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Vol.270 2018.08.21

KUMON60周年スペシャルコンテンツ(2) 田島信元先生

発達心理学者・田島信元先生が語る
公文式学習は「自己効力感」の積み重ね

KUMONは2018年、創立60周年を迎えました。KUMONを知る識者の方々に、それぞれのご専門の観点からKUMONについてうかがっていくスペシャルコンテンツ。第2弾となる今回は、発達心理学がご専門の田島信元先生です。田島先生には長い間、乳幼児や障害児の共同研究で関わっていただいています。公文式学習法を研究対象にされたきっかけについてもお話をいただきました。

目次

    学習の土台作りがあってこそ学習意欲が育まれる

    田島信元先生

    Q.田島先生は公文式の価値をどのように見ていらっしゃいますか?
    私が考える公文式の価値は3つほどあります。

    1つ目は、発達心理学の原理を見事に包括しているシステムであるという点です。私は公文式と出会う以前、大学附属の幼稚園で子どもたちに数や言葉を教えていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。その時に、公文公(くもんとおる)会長の『公文式算数の秘密』(廣済堂出版)を読んで、「こんな画期的な教育システムと教材があるのか!」と驚きました。その内容は、後に10年間くらいにわたって研究した結果、じつに見事に発達心理学の原理を包括していたのです。しかも、私ども玄人でも舌を巻くような実践レベルのシステムであるということに大きなインパクトを受けました。

    2つ目は、障害(自閉症スペクトラムやダウン症候群など)を持った子どもたちが、公文式学習で非常に大きな成果を上げていることです。彼らの成長を目の当たりにして、やはり公文式教材は、人間の学習や発達について本質的なところを押さえているのだと確信できました。

    3つ目は、教室そのものにあります。公文式の本質は、教材そのものだけではないと考えています。教材の影響というのは、私の考えでは最大で50%まで。あとの50%以上が、教室での指導者の関わりだと思います。子どもたちが自立学習を頑張っている時に、教室という場で一声の声かけで上手にフォローする、これが大きいと考えています。

    Q.発達心理学の原理に則して、「教室という場」で起きていることについて、もう少し詳しくお聞かせください。
    公文式学習は、算数・数学、国語、あるいは英語といった教科の知識や技能的なことを身につけられる学習システムだと一般的には受け取られているように思います。しかし私は、公文式の本質は、そうした直接的な学力向上だけが目的ではないと見ています。教室では、先生やスタッフの皆さんを介して、子どもたちがそれぞれの段階に合ったレベルで学習に挑戦していく、そのなかでのやりとりがとても重要だと思っています。

    子どもの学びにおいては、学習内容以前に、「ここでどんなことを学習するのか?」、そして「学習することは本当に自分にとって意味があるものなのか?」を確かめる時期があります。まずは先生とのやりとりを通じて、子どもたちは「ここでは落ち着いて自分の学習ができる」ということを認識し、大事な土台作りをします。そして先生と話をすることで、勇気をもらって頑張ってみようという気持ちになり、そのあとに教材の中身の理解に入っていく、というプロセスがあります。私は、公文式は、子どもの発達に即した、科学的にも非常にナチュラルな教育システムだと考えています。

    田島信元先生

    Q.公文式学習の特徴の一つでもある「日々の積み重ね」は、子どもの発達の観点からはどのような意味がありますか?
    子どもたちは、0歳の段階から達成感を求めて行動しているところが見られます。これを私たちは、「自己効力感」、あるいは「自己効果感」と言っています。これが大きな動機づけとなって、さまざまな積極的な活動が起こり、持って生まれたポテンシャルである大きな学習能力を発揮できるのです。子どもたちは常に、自分のやってきたことを自分自身で評価しています。ですから日々の「達成感」とともに自己評価の積み重ねがあることは、子どもの発達においてとても大事なことなのです。

    じつは私が一番最初に公文式に惹かれたのは、そういうシステムを持っていたからなんです。教材には、はじめに導入があり、例題を手がかりに「自分の力でやってみる」という流れがあります。そして、教材が終わったら採点。心理学でいう“即時フィードバック”があります。採点をしてできたところは丸をつけて、「よく頑張ったね」「本当によくできたよ」とほめられる。一方で、ミスをしたところは「ここはもう一回見直してみよう」ということになります。子どもたちの満足そうな顔やガッカリした表情、そういう悲喜こもごものある教室風景は、公文式学習の大きな特質だと考えます。

    Q.KUMONは今年創立60周年を迎えました。KUMONにかかわる全ての人に向けて、先生からメッセージをいただけますか?
    発達心理学では、これまで人間の精神的発達、とりわけ知的発達の研究に取り組んできたのですが、近年、「社会的能力の発達」が注目されるようになってきました。社会的能力の発達がベースにないと、本当の知的発達は起きないということがわかってきたからです。その観点から考えると、公文式教室での先生とのコミュニケーションを通じて、子どもたちが社会力を身につけ、そのうえで自力学習へと導けば、子どもたちは持って生まれた大きな学習能力を十分に発揮できます。その意味では、公文式はとても重要な発達支援教育の根幹、王道を示しています。

    公文式は、長い歴史のなかで科学的な検証とともにさまざまな論評を受けてきました。KUMONにかかわる方々には、科学的な観点にも注目し、改めて公文式が非常に大きな、優位な子どもの発達支援材料であることを認識していただきたいですね。特に、子どもたちの発達のベースづくりともいえるBaby Kumonプログラムをぜひ世の中に広めていっていただきたいと思います。

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