スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2016/08/12更新

Vol.034 経営学者 藤川 佳則先生  前編

いまのあたりまえが
未来のあたりまえとは限らない
「地球儀を眺める」ような視点をもとう

藤川 佳則 (ふじかわ よしのり)
京都府生まれ。1982年一橋大学経済学部卒業、同大学院商学研究科修士。2000年ハーバード・ビジネススクールMBA(経営学修士)、2003年2003年ペンシルバニア州立大学Ph.D.(経営学博士)。ハーバード・ビジネススクール研究助手、ペンシルバニア州立大学講師などを経て、現在は一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授。専門はサービス・マネジメント、マーケティング、消費者行動論。『マーケティング革新の時代ハーバード・ビジネス・レビュー』(ダイヤモンド社有斐閣)、『一橋ビジネスレビュー』(東洋経済新報社)、『マーケティング・ジャーナル』(日本マーケティング協会)などに執筆。訳書に『心脳マーケティング』(ダイヤモンド社)ほか。

「サービス・マネジメント」という新しい学問領域の第一人者、藤川佳則先生。サービス産業を体系的に研究し、この分野のイノベーションやグローバリゼーションの知見の構築を通じて、企業や国家の成長戦略に寄与することを目指されています。また、所属する一橋大学大学院国際企業戦略研究科では、地球規模で社会に貢献することができるプロフェッショナルの育成にも注力されています。藤川先生の行動の軸にあるのは、「地球儀を眺める」ような視点と「上には上がある」という視座。その行動原則に至るようになったきっかけは何だったのでしょうか。日本や世界の変化が激しい今の時代において、どう考え、どう行動すべきかのヒントもうかがいました。

ビジネスマンのおじたちが教えてくれた
「世界への扉」

私は、京都市内中心部にある呉服屋に生まれました。男三兄弟の長男だったので、家業を継ぐことを期待されて育ちました。育った地域は、京都のなかでもとりわけ商店や寺社が多く、同級生のほとんどはそうした家業の子どもで、何代もそこに住んでいるような家庭ばかりでした。

また、「京都でよい学校へ行き、京都でよい仕事につき、京都でよい家庭を築くことこそが、目指すべき人生だ」と考える人も多くいました。私はその中にいるのが窮屈でたまらず、子どもの頃から「いかに世界に飛び出すか」をずっと考えていました。結局、大学進学で東京に出るのですが、実際離れてみると、いかに京都が素晴らしいところかが逆にわかりまして(笑)。今もしょっちゅう帰っていますし、京都で生まれ育ったことを誇りに思っています。

ただ、当時は「本当にこれが世界なのか」という思いが常にありました。その中で大きな影響を受けたのが、ビジネスマンだった2人のおじです。私の家族や親戚はほとんどが自営業でしたので、この2人が私にとっては唯一の「異なる世界の人」でした。

 1人は母の兄。大学の体育会ラグビー部で活躍した後、商社に勤め、海外を飛び回って仕事をしていました。ただ残念なことに、若くして病気で亡くなってしまったので、私にははっきりした記憶はありません。でもお墓参りの際など親戚が集まる場では必ず彼の話題で盛り上がり、そこで聞く話から「別の世界があるんだ。商社に勤務することが世界に飛び出すチャンスかも」と思うようになったのです。

もう1人は父の弟で、メーカーに勤務していました。そのおじが、私の4歳か5歳の誕生日に、絵本『ABCの本』(安野光雅著/福音館書店)をプレゼントしてくれたのです。その本を開くと、左ページにAやBといったアルファベットの一文字があり、右ページにそのアルファベットが頭文字にある言葉の絵が描いてあります。「次に会うまでに全部覚えておけよ」とそのおじに言われたことを本気にして、ずっとその本を眺めていた記憶があります。今思うと、その頃、これが外の世界につながる唯一の手掛かりだと思っていたのかもしれませんね。

人生に大きな影響を与えた大学時代の経験とは?

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