能力が生徒にとって大事なのかだと思います。それは、データ化のプロであるテクノロジー企業ではなく、長年、教室という場をもって、指導者という人が学習プロセスを生徒と共に創ってきたKUMONが、優位性を持っていると思います。生徒ごとにどの様に学習を進めていくのが良いのか、過去の成績をもとに予測することは他でもできても、KUMONの長年の実践経験をいかした非認知のデータを組み入れた未来予測は、とても価値あるものになるのではないかと期待しています。