スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2016/05/20更新

Vol.032

認知科学者 明和政子先生  前編

やりたいと思ったことは
迷わず進んで「やってみる」
ぶれずに貫く自分をみている人がいる

明和 政子 (みょうわ まさこ)

富山県生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。京都大学霊長類研究所研究員、滋賀県立大学人間文化学部専任講師などを経て、現在は京都大学大学院教育学研究科教授。専門は「比較認知発達科学」。主な著書に『霊長類から人類を読み解く なぜ「まね」をするのか』(河出書房新社)、『心が芽ばえるとき コミュニケーションの誕生と進化』(NTT出版)、『まねが育むヒトの心』(岩波書店)など多数。

ヒトの心だけでなく、チンパンジーの心も研究対象とすることで、「比較認知発達科学」という新分野を開拓された明和政子先生。研究結果から、ヒトの育児スタイルは本来、「共同養育」と提唱し、多くの母親たちの共感を呼んでいます。自らの妊娠・出産・育児体験を踏まえ、ヒトらしい心の発達に必要な条件を科学的に解明しようと研究を続ける明和先生に、ご自身のお子さんとの関わり方も含め、学びの原動力についてうかがいました。

「生と死」に興味をもち、産婦人科医を志す

認知科学者 明和政子

親は働いていたので、同居する祖父母が日々の面倒を見てくれていました。祖母は、立ち振る舞いにとくに厳しい人でした。「神棚のお水を換え、手を合わせてから学校に行きなさい」、「姿勢に心が表れているよ」、「人の目を見て話しなさい」。今でも、その教えが体に染みついています。でも、厳しいだけでなく誰よりも優しく、凛としていて、とても素敵な女性でした。祖母から受けた影響は大きいですね。私は自分で毎日の目標を立て、「今日はここまでやった」という達成感を味わうのが好きなのですが、そこには祖母からの「自分で決めたことは最後までやり通しなさい」という教えがあるように思います。

勉強は好きでした。頑張った分だけ、成果がはっきりと出る活動ですから。地元の公立の小・中・高校に進学し、高校3年の頃には産婦人科医になりたいと思っていました。きっかけは、2年の保健体育の授業で見た、ヒトの生命誕生についての映像でした。精子と卵子が結びついて、すごい勢いで細胞分裂して体らしきものができあがり、やがて心が宿っているかのように体がふるまいはじめ……。とにかく不思議でした。たったひとつの細胞がなぜ分裂していくのか、分裂からなぜこれほどうまく体ができあがっていくのか、いつからそれが人間と呼びうる存在となるのか……。「生と死」に関心をもったことから、産婦人科医になりたいと思ったのです。

医学部への進学を目指して、受験勉強に取り組んでいました。ところが、なぜか最後の最後に迷いが生じてきた。「医学では、人間の心の奥底までたどり着くことはできないのではないか」と思い始めたのです。当時、京都大学では、河合隼雄先生を中心とした臨床心理学が脚光をあびていました。ここに道がある、と強く思いましたが、進路はすでに決まっていました。進路を変更したいと母に言ったら反対されるに決まっている。だから、自ら決まっていた進路を断ち、母には事後報告しました。母の第一声は意外にも、「自分が幸せだと思うように進むのがいいんじゃない?」。今思い出しても、感謝の思いがあふれてきます。

明和先生を支えた方々とは?

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