読み聞かせを録音した『声のアルバム』は宝物になった

女性は結婚して家庭に入ってしまうと、誰かから評価されることは極端に少なくなります。私もそれまでは、学習でも仕事でも、周りから認められることに喜びを感じながら生活していました。子育ても十分評価されるべきことなのですが、ほめられることはあまりなく、同年代の働き続ける女性を見るにつけ、焦る気持ちが出てきたというのが正直なところです。
次女を出産したのは、博士課程1年目のとき。彼女に絵本を読み聞かせたことがおもしろく、“読書と子どもの育ち”をテーマに研究するようになります。読み手の声と子どもの反応を研究するために、わが家の毎日の読み聞かせを録音したのですが、これは研究データとして重要なだけでなく、私たち家族の絆を育むツールにもなりました。
私の不在時に読み聞かせをしてくれていた夫や義母の声に耳を傾けると、「こんな風に読んでいるんだ」「いいコミュニケーションをしているな」とうれしくなったり、娘たちの言葉に、「おもしろいことを言っているな」と笑ってみたり。今では貴重な『声のアルバム』であり、わが家の宝物です。
そうして、読み聞かせへの関心がいっそう深まっていったころのことです。学びの研究と学校改革の実践で知られる教育学者の佐藤学先生(東京大学名誉教授)に、「学校で子どもを見るのもおもしろいよ」と誘われます。学校に行ってみると、確かに家でわが子に読み聞かせるのとはまた違う。1冊の本をクラスの皆で読み合う様子も興味深く感じました。同時に、学校には魅力的な先生がたくさんいることをあらためて知り、なぜ魅力的なのか、どうしたらこうなれるのかを研究したいと思うようにもなりました。