社会の課題をどう解決できるか
その方法と解決のための資金調達について研究
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現在、日本社会には高齢者の介護や子どもの貧困など、さまざまな課題があります。以前は、行政がそうした社会課題を解決する役割を担っていましたが、徐々に行き届かない部分も出てくるようになり、NPO法人や社会起業家が活躍するようになっています。
さらには、一般の企業でも社会的な領域に着目し、課題解決に取り組む動きが出てきています。私は介護や福祉の専門家ではありませんが、そういった分野の社会課題を解決するための制度設計や、そうした制度が開発されるプロセスを研究しています。
なかでも特に注目しているのはお金の流れで、大学では「ソーシャルファイナンス」という科目を教えています。これは「社会的投資」を含むものです。一般的な投資は、個人や特定の組織の利益を求めますが、「社会的投資」は、社会的事業のためにお金を投資していくことを意味します。つまり、「金銭的なリターンだけでなく、社会課題を解決する事業に投資をする」というものです。社会課題を解決することを目指す事業は、ビジネスとして成立しにくいケースが多いのですが、工夫をすれば解決に必要な資金を調達できます。私はその手法などを研究しているわけです。
例として、病児保育で知られるNPO法人フローレンスのケースを紹介しましょう。フローレンスは、社会課題の解決と事業性を両立させた好例です。まず、非施設型の病児保育なので事業に対する初期投資が低く抑えられ、会費は利用頻度と子どもの年齢に応じて変動する月会費制で、毎月初回は無料で利用することができます。よって、会員は万が一の時の保険のような感覚で利用でき、事業者にとっては会員数増加に合わせて人を雇用できるなど、収益を安定させる工夫が凝らされています。
こうしたことはビジネスのイノベーションのあり方でもあり、かつ、社会の問題を解決するために活用できる事業というわけで、そこが社会的起業のおもしろいところだと思います。