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Vol.276 2018.10.09

KUMON60周年スペシャルコンテンツ(4) 伊藤健先生

社会的投資の専門家、伊藤健先生が語る
KUMON「イノベーション」を作り出す企業

KUMONは2018年、創立60周年を迎えます。KUMONを知る識者の方々に、それぞれのご専門の観点からKUMONについて伺っていくスペシャルコンテンツ。第4弾は、社会的投資研究者で、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任講師の伊藤健先生。KUMONが手がける新しい事業の意義について語っていただきました。

目次

行政にも認められた社会的意義のある「学習療法」事業

Q.先生のご専門と、KUMONとの接点について教えていただけますか?

私は社会的投資を専門として、なかでもとくに「評価」の研究をしています。世の中には、社会的な意義はあっても評価の難しい事業がたくさんあります。そのような事業の評価方法が明確になれば、事業の位置づけや予算づけが容易になり、事業を推進しやすい環境になると考えています。社会的事業に大事なのは、「本当に問題解決に役立っているかどうか」です。それをわかりやすい指標にして測れるような制度設計について研究しています。
公文教育研究会からお声がけをいただいたのは、認知症高齢者の脳機能の維持・改善のための「学習療法」と、「学習療法」を活用した認知症予防プログラムであり、元気な高齢者の場づくり、地域の担い手づくりの場として活用されている「脳の健康教室」について、どのくらい社会的な効果があるのかを検証するためでした。

「学習療法」は、「簡単な読み書き計算とコミュニケーション」により認知症高齢者の脳機能の維持・改善を目指す非薬物療法。東北大学の川島隆太教授をリーダーとする研究者たちと、福岡県の介護施設、公文教育研究会の三者により2001年に始まった共同研究プロジェクトから生まれ、脳機能の維持・改善に効果があることが科学的に実証された。

伊藤健先生

Q.2015~16年の検証では、どのような成果が得られたのでしょうか?

「学習療法」を導入している介護施設の職員にご協力いただき、施設での介護にどのような効果があると感じているか、脳機能が維持・改善されていると感じているかといった主観的な評価など、複数の項目に答えてもらい、学習療法導入前後の変化を比較したのです。その結果、90%以上の職員が学習療法による対象者の認知機能回復を感じ、ケアが容易になったことを実感したという結果が出ました。また「脳の健康教室」の受講者への調査では、認知症及び軽度認知障害(MCI)の疑いのあるグループが、約半年の学習で認知機能改善効果が明らかに。「学習療法」や「脳の健康教室」を行うことで、利用者をはじめ、利用者の家族、学習支援を実践した施設・教室に至るまで、大きな社会的・費用対便益がもたらされることが明らかになったのです。

そして、このように成果を目に見える形で表せる指標ができたことで、認知症予防分野の「成果連動型支払事業」が、奈良県天理市で採用されました。これは、行政が事業を委託した民間事業者に対し、成果に連動して報酬を支払う契約形態で実施される事業のことを言います。従来、行政は事業の実施に対価を支払うことがふつうでしたが、成果連動型支払事業では、事業の成果に対して支払いが生じます。成果に対して事業者が責任を持ってやりますということは大きな前進であり、大変意義のあることです。さらに成果評価の結果、目標が達成されたケースは日本で初めてのことです。

Q.KUMONにどのような印象を持たれましたか?

「学ぶ」ということにおいて、日本の伝統的な教育では知識を習得することに偏重してきました。これからはそうではなく、身につけた知識を使って「どう考えるか」という能力が問われる時代になってきています。
教育事業というのは、次の社会を作っていく仕事です。AIの発達などにより、今ある枠組みの中で考えるのではなく、新しい枠組みを作っていく思考能力が必要な世の中になっています。KUMONが持っている企業カルチャー、そして新しい事業を作っていく力というのは、日本社会の中でもユニークであり、時代の要請にこたえているのではないかと思います。
新しい社会に必要とされている事業を作り出して、それが行政に認められるまでになっているということは、ゼロから事業を作っていく力があるということです。つまりKUMONは革新性が高い企業といえるのではないでしょうか。

Q.KUMONは今年創立60周年を迎えました。KUMONにかかわる全ての人に向けて、メッセージをいただけますか?

学習療法はひとつのイノベーションです。子どもの教育にのみフォーカスをあてていてもおかしくないKUMONという企業が、高齢者向けの、社会に必要とされている事業を作り出して、ここまで大きくしている。学習療法センターの事業の成果を表す指標ができ、それが行政に受け入れられたのは大きなステップだと思います。
新しい時代の価値観や取り組み方やビジネスモデルを作っていくという意味で、KUMONは先端的な企業だという印象です。こういうことをどんどん生み出して社会に提供していくような企業であり続けてほしいと思います。

関連リンク 社会的投資研究者 伊藤健先生(前編)|KUMON now! スペシャルインタビュー 学習療法-SIBを導入した調査事業|KUMON now! トピックス 天理市で認知症予防の新たな取り組み|KUMON now! トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(1)片平秀貴さん|KUMON now! トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(2)田島信元先生|KUMON now! トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(3)井上達彦先生|KUMON now! トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(5)千葉杲弘先生|KUMON now! トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(6)多賀幹子さん|KUMON now!トピックス

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