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Vol.035 2016.08.26

ジャーナリスト 多賀幹子さん

<前編>

私たちはすべての人から何かを学べる
現場に足を運び
実際に見たり聞いたりしないと
本当に大切なものはわからない

ジャーナリスト

多賀 幹子 (たが みきこ)

東京都生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。大手企業で広報誌編集長の職を務め、結婚・出産を経て、フリーライターとしての活動を開始。ニューヨークとロンドンに合わせて10年以上在住し、現在はノンフィクション作家として、教育、女性、英王室などをテーマに新聞や雑誌への寄稿や講演、テレビ出演。著書に『子どもの“自学”する力を育むKUMON』(PHP研究所)ほか多数。外務省青年論文コンテスト審査員、外国特派員ゲストスピーカー、お茶の水女子大学非常勤講師など。

国内外の子育てや教育事情、女性の生き方などをテーマに取材・執筆をされているジャーナリストの多賀幹子さん。国内外の公文の指導者や教室での取材をはじめ、これまで数えきれないほどの方々をインタビューしてこられました。女性として、また母としてのライフステージの中で、多賀さんがどのようにして執筆活動を始め、活躍の場を広げていかれたのか。生い立ちのほか、取材することの魅力など、ジャーナリストという仕事への熱い思いもうかがいました。

目次

新聞記者の父の転勤に伴い
転居をくり返した子ども時代

ジャーナリスト 多賀幹子さん

私は教育や子育て、女性などを主なテーマに執筆活動をしていますが、英王室についても長年追っています。夫の赴任に伴って英国に住んでいた時に、ダイアナ妃が事故で亡くなられました。ちょうど新聞社から王室に関する書籍の執筆を依頼されて、ダイアナ妃を追っていたところでしたので、ショックを受けました。それ以上に、最愛の母を突然失った王子たちのその後が心配でなりませんでした。そこからロイヤルファミリーに関心を持つようになり、取材を続けています。王室は英国民の理想とする姿であり、王室を見ていると、英国人の価値観や伝統文化などがよくわかります。これからは、7月に誕生した英国史上二人目の女性首相、テリーザ・メイ氏にも注目していきたいです。 

ただ、私の本来のテーマは教育です。育児誌で長く連載をしていたときに公文の先生を取材したことをきっかけに、世界49の国と地域に広がるKUMONに強く関心を持つようになりました。それから国内外の教室をたびたび訪問し、先生方や生徒にインタビューをしてきました。

ジャーナリスト 多賀幹子さん
多賀さんが執筆された 『子どもの“自学”する力を育むKUMON』
(PHP研究所)

私は米国で子育てをした時期がありましたが、そこで「個」を大事にする教育に感銘を受けました。KUMONが海外で圧倒的な支持を得ているのは、個人別の学習法や指導者の存在などが理由で、欧米の教育先進国と共通点を持っています。

また、最近の日本の教育問題では、とくに子どもの貧困が気になります。学校給食がない夏休み明け、子どもがやせ細って登校するといった話を聞くと、心が痛みます。自分に何ができるだろうかと問いかけているところです。 

私は新聞記者の父と専業主婦の母の間に、東京で生まれました。本が好きで、本さえあれば機嫌が良く、文章を書くのも得意。作文コンクールで表彰されたこともあります。小中学生の頃は、父の転勤に伴い、山形、福島、広島、そしてまた東京と、3~4年ずつくらいで転々としました。これは子どもにとって簡単なことではありません。まず言葉が違います。転校するたびにいじめを避けるためにも、必死でその土地の言葉(方言)に慣れようとしました。しかし慣れたと思えばまた転校なので、せっかくできた友達とも別れなければならず、さびしい思いもしました。 

また、学習面でも地方により進度が違い、そのことで苦労もしました。転校先の中学校では進みが早くて、前の学校ではまだ学んでいなかった箇所がすでに修了しており、自分で勉強しなくてはならなかった。でも今思えば、この頃の各地での暮らしは宝物。そこでのさまざまな経験は、私の糧となっています。自分の経験を踏まえて言えば、子どもは周囲が思っているより強くたくましい。逆境は子どもを鍛えるという一面も持っているのです。 

現在にもいきる「父と学校の先生からもらった言葉」とは?

「必ず現場に行け」「自分の目で確かめよう」
いまにつながる父と先生のことば

ジャーナリスト 多賀幹子さん

新聞記者の父は、よく若手記者に「必ず現場に行け。聞いたことを鵜呑みにするな。その場に足を運んで、その人にじかに話を聞いてから書くように」と言っていました。奇しくも、福島で暮らしていた小学3~4年の時の担任の先生からは、「世の中で起きていることは、すべて自分に関係あることだと捉え、自分に引きつけて理解するように。自分の目で見て、人と話して、それを表現していきなさい」と教えられました。 

そうした父や先生のことばの影響か、小学6年の時の卒業文集には、「将来の夢は外国特派員」と書きました。今、それに近い仕事をしているのは、当時から「新しい知識や情報を自分の目で見て書く。そしてそれを、皆に提供し共有したい」という思いがあったのかもしれません。 

中学卒業後は都立の進学校の高校に入学します。優秀な生徒が多く、友達から学ぶこともたくさんありました。大学は英文科を考えたのですが、父から「和魂洋才」のアドバイスを受け、国文科へ進みました。父は、「英文学を勉強するということは、英語圏の文化に浸ること。それは時に日本人としてのルーツを失うことに通じるかもしれない」と言う一方、「英語はこれから絶対に必要になるから、大切な“道具として”しっかり勉強しなさい。英語が話せるようになればなるほど、日本人であることを大事にするように」と言っていました。

それで国文学を専攻しましたが、サークルはESSに所属してディスカッションやディベートをしたり、親善旅行で1か月間英国に行って現地の学生と交流したりして、とても楽しかったですね。国際人という人種は存在しません。“日本人”が確立していれば、英語を使って話す内容は豊かに広がっていきます。 

卒論のテーマは夏目漱石でした。担当教授からは、「大学院に進学して漱石研究者の道を歩んでほしい」と推薦していただいたものの、一度は社会に出ようと、結局就職することにしました。四年制大学卒の女性を採用する会社は限られていた時代でしたが、ご縁のあった大手メーカーに就職しました。教授には申し訳ないことをしてしまいましたが、企業で働くことも良い勉強になりました。 

多賀さんがフリーライターとなったきっかけとは?

文章を書きたい気持ちがウズウズしていた
専業主婦時代

ジャーナリスト 多賀幹子さん

就職先では広報部に配属され、すぐに社内報の編集長を任されました。全国各地にある販売会社の社長さんを訪ねてインタビューしたり、「編集長みちのく一人旅」なんて企画を立てて出張したり。企画から取材、執筆まですべて自分で行い、充実していました。 

24歳で結婚して、寿退職。時代ですね(笑)。その後妊娠、出産して育児に専念したのですが、どこか物足りない気がしていました。 

そのうちに、子どもが昼寝をしている時間に、日々の生活で思うことを文章にして新聞の投書欄に投稿するようになりました。育児で気づいたことや子どもの面白さなど、ネタは次々に湧いてくる。毎日のように書いて送り、よく掲載していただきました。そのうちにそれでは飽き足らず、いろんな雑誌に投稿するようになりました。 

ある雑誌で、「もらってうれしかったプレゼント」をテーマに作品を募集していた時には、大学院への進学を勧めてくれた大学の教授から、出産祝いにいただいたブラウスの話を書きました。こんな内容です。

――出産祝いというと、ふつうはベビー用の服やおもちゃなどが多いけれども、その教授は母であるわたしに仕立てがかっちりしたブラウスを贈ってくれた。これは、「たとえ育児中でも、あなた自身を伸ばす努力を続けなさい、という励ましのメッセージだ」と受け取り、子どもの成長と一緒に自分も成長できるよう努めたいと思った、というようなものでした。このエッセーで賞をいただき表彰されました。 

そうしているうちに、ある雑誌の編集部から「取材して記事を書いてみませんか?」と声をかけていただき、育児に関する記事を書くようになりました。これがフリーライターとしての出発点です。でも子どももまだ小さかったので、母に家に来てもらったり、取材日を夫が休みの土曜日にしてもらったり。周囲に配慮していただけたのは幸運でした。 

その後、順調に仕事が増えてきたので、下の子は保育園に預けて働くようになりました。ところが当時は、周囲から「保育園に預けられるなんて、子どもがかわいそう」と言われたりして……。今ではとても考えられないですね。 

関連リンク
ジャーナリスト・多賀幹子さんが見たKUMON|KUMON now!


 

ジャーナリスト 多賀幹子さん  

後編のインタビューから

-アメリカ流子育てに目からウロコの毎日
-多賀さんが取材時に心がけていることとは?
-多賀さんから子育て世代へのメッセージ

 

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