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Vol.082 2021.10.22

タイガーモブCFO
上原丈弥さん

<後編>

人生の可能性は無限大
自分ではないもの」に身をゆだね
知らなかった「自分」に出会ってみよう

タイガーモブCFO

上原 丈弥 (うえはら ともや)

神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。在学中に公認会計士試験に合格し、大学卒業後PwCあらた有限責任監査法人に入社。2年弱の勤務を経て、2018年1月に教育スタートアップ企業であるタイガーモブに移る。主にバックオフィス業務、全社管理、法人営業、専門性に特化した研修プログラム開発・運営を担う。

公認会計士という専門性を生かし、教育スタートアップ企業のCFO(最高財務責任者)として活躍中の上原丈弥さん。同時に企画や営業など現場業務も担い、公文式学習で身につけた「課題をまとめる力」を発揮して事業推進に貢献しています。順風満帆に歩んでこられたように見受けられる上原さんですが、大学時代にインド合宿に参加したことで「自分」を知り、人生が思わぬ方向に動いたそうです。大手監査法人からスタートアップ企業に転身した理由や仕事への思い、今後のチャレンジなどについてうかがいました。

目次

    インドで向き合った「自分」
    「人生」や「家族」を真剣に考えた

    タイガーモブCFO上原丈弥さん

    インド合宿では、おおいにカルチャーショックを受けました、一人ひとりに個性があり、ふつうだと思っていた自分の個性に気づかされました。合宿では、自分の人生に向き合って将来像を自分で書く「未来予想図を描こう」というテーマがありました。

    私はこれまで、与えられた問題はさんざん解いていてきましたが、「どんな問題を解くか自分で決める」ことはしてきませんでした。そもそも将来どんなことをやったらいいのかを真剣に考えてこなかった。その問いに対して、参加者や運営サポーターの皆さんと考え、議論していったことがとても刺激的でした。参加メンバーは、学校や所属も様々で、学生起業家やサークルに熱中していた人など、これまで自分の周囲にはいなかった人たちです。

    でも、現地のビジネス課題解決の案を練るにあたり、すごいアイデアを披露したり、言葉もできないのにインド人にどんどん話しかけたりする学生もいて、「学歴なんて意味ないな。今まで自分がやってきたことはなんだったのだろう」と打ちのめされました。

    個性的なメンバーと話すうち、「このまま会計士になってもおもしろくないな」と感じたのですが、一方でビジネスについて話し合っていると、会計の基礎的なことも知らない人が多かった。これまでは自分と同じことができる人に囲まれてきたので、知識が身についていることの特殊さに気づいていませんでした。これまでの環境の「枠の外」に出たことで、自分が持っていること、持っていないこと、それぞれたくさんあることがわかってきました。

    タイガーモブCFO上原丈弥さん

    加えて「人生の未来予想図」を考えたときに気づいたのは、人生は仕事だけではないということです。自分の人生には家族、友人、支えてくれる周囲の人たちもいる。その中で仕事というのは「どう生きたいか」を実現する手段のひとつです。いろんな要素を含め、自分は10年後どういう人でありたいか、どう生きていきたいのかとこれまで考えていなかったことを真剣に考えるようになりました。

    課題を抱えていた家族に対し、自分は何もしていなかったことにも気づきました。そんな自分に後悔や恥ずかしさを感じるようにもなり、それまで関心を寄せていなかった家族に向き合うようにもなりました。

    自分のアイデンティティを活かす道とは

    強みを生かそうと監査法人に就職
    1年半後には「何が起こるかわからない」スタートアップへ

    タイガーモブCFO上原丈弥さん

    帰国後は学生団体に所属したり、プロボノを始めたりと、会計士ではない道の可能性を探りました。大学4年のときには、インド合宿を企画・運営していたメンターの方が独立して会社を立ち上げることを手伝うことになりました。それがいま所属しているタイガーモブです。立ち上げ当時に、そのままそこで働く選択肢もありましたが、インド合宿で気づいた「会計の知識がある」という自分のアイデンティティに、一度向き合ってみることにしました。

    そうして予定通り会計士として監査法人へ就職。社員一人ひとりの個性を大切にしてくれる会社で、かつ1年目でもプロとして仕事を任せてくれました。とてもいいなと感じたのは、「何のためにやっているのか。その先にどんな社会を実現したいのか」という意識で、経営層が誇りをもって仕事をしていることです。そんな会社だったので、仕事はとても楽しくやりがいがありました。

    その一方で、タイガーモブの代表ともよく会っていて、そのたびに「早く戻ってきて」と言われていました。創業を手伝ったとき「いつか戻ってきます」と伝えていました。それで1年半で移ることに。代表は3年ぐらいかかると見込んでいたそうですが(笑)。

    転職を決めた理由はほかにもありました。監査法人に勤め続けていれば、専門領域を極めるため、今持っている専門性を磨き上げてゆくことになります。言い換えれば、将来、活躍している自分をクリアにイメージすることができました。その一方で、タイガーモブに転職したら「一寸先に何が起こるか検討もつかないな」と思いつつも、それがおもしろいかもと感じました。どう変化するかわからないカオスな環境に飛び込んで、その変化の中に自分を置いてみるのも楽しいかもしれない、と思いました。

    タイガーモブCFO上原丈弥さん

    CFOとして転職したので、当初は、“扇子を広げながら後方に控えて戦略を練る軍師”、「諸葛孔明」のような役割をイメージしていました。しかし分かってはいたのですが、扇子を広げる暇もなく、求められていたのは自分でどんどん市場を切り開いていく“将軍”でした。しかも、まさか自分が学生に授業をするなんて思ってもいませんでしたし、今に至るまでは苦労のほうが多かったです。でもやっぱり、子どもたちが変わっていく姿を見るのはとても楽しい。結局は自分が踏み出した道であり、限界を決めてこなかったことが今につながっているのだと思います。

    KUMONとの接点は学習者として、一度離れていたのですが、実はここ数年、再びいくつかの接点を持てて、とても嬉しく思いました。それが、文部科学省が中心となって推進している「ワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム」(WWL)と、「トビタテ!留学JAPAN」です。

    WWLとは、高校、大学、民間企業や国際機関が協働して、世界で活躍できるイノベーティブなグローバル人材を育成するため、高校生へ高度な学びを提供する仕組みの形成を目指す取組というものです。同じベクトルにある民間企業として、WWL連携校向けに学校をまたいだ合同の探究オンラインプログラムを提供させていただいています。また、トビタテ!留学JAPANにおいても、官民協働で「グローバル人材育成コミュニティ」を形成し、将来世界で活躍できるグローバル人材を育成することを掲げています。トビタテの奨学金を使って私たちの海外インターンシップに参加してくれる学生もたくさん出てきていて、この取り組みの一躍を担えていることは、嬉しく思います。

    KUMONも同じようにこれらの教育への取り組みに関わっているため、これまでの公文式学習者という立場から、今はタイガーモブとKUMONとして共に切磋琢磨しながら、世界で活躍できる人材育成を真剣に考え、挑戦することが出来ていることに、ワクワクしながら、限界を決めずにより良い教育を求めていけたらと思います。

    世界を広げる「自分の外側」とは

    生きているだけですばらしい
    どうすれば楽しく生きることができるか考えよう

    タイガーモブCFO上原丈弥さん

    私は、自分の力で自分を変えるのは難しく、自分の外側の存在が自分を引き上げてくれるのだと思ってます。それは、私が身を置いたインド合宿のようなカオスな環境だったり、これまで挑戦してこなかったことに挑戦することだったり、出会った人だったり。自分の知らない世界を広げてくれる読書もそのひとつです。私自身「自分ではないもの」に身をゆだねてきました。

    中高生と話すこともそれに該当するかもしれません。彼ら彼女らと話をしていると学ぶことが多いと感じます。実は先日、ヴィーガン(=可能な限り動物性食品を食べない、身につけない、傷つけない生き方)の女子高生と話す機会がありました。それがきっかけで、新たなチャレンジとして動物倫理学の勉強を始めています。子どもたちには「好きなことをやれ」といっているのに、自分自身が探求していないと説得力に欠けますからね。

    仕事面では、実践しながら気づきや学びを得ていく「実践教育」を日本中に広げていきたいです。そうして、タイガーモブのミッションである「次世代リーダーの創出」――具体像は、自分の“らしさ“を追求し、「自分はこれだ!」というテーマで旗を立てる人で、そんなリーダーたちをもっと輩出していきたいと思います。

    これからは個性と多様性の時代です。そして「自分らしさを発揮する」ということは、社会の豊かさに直結します。子どもの可能性は無限大です。それを大人が勝手に制限してはいけないと思いますし、子どもを信じてあげてほしい。その結果、短期的に見ると、例えばテストの点数が悪かったり、親のいうことを聞かなかったりということがあるかもしれません。しかしそうしたことは、子どもにとっては重要なことではありません。先生や親は、「10年後、20年後にどう生きていて欲しいか」を考えてあげてほしいですね。

    子どもたちには、まずは「生きているだけですばらしい」と伝えたい。それに加えて、「どんなふうに生きれば楽しいか」を考えてみるといいと思います。人生の究極の目的は、「いかに楽しく生きるか」。私自身、これからも「自分の外側」と触れながら、さらに未知の自分に出会い、世の中にインパクトを与えられるよう楽しく人生を歩んでいきたいと思います。

    前編を読む

    関連リンク

    タイガーモブ株式会社Instagram (タイガーモブ公式)Twitter (タイガーモブ公式)WWL(ワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム)トビタテ!留学JAPAN


      

    前編のインタビューから

    -子どもたちの可能性を抑えていたフタをはずす
    -学びにフタをしない公文式で課題をまとめる力が身についた
    -「頑張っていない自分」に焦り、公認会計士の資格を在学中に取得

    前編を読む

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