寄付や投資の価値をわかりやすく指標化し
資金調達に貢献したい
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私が特に関心をもって研究している「社会的事業」は、これまでその内容が「いいことかどうか」に着目されてきました。しかし、「いいこと」という理由での投資では、資金が有効に使われない懸念もあります。「いいこと」と同じくらい大事なのは、「本当に問題解決に役立っているかどうか」です。それをわかりやすい指標にして測れるようにしていくのが、私の研究や実践の取り組みだといえます。
たとえば最近では、公文教育研究会が事業を行っている、認知症高齢者の脳機能の維持・改善のための「学習療法」と、認知症予防プログラムであり、元気な高齢者の場づくり、地域の担い手づくりの場として活用されている「脳の健康教室」について、どのくらい社会的な効果があるのかを検証しました。
具体的には、学習療法を導入している介護施設職員や、脳の健康教室の受講者にご協力いただき、施設での介護にどのような効果があると感じているか。脳機能が維持・改善されていると感じているかといった主観的な評価など、複数の項目に答えてもらい、学習療法・脳の健康教室導入前後の変化を比較したのです。
その結果、90%以上の職員が学習療法による対象者の認知機能回復を感じ、ケアが容易になったことを実感したという結果が出ました。社会的に価値があることが実証されたといえます。
このように評価をすることで、「効果のあるいい活動をしているところ」には、資金が集まるようになるのです。その資金調達の流れとしては、大きく2つあります。1つは行政の予算に反映させること、もう1つは民間企業および一般の寄付者からの資金です。
寄付者も、これまでは「いいことをしているから」という判断軸で寄付を決定していましたが、最近では「効果があるから」寄付をする傾向にあります。「どう課題解決しているかデータを見せてほしい」という要望もあり、きちんとしたデータを持つかどうかが資金を集めるカギになります。