「キャンナス」様からの呼びかけ
ボランティアナースの全国組織である「キャンナス」(神奈川県、藤沢市)は、震災直後から東北沿岸部で“お茶っこ”と称し、心身の健康維持支援活動を続けてこられています。
その「キャンナス」が「学習療法」(※1)を取り入れられているのですが、この東北での支援活動に「くもん脳の健康教室」(※2)が役立つのではないか、とのご提案を受けてこの新たな活動が始まりました。
※1「学習療法」とは
「音読」「簡単な計算」を中心とする教材を用い学習者と支援者がコミュニケーションを取りながら行うことにより、学習者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能など前頭前野機能の維持改善をはかるもの」という「学習療法」の理論に基づき、KUMONで教材や指導ノウハウといった認知症の改善・進行の抑制のためのプログラムを開発したもの。
現在、国内約1500の高齢者介護施設とアメリカの3施設(2013年3月現在)に導入されている。
学習者数:約12,000名(2013年5月現在 国内のみ)
※2「くもん脳の健康教室(以下脳健)」とは
「学習療法」理論を健康な高齢者の認知症予防に活用したもので、専用(高齢者施設使用のものとは別)の教材を開発、主に自治体の介護予防事業として採用されており、全国約215の自治体、約400会場(2012年度)で実施されている。
脳の健康教室が被災地の人々への「心の復興」支援に
仮設住宅での生活、あるいは何とか家は残ったものの、仕事はもちろん普段の生活も娯楽も全てを一瞬にして失った生活は想像を絶するものがあります。活動する気力も奪われた方々への支援は一筋縄ではいきません。被災地の人々の心身の健康を維持することが急務でした。
開講に先立ち、脳の健康教室の目的のひとつにもあるように「同じ地域に住む方々が、地域の高齢者をサポートすることに意味がある」と考え、サポーターも地域の方々から募ることにしました。
2012年1月26日、市民の方々に脳の健康教室の説明&体験会を開催し、キャンナスのスタッフ・ボランティアを含め約30名の方々が参加されました。
侍浜を含め牡鹿半島の産業は牡蠣養殖を主とした漁業ですが、津波により牡蠣養殖が全滅。震災後は全く仕事がな い生活が続いていました。働き盛りの世代の大半は地元を離れているため、住民の多くが高齢者です。
侍浜はわずか10世帯の集落ですが、「脳健」を開講して1年半余り、今ではなくてはならない存在となっています。
漁村としての侍浜は、未だ復興とは言えない状況ですが、この「脳健」により脳や体の健康を実感し、語り合う時間を持つことでお互いの絆を深め、「心を元気に」されています。
この教室があるからこそ、みんな元気でいられる!
自らも学習を休まず参加される侍浜の区長さんは「周辺地域と比べると侍浜は輝いています。この教室があるから、みんなが明るく元気いられます」と語ってくださいました。
また学習者のAさんは「震災後、最初は高齢の母がこの教室に通っていました。私が送り迎えしていましたがその母も病気で亡くなってしまって、まるで心の灯が消えたようでした。しかし今は私自身が学習者になって毎週この教室に通っています。この教室が楽しみで楽しみで、皆さんと話をして、元気のもとになっています」とご自分の悲しみやつらさとともにお話ししてくださいました。
地域に住まう人々が、あまりにつらく悲しい立場におかれたとき、本当に必要なのは何なのか。
それは「人と人とが支えあい、共に明るい地域を作っていくための具体的なきっかけ、出会いと交流の場」なのだということをこの「脳の健康教室」の活動を通して、被災地侍浜で明るく元気な学習者、そして、それを支える教室サポーターの皆様から教えていただきました。
関連リンク 学習療法センター