スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2015/02/27更新

Vol.018

教育史学者 沖田行司先生  後編

成長個性的多様
子どもたちが伸びていくためにこそ
「自ら学ぶ力」を育てる

沖田 行司 (おきた ゆくじ)

1948年京都府生まれ。同志社大学卒業後、高校教師として2年間勤務後、同大大学院文学研究科へ。その後、文学部助手、専任講師・助教授を経て文学部教授(文学博士)に。改組により2004年より社会学部教授。ハワイ大学・中国人民大学の客員教授も務める。

「教育は時代を映しだす鏡」。そう話す沖田先生は、教育文化史・思想史の研究者として、江戸時代の寺子屋や藩校をはじめ、明治以降の近代教育についても研究を続けています。ご自身を「自由奔放な青春時代」「真の学びに目覚めたのは大学院に入ってから」と笑いますが、その実体験からも「人の成長は個性的で多様」「教育も多様であるべき」と、現代の画一的な教育に疑問を投げかけます。沖田先生のこれまでの研究から見えてきたもの、これからの日本の教育に必要なものとは…、をうかがいました。

子どもたちはあらゆるものを通して学ぶ

教育史学者 沖田行司先生

儒学や江戸時代の日本の教育を学び、日本の思想史を研究してきた眼から見ると、どうしてもいまの教育の薄さを感じてしまいます。吉田松陰が松下村塾で塾生たちを指導したのはわずか2年間でしたが、いまの教育はその2年間にかなわないのではないでしょうか。

それは、松下村塾の教育の内容やレベルもさることながら、根本の考え方にも違いがあると思っています。松陰は自分の弟子を信じ、叱るときはその前に必ずほめていたといいます。彼は、「どんな人間でも必ずほめるべき部分がある」と明言しています。江戸中期の儒学者、荻生徂徠(おぎゅうそらい)も「人間に棄材なし」、つまり「どんな人も必要な人」であると説いています。

だからといって、江戸時代の寺子屋や松下村塾の教育を現代に復活させるということではなく、日本にはこうした世界に誇れる、“教育遺産”と言ってもよいくらいの教育の歴史があるのだから、それを正しく認識し、そこから「いまの教育に何が足りないか」を考えてみるべきだと思うのです。

本来、人間は、遊び・仕事・経験などあらゆることから、さまざまなことを自ら学びとる能力を備えている存在なのですが、いまは自ら学ばなくてもいいようなシステムができあがってしまっている。たとえば学校では、「子どもたちが学ぶ」というより、「先生が教科書で教える」ことが主になってしまっています。

そうした指導では、知識や情報を十分与えているように見えても、じつは子どもたちが本来もっている「学ぶ力」を退化させてしまっているのでは…と危惧しています。荻生徂徠は、「みんなが意見を言い合うことが学びにつながる」と説いていますが、いまの教育現場にはそうした余裕がなく、受動的に教えられることだけになっているのかもしれません。

学校の先生たちがもう少し自由に授業ができるようになればいいのですが、現在の制度ではそれはむずかしい。そういった制度を変えようという動きもあるようですが、わたしは学校教育をそれほど重視しなくてもいいという考え方もあると思っています。なぜなら、学校以外にも学びの場は無数にあり、家庭や地域社会のなかで学ぶ時間のほうがずっと長く、学ぶことも多いからです。子どもはあらゆるものを通して学んでいけます。日々の生活や行動、すべての空間が「学べる場」なのです。

全国津々浦々、地方の行事やお祭りひとつをとっても、たくさんの学びが期待できます。それは江戸時代もいまも同じです。たとえば、千葉県のとある漁村のお祭り。言い伝えられた風習、それを表す土地の言葉、お供えの料理、祭りの飾り付けや装束、……。たくさんの学ぶことがあります。その集積が日本というものです。その土地でしか学べないことがある。そうした地域地域での学びを取りもどすべきだとも思っています。

沖田先生が考える「グローバル人材」「国際人」の要件とは?

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