スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2017/03/24更新

Vol.042 社会的投資研究者 伊藤健先生  前編

「誰かのために」と考えたとき
はじめて学びに対する意欲が湧く
「自分ごと」と「社会ごと」を重ねてみよう

伊藤 健 (いとう けん)
大学在学中にNPO活動にスタッフとして関わり、台湾への留学を経験。卒業後は日系メーカー勤務を経て、米国にてMBA(経営学修士)を取得。帰国後、GE Internationalに入社し、業務改善や企業買収後の事業統合などに関わる。2008年よりNPO法人の社会起業家の支援育成プログラムの運営に携わる。慶應義塾大学SFC研究所上席所員、慶應義塾大学政策・メディア研究科 特任助教などを経て、2016年より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師に。

貧困や教育格差などの社会課題を解決するための手法を、資金的な問題を含め研究し、一方で社会起業家の育成支援といった実践にも取り組まれている伊藤健先生。フリースクールでの体験が、「社会課題を解決し、人を幸せにするための仕事をしたい」という思いを芽生えさせた原点だったといいます。伊藤先生はご自身の想いをどう実現されてきたのでしょうか。また、変化が激しい時代における「学び」や「働くこと」についてのヒントもいただきました。

社会の課題をどう解決できるか
その方法と解決のための資金調達について研究

現在、日本社会には高齢者の介護や子どもの貧困など、さまざまな課題があります。以前は、行政がそうした社会課題を解決する役割を担っていましたが、徐々に行き届かない部分も出てくるようになり、NPO法人や社会起業家が活躍するようになっています。

さらには、一般の企業でも社会的な領域に着目し、課題解決に取り組む動きが出てきています。私は介護や福祉の専門家ではありませんが、そういった分野の社会課題を解決するための制度設計や、そうした制度が開発されるプロセスを研究しています。

なかでも特に注目しているのはお金の流れで、大学では「ソーシャルファイナンス」という科目を教えています。これは「社会的投資」を含むものです。一般的な投資は、個人や特定の組織の利益を求めますが、「社会的投資」は、社会的事業のためにお金を投資していくことを意味します。つまり、「金銭的なリターンだけでなく、社会課題を解決する事業に投資をする」というものです。社会課題を解決することを目指す事業は、ビジネスとして成立しにくいケースが多いのですが、工夫をすれば解決に必要な資金を調達できます。私はその手法などを研究しているわけです。

例として、病児保育で知られるNPO法人フローレンスのケースを紹介しましょう。フローレンスは、社会課題の解決と事業性を両立させた好例です。まず、非施設型の病児保育なので事業に対する初期投資が低く抑えられ、会費は利用頻度と子どもの年齢に応じて変動する月会費制で、毎月初回は無料で利用することができます。よって、会員は万が一の時の保険のような感覚で利用でき、事業者にとっては会員数増加に合わせて人を雇用できるなど、収益を安定させる工夫が凝らされています。

こうしたことはビジネスのイノベーションのあり方でもあり、かつ、社会の問題を解決するために活用できる事業というわけで、そこが社会的起業のおもしろいところだと思います。

今の活動の原点となった経験とは?

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